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動画解説・解説資料:今からでも間に合う個人情報保護法対応!

2022/03/02

令和4年(2022年)4月1日に施行される改正個人情報保護法の動画解説・解説資料を掲載いたします。

動画解説:今からでも間に合う個人情報保護法対応
解説資料:今からでも間に合う個人情報保護法対応

ご質問等は下記にご連絡ください。
弁護士法人三宅法律事務所 パートナー
弁護士 渡邉 雅之
TEL: 03-5288-1021
Email:_m-watanabe@miyake.gr.jp

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【2022年1月31日施行】実質的支配者情報一覧(実質的支配者リスト)制度のQ&A

2022/01/31

_2022年(令和4年)1月31日に施行された「商業登記所における実質的支配者情報一覧の保管等に関する規則」により、株式会社(特例有限会社を含む)からの申出により、商業登記所(法務局)の登記官が、その実質的支配者に関する情報を記載した書面(実質的支配者情報一覧)を保管し、申出者にその写しを交付する制度が設けられました。
 金融機関としては、犯罪収益移転防止法に基づく取引時確認のため、株式会社(特例有限会社を含む)である顧客に対して、実質的支配者情報一覧の写しの提出を求めることが考えられます。
 金融機関以外の事業会社も取引先の実質的支配者の反社チェックのために取引先に対して実質的支配者情報一覧の写しの提出を求めることが考えられます(任意の制度なので、取引会社間の力関係も関係してきます。)。
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執筆者:渡邉雅之
* 本ニュースレターに関するご相談などがありましたら、下記にご連絡ください。
弁護士法人三宅法律事務所
弁護士渡邉雅之
TEL 03-5288-1021
FAX 03-5288-1025
Emailm-watanabe@miyake.gr.jp

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1・実質的支配者とは
 マネロン・テロ資金供与対策のための法律の一つである犯罪収益移転防止法においては、金融機関等が法人顧客に対する取引時確認の一つとして実質的支配者の本人特定事項(氏名、住居、生年月日)の確認が求められます。
 法人顧客が株式会社である場合は、以下の(1)⇒(2)⇒(3)⇒(4)の順に実質的支配者が判定されます。
(1)法人顧客の50%超の議決権を直接・間接に保有する自然人
(2)(1)がいない場合は、法人顧客の議決権の25%超の議決権を直接・間接に保有する自然人
(3)(1)・(3)に該当する自然人がいない場合は、出資、融資、取引その他の関係を通じて当該法人顧客の事業活動に支配的な影響力を有すると認められる自然人がいる場合は、当該自然人
(4)(1)から(3)に該当する自然人がいない場合は、当該法人顧客の業務執行をする代表者である自然人
(1)・(2)の基準に該当しても、その自然人が法人顧客の事業経営を実質的に支配する意思または能力を有していないことが明らかな場合(例えば意思能力がない場合など)は実質的支配者に該当しない。
「直接保有」とは、例えば,自然人Aが、法人顧客であるB社の議決権株式を自ら直接有していることをいう。「間接保有」とは、自然人Aが法人顧客であるB社の株主であるD社を介して間接的に甲株式会社の議決権株式を有していることをいう。この場合、間接保有というためには、自然人Aは、D社の50%超の議決権を有していることが要件となります。(下記図表参照)
実質的支配者に該当するのは原則として自然人であり法人は該当しないが、国、地方公共団体、上場会社またはその子会社は自然人とみなされるため、(1)・(2)の基準に該当する場合は実質的支配者に該当します。
実質的支配者リストの対象となる実質的支配者は(1)・(2)の基準に該当する自然人に限られ、(3)・(4)の基準に該当する自然人は対象とならない。
実質的支配者リストが適用される法人顧客は株式会社(特例有限会社を含む)に限られ、一般社団法人・財団法人、医療法人、学校法人、合同会社などの法人については、犯罪収益移転防止法上は実質的支配者である自然人の確認が必要となりますが、実質的支配者リスト制度の対象とならない。ただし、上場会社である株式会社である法人顧客については実質的支配者の確認は求められません。

〇実質的支配者の判断基準

出所:法務省「実質的支配者リスト制度の創設(令和4年1月31日運用開始)」

2.実質的支配者情報一覧制度
(1)実質的支配者情報一覧制度の創設
 日本の法人については実質的支配者についての商業登記制度がないため、犯罪収益移転防止法における法人顧客の実質的支配者の確認は専ら当該法人顧客の取引担当者からの申告によっています。これに対して、諸外国を見るとイギリス、フランス、ドイツ等には実質的支配者の登録制度があり、金融機関をはじめ、何人も実質的支配者情報にアクセスできます。
 公的機関において法人の実質的支配者に関する情報を把握することについては、法人の透明性を向上させ、資金洗浄等の目的による法人の悪用を防止する観点から、FATF(Financial Action Task Forces:金融活動作業部会)の勧告や金融機関からの要望等、国内外の要請が高まっていた。FATFが2021年8月30日に公表した第4次対日相互審査報告書においても、法人の実質的支配者の透明性について厳しい評価を受けました。
 これを受け、政府は、「商業登記所における実質的支配者情報一覧の保管等に関する規則」を2021年9月17日に公布しました。同規則は、2022年(令和4年)1月31日に施行されました。
 同規則に基づく実質的支配者情報一覧制度は、株式会社(特例有限会社を含む)からの申出により、商業登記所(法務局)の登記官が、その実質的支配者に関する情報を記載した書面を保管し、その写しを交付する制度です。
 株式会社は、その本店の所在地を管轄する商業登記所の登記官に対し、当該株式会社に係る「実質的支配者情報一覧」の保管及び実質的支配者情報一覧の写しの交付の申出をすることができます。
 申出を受けた登記官は、添付書面及び商業登記所の保有する情報等に基づき「実質的支配者情報一覧」の内容を調査します。
登記官は、調査が終わると「実質的支配者情報一覧」をスキャンして保管するとともに、申出法人について、「実質的支配者情報一覧」が保管されている旨を登記簿に付記します。これにより、「実質的支配者情報一覧」を届け出ている信用性の高い会社と評価され得ます。
 その上で、登記官は、当該法人に対し,「実質的支配者情報一覧」の写し(登記官が写しであることの認証を付したもの)を交付します。
 「実質的支配者情報一覧」の申請は、個人情報を含むプライバシー性の高い情報であるため、申出した株式会社のみができ、関係当局・提出先の金融機関等の事業者は実質的支配者情報一覧の交付申請をすることができません。この点については今後更なる法改正が期待されます。
 「実質的支配者情報一覧」に記載する実質的支配者の情報は申出日から1か月以内の情報である必要があります。
 申請した株子会社は、商業登記所に対して、「実質的支配者情報一覧」の写しの交付申請を無料で行うことができ、再交付の申請もできます。
 ただし、保存されている「実質的支配者情報一覧」に記載されている会社の商号、本店又は作成者である会社の代表者が変更されている場合には、再交付の申出をすることができません。この場合には,新たに実質的支配者情報一覧を作成して、申出をすることになります。
 なお、本制度は、任意の申出に基づいて「実質的支配者情報一覧」の写しを発行するものであるので、「実質的支配者情報一覧」に記載されている情報に変更があった場合であっても、変更後の「実質的支配者情報一覧」の保管及び写しの交付の申出をするかどうかも任意となります。

〇実質的支配者情報一覧(表面)

〇実質的支配者情報一覧(裏面)

出所:法務省「実質的支配者リスト制度の創設(令和4年1月31日運用開始)」

(2)実質的支配者情報一覧の作成方法・必要書類
 「実質的支配者情報一覧」の保管の申出は、会社の代表者又は代理人が申出法人の本店所在地の法務局に対して行います。手数料は無料で郵送による申出も可能です。
 申出書(「実質的支配者情報一覧の保管及び写し交付申出書」)には、(i)申出年月日、(ii)会社法人等番号、(iii)商号、(iv)本店所在地、(v)申出人の表示、(vi)(代理人がいる場合は)代理人の表示、(vii)必要な写しの通数・交付方法(「窓口で受取」・「郵送」の別)、(viii)利用目的(「金融機関への提出」・「その他」の別)を記載します。
 「実質的支配者情報一覧」の作成は【図表2】の「実質的支配者情報一覧(みほん)」のとおり行います。実質的支配者情報一覧には、�@実質的支配者の住居、�A氏名、�B国籍等、�C生年月日、�D議決権保有割合(間接保有が有る場合には別紙に支配関係図を記載)、�E添付書面、�F本人確認書面(記載は任意)を記載します。実質的支配者が複数人いる場合は、議決権保有の多い順に記載します(最大3名)。
 必ず添付しなければならない添付書面としては「申出会社の申出日における株主名簿の写し」です。株主名簿の写しに代えて、申告受理及び認証証明書(公証人発行,設立後最初の事業年度を経過していない場合に限る。)又は法人税確定申告書別表二の明細書の写し(申出日の属する事業年度の直前事業年度に係るもの)を添付することも認められます。実質的支配者情報一覧の記載と株主名簿の写し等の記載とで内容が合致しない場合(例えば、議決権保有割合が25%超でも支配する意思・能力を有しないことが明らかな者がいる場合)には,その理由を記載した代表者作成に係る書面等の添付を要します。
 任意に添付できる添付書面としては、運転免許証の表裏両面のコピー,住民票の写し 等の実質的支配者の本人確認書面、支配法人の申出日における株主名簿の写し等があります。
 その他、申出書又は委任状に代表者印が押印されている場合を除き,申出書に記載した申出会社の代表者の氏名・住所を確認することができる本人確認書面の添付を要します。また、代理人によって申出をする場合には委任状等の代理権限を証する書面の添付を要します。

3.金融機関が実質的支配者情報一覧を要求すべき場合
 現在、犯罪収益移転防止法において、取引時確認の際の実施的支配者の本人特定事項の確認は、法人顧客の代表者や取引担当者の申告により行われており、その信用性が担保されていません。
 今回創設される実質的支配者情報一覧制度も、法人顧客の申告により作成されるものですが、法務局に虚偽の事実を記載した実質的支配者情報一覧を申告すると公正証書原本不実記載罪に問われる可能性があるので、その内容について一定程度信用性を担保することができます。
 新規の法人顧客が預貯金口座を開設する際には、契約自由の原則により顧客に対して追加の書類を徴求することも可能であるので、当該法人顧客に対して実質的支配者情報一覧の写しの提出を求めることにより、信用性の高い実質的支配者情報を把握することが期待できます。
 また、既存の法人顧客から新規融資の申込があった際の査書類の一部として実質的支配者情報一覧の写しを求めることで、企業の健全性を推し量ることができます。
 さらに、既存の法人顧客について、継続的顧客管理の中でリスクに応じて適切に顧客の実質的支配者の本人確認事項を確認することが求められていますが、一定程度リスクが高いと判断した顧客については、「信頼に足る証跡」として、実質的支配者情報一覧の写しの提出を求めることが考えられます。
 金融機関としては、継続的顧客管理の観点で最新の法人顧客の「実質的支配者情報一覧」を求める場合には、当該法人顧客に対して、「実質的支配者情報一覧」の保管及び写しの交付の申出を再度することを求めることが考えられます。
  金融機関以外の事業会社も取引先の実質的支配者の反社チェックのために取引先に対して実質的支配者情報一覧の写しの提出を求めることが考えられます(任意の制度なので、取引会社間の力関係も関係してきます。)。
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4.実質的支配者情報一覧の見方
 「実質的支配者情報一覧」には、任意ではあるものの運転免許証の両面の写しなどの実質的支配者の本人確認書面が添付書面として提出される場合もあるため、実質的支配者の本人特定事項(氏名、住居、生年月日)について正確な情報を知ることができます。
 「実質的支配者情報一覧」は国籍情報も求めているため、外国籍の実質的支配者の情報もある程度正確に知ることができます。
実質的支配者について、議決権保有割合の中に間接支配の部分がある場合には、別紙に支配関係図を記載することが求められるため、株主の支配関係について正確な情報を知ることができます。
 実質的支配者が支配株主を介して間接的に25%超の議決権を保有している場合には、任意ではありますが支配株主の株主名簿の写し等が提出されれば、支配株主の支配構造も知ることができます。
 金融機関の担当者は 「実質的支配者情報一覧」の写しから、その企業の大株主実質的支配者の本人特定事項(氏名、住居、生年月日)を把握することができ、その情報を基に自行庫の反社データベースと照合することにより、反社会的勢力とのつながりをより高精度にチェックできます。
 法人顧客に対して、「実質的支配者情報一覧」の写しの提出を求めたところ、当該法人顧客の代表者が実質的支配者であるとの申告がある場合には、当日時点の株主名簿の写しや法人税確定申告書別表二の明細書の写し(申出日の属する事業年度の直前事業年度に係るもの)の提出を求め、実質的支配者となり得る25%超の議決権株式を保有する者がいないか確認することを要します。もし、25%超の議決権保有者がいる場合にその者を実質的支配者として申告しない場合は、法人の代表者や取引担当者に質問をして合理的な回答をしない場合は取引を謝絶することも検討する必要があります。
 なお、本制度は、任意の申出に基づいて「実質的支配者情報一覧」の写しを発行するものであるので、「実質的支配者情報一覧」に記載されている情報に変更があった場合であっても、変更後の「実質的支配者情報一覧」の保管及び写しの交付の申出をするかどうかも任意となる。新たな情報が記載された「実質的支配者情報一覧」の写しを必要とする場合には,改めて申出をすることとなります。金融機関としては、継続的顧客管理の観点で最新の法人顧客の「実質的支配者情報一覧」を求める場合には、当該法人顧客に対して、「実質的支配者情報一覧」の保管及び写しの交付の申出を再度することを求めることが考えられます。
 これによって、法人顧客のその時点での最新の実質的支配者情報を把握することができ、大株主に変更があるか把握できます。

銀証ファイアーウォール規制の見直し

2022/01/26

(2022年4月28日更新)

ニュースレター:銀証ファイアーウォール規制見直し(令和4年4月22日パブコメ回答反映版)

 令和4年4月22日に「金融商品取引業等に関する内閣府令及び金融サービス仲介業者等に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」(令和4年内閣府令第35号)が公布されました。
 同日に金融庁は、「「金融商品取引業等に関する内閣府令及び金融サービス仲介業者等に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令(案)」等に対するパブリックコメントの結果等について」を公表しました。同公表における「コメントの概要及びコメントに対する金融庁の考え方」においては、パブリックコメントに対する金融庁の回答が示されています(以下各パブコメ番号のことを「PC〇」といいます。)。
これは、令和3年(2021年)12月24日に金融庁から公表されたパブリックコメント「「金融商品取引業等に関する内閣府令及び金融サービス仲介業者等に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令(案)」等の公表について」(令和4年(2022年1月24日意見募集締切)に対するパブリックコメント回答です。
_ 本改正は公布後直ちには施行されず、証券会社等の準備期間のために、令和4年6月22日から施行されます。
_ 同改正は、令和3年6月30日になされた外国会社である顧客についての銀証ファイアーウォール規制から適用除外に続き、上場企業等である顧客へのオプトアウト制度の緩和や「電磁的方法による同意」の導入がなされます。
なお、利益相反管理体制に関する監督指針の改正もありますが、本ニュースレターでは銀証ファイアーウォール規制見直しに絞って解説いたします。

ニュースレター:銀証ファイアーウォール規制見直し(令和4年4月22日パブコメ回答反映版)
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執筆者:渡邉雅之
* 本ニュースレターに関するご相談などがありましたら、下記にご連絡ください。
弁護士法人三宅法律事務所
弁護士渡邉雅之
TEL 03-5288-1021
FAX 03-5288-1025
Emailm-watanabe@miyake.gr.jp

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(2022年1月26日作成)
令和3年(2021年)12月24日に金融庁からパブリックコメント「「金融商品取引業等に関する内閣府令及び金融サービス仲介業者等に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令(案)」等の公表について」が公表されました(令和4年(2022年1月24日意見募集締切)。
同改正は、令和3年6月30日になされた外国会社である顧客についての銀証ファイアーウォール規制から適用除外に続き、上場企業等である顧客へのオプトアウト制度の緩和や「電磁的方法による同意」の導入がなされます。
なお、利益相反管理体制に関する監督指針の改正もありますが、本ニュースレターでは銀証ファイアーウォール規制見直しに絞って解説いたします。

ニュースレター:銀証ファイアーウォール規制の見直し
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執筆者:渡邉雅之
* 本ニュースレターに関するご相談などがありましたら、下記にご連絡ください。
弁護士法人三宅法律事務所
弁護士渡邉雅之
TEL 03-5288-1021
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その業務委託、偽装請負と疑われませんか?

2022/01/21

(執筆者:弁護士 森村 奨)

【Q.】
 このたび、当社では、外注先企業との間で業務委託契約を締結し、当社のシステム開発を行うことになりました。この契約によると、当該外注先企業の作業員が当社の事務所内にて作業を行うことになりますが、いわゆる偽装請負であると疑われないか心配です。どういった点に留意すればよいでしょうか。
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【A.】
1.はじめに
 昨今、企業では、業務の一部を他社に委託することは日常的に行われており、ご質問のような業務委託契約が締結されることも珍しくありません。もっとも、このような業務委託には、一歩間違えるといわゆる偽装請負に該当するリスクもあります。
 そこで、本稿では、偽装請負やその判断基準について検討したうえで、業務委託を行う際に偽装請負であると疑われないための留意点について説明いたします。
 
2.偽装請負とは
 偽装請負とは、形式的には「業務委託契約」などの請負や委任(準委任)となっているものの、委託者が他人である受託者の労働者に対して直接指揮命令を行っており、実態として労働者派遣に該当するような場合をいいます。
 本来、請負や委任(準委任)では、受託者は、自らの労働者に対し自ら指揮命令して、契約で定められた仕事の完成や受託業務の処理を行うことになっており、委託者が受託者の労働者に指揮命令をすることは予定されていません。この点が雇用主でない派遣先の指揮命令の下、派遣先のために労務を提供する労働者派遣との大きな違いとなります。
 偽装請負であると判断された場合、本来的には労働者派遣法に基づいて行うべき労働者派遣を同法に基づかずに行ったことになりますので、罰則や種々の行政監督の対象となることがあります(同法59条2号、48条1項等)。また、場合によっては、委託者は、労働者派遣法の脱法目的で偽装請負により受託者の労働者を受け入れたとして、当該労働者に対して直接労働契約の申し込みをしたものとみなされる可能性もあります(同法40条の6第1項5号)。

3.偽装請負に関する判断基準
 偽装請負に関する判断基準については、労働省(当時)から「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(昭和61年労働省告示第37号。以下「37号告示」)が発出されており、この基準によると、偽装請負と判断されないためには、�@、�Aのいずれにも該当することが必要です。また、それぞれに該当するためには(a)〜(c)が求められます。

_請負事業者が自己の雇用する労働者の労働力を自ら直接利用すること
(a)業務の遂行に関する指示その他の管理を自ら行うこと
(b)労働時間等に関する指示その他の管理を自ら行うこと
(c)企業における秩序の維持、確保等のための指示その他の管理を自ら行うこと

_請負事業者が請け負った業務を自己の業務として当該契約の相手方から独立して処理すること
(a)業務の処理に要する資金につき、すべて自らの責任の下に調達し、かつ、支弁すること
(b)業務の処理について、民法等に規定された事業主としてのすべての責任を負うこと
(c)自己の責任と負担で準備し、調達する機械、設備もしくは器材(業務上必要な簡易な工具を除く)、または材料もしくは資材により業務を処理することや、自ら行う企画または自己の有する専門的な技術もしくは経験に基づいて業務を処理することにより、単に肉体的な労働力を提供するものでないこと

 さらに、37号告示に関しては、「『労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準』(37号告示)に関する疑義応答集」(以下「疑義応答集」)が公表されており、これらも告示の解釈にあたって参考となるでしょう。
 2で述べたように、請負等と労働者派遣の大きな違いが、「他人の労働者に対して直接指揮命令を行うかどうか」にあることからすると、偽装請負であると疑われないためには、37号告示や疑義応答集を参考に、例えば、「作業内容や労働時間に関する指示等は受託者の責任者に対して行う」など、作業員に対して直接的な指揮命令をしないように留意する必要があるでしょう。
  
4.最後に
 前述のとおり、偽装請負の該当性については37号告示や疑義応答集が参考となりますが、業務委託の具体的な形態等によっては、微妙な判断を伴う場合もあります。該当性の判断にお悩みの際には、弁護士等の専門家に相談することもご検討ください。

【解説動画・資料】2021年犯罪収益移転危険度調査書に基づくリスク評価書の見直し・継続的顧客管理・疑わしい取引の届出への活用

2021/12/27

2021年12月27日(月)に実施した無料ウェビナー『2021年犯罪収益移転危険度調査書に基づくリスク評価書の見直し・継続的顧客管理・疑わしい取引の届出への活用』の解説動画と解説資料を掲載いたします(解説資料はウェビナー終了後改訂しています。)。

解説動画:2021年犯罪収益移転危険度調査書に基づくリスク評価書の見直し・継続的顧客管理・疑わしい取引の届出への活用

解説資料:2021年犯罪収益移転危険度調査書に基づくリスク評価書の見直し・継続的顧客管理・疑わしい取引の届出への活用

(本資料等に関するご質問・ご相談は下記にご連絡ください)
弁護士法人三宅法律事務所 パートナー
弁護士 渡邉 雅之
TEL: 03-5288-1021
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TCFDにおけるシナリオ分析

2021/11/30

(執筆者 弁護士・経営法曹会議幹事 黒田清行)

2021年6月11日コーポレートガバンス・コード改訂により、開示すべき原則が拡大し、
とりわけサステナビリティーへの取り組みに関する補充原則3-1�Bプライム市場上場
会社向の「TCFDまたはそれと同等の枠組みに基づく開示の質と量の充実を進めるべき
である」について、コンプライorエクスプレインの判断に悩まれている実務担当者も
少なくないのではないかと思います。
本稿では、TCFDの中核的要素「戦略」のシナリオ分析について解説させていただきます。

新型コロナで業績悪化、整理解雇は認められるのか?

2021/11/19

(執筆者:弁護士 八木康友)
【Q.】
 当社は、新型コロナウイルスの感染拡大のあおりを受けて業績が悪化する中、ついに従業員のリストラ(整理解雇)を検討せざるを得ない状況となりました。実際に行った場合に、このような解雇は認められるのでしょうか。また、その際に気をつけるべき点について教えてください。
【A.】

1.はじめに
 世界的な新型コロナウイルスの感染拡大から1年半以上が経過していますが、今なおその終息の見通しが立っておらず、一部の事業者では、事業の合理化という観点から、従業員の整理解雇を検討することもあるかと思います。
 そこで今回は、整理解雇の有効性の判断枠組みについて整理し、コロナ禍における業務縮小を理由として整理解雇を行った事案に触れつつ、整理解雇の実施にかかる注意点について、ご説明します。
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2.整理解雇の有効性の判断枠組みについて
 まず「整理解雇」とは、経営上必要とされる人員削減を理由として行う解雇を指します。その有効性については、その他の理由に基づいて行う解雇と同様に、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」(労働契約法第16条)とされています(以下「解雇権濫用法理」)。
 そして、整理解雇が「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない」か否かについては、裁判例上、�@人員削減の必要性、�A人員削減の手段として整理解雇を選択することの必要性(解雇回避努力)、�B被解雇者の選定の合理性、�C手続きの相当性という4要素についての総合的な考慮のもと判断されています。
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3.コロナ禍における業務縮小を理由に整理解雇を行った事案について
 近時においては、コロナ禍における業務縮小を理由として整理解雇が行われた事案(福岡地決令和3年3月9日・労判1244号31頁)において、被解雇者と会社との間で、その整理解雇が解雇権濫用法理に反し無効であるか否かが争われました。
 本事案の決定では、基本的に前述の2に記載の判断枠組みに沿って、�@人員削減の必要性、�C手続きの相当性、�B被解雇者の選定の合理性が検討され、最終的に、本件での整理解雇については、解雇権濫用法理に反し無効であると判断されました。
 ただし、本決定では、新型コロナウイルス感染拡大の影響による会社の事業遂行状況の悪化及び売上額の減少、従業員の社会保険料の負担額、補助金の支給状況の不透明性などの考慮のもと、�@人員削減の必要性が一応認められており、主に、�C手続きの相当性を欠く、�B被解雇者の選定の合理性を認め難いという観点から、本件での整理解雇が解雇権濫用法理に反するものと判断されています。
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4.コロナ禍における整理解雇実施にかかる注意点
 上記3の事案を見てもわかるとおり、コロナ禍において整理解雇を行う場合には、基本的に2に記載の判断枠組みに沿って、その有効性が判断されることになります。この点、コロナ禍における業務縮小は、�@人員削減の必要性を認める一事情となりえるものの、そのほかの3要素については、その他の理由によって整理解雇する場合と同様の検討を要するという点において注意が必要です。
 具体的には、新型コロナウイルス感染拡大による事業・売上への影響、行政機関等からの補助金の支給状況などに鑑み、人員削減の必要性があるといえるか否か(�@の観点)、配転・出向・一時帰休・役員報酬の減額・希望退職者の募集などの措置によって解雇を回避できないか否か(�Aの観点)、解雇対象者の選定について客観的でかつ合理的な基準を公正に適用して行っているか否か(�Bの観点)、解雇回避の努力を行った上で、解雇の必要性・規模・方法・人選基準等について従業員に説明し、解雇に関して労働組合や労働者と十分に協議するなど解雇を適切な手続きのもと行っているか否か(�Cの観点)を検討することになります。
 このように、整理解雇の有効性判断については、具体的事情を踏まえた総合的な検討を要するため、整理解雇を実施せざるを得ない場合には、必要に応じて専門家に相談するなど、無効な解雇とならないように注意しましょう。

小売・外食事業者に求められる「特定プラスチック使用製品の使用の合理化」に関する措置

2021/10/16

_2021 年10月26日に実施した関連ウェビナーの動画解説と資料を掲載いたします

動画解説:プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律

解説資料:プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律

執筆者:渡邉雅之
* 本ニュースレターに関するご相談などがありましたら、下記にご連絡ください。
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弁護士渡邉雅之
TEL 03-5288-1021
FAX 03-5288-1025
Email m-watanabe@miyake.gr.jp

_PDFファイルは下記(↓)をご覧ください。

小売・外食事業者に求められる「特定プラスチック使用製品の使用の合理化」に関する措置

「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」(令和3年6月11日法律第60号、令和4年4月1日施行予定)に関して、2021年10月8日に政令案・省令案のパブリックコメントがなされました。本ニュースレターでは、小売・外食事業者に求められる「特定プラスチック使用製品の使用の合理化」に関する措置について解説いたします。
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〇法案等
https://www.env.go.jp/press/109195.html(以下「法」といいます。)
〇パブリックコメント
『プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律施行令案」等に対する意見募集について』(2021年10月8日)
別紙1「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」の政省令・告示について_
別紙2法律施行令案(仮称)・法律施行期日を定める政令案(仮称)_(以下「政令案」といいます。)
別紙3プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律施行規則案(仮称)_
別紙4プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律に基づく指定調査機関等に関する省令案(仮称)_
別紙5特定プラスチック使用製品提供事業者の使用の合理化による排出の抑制に関する判断基準省令案(仮称)_(以下「判断基準省令案」といいます。)
別紙6プラスチック使用製品産業廃棄物等の排出の抑制及び再資源化等の促進に関する判断基準省令案(仮称)_
別紙7プラスチック資源の分別収集物の基準及び委託の基準に関する省令案(仮称)
別紙8プラスチックに係る資源循環の促進等を総合的かつ計画的に推進するための基本的な方針案(仮称)
別紙9プラスチック使用製品設計指針案(仮称)_
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_〇外食企業に関連がある部分
『第四章 特定プラスチック使用製品の使用の合理化(28条〜30条)』

1.事業者の判断の基準となるべき事項(法28条1項)
主務大臣(※1)は、プラスチック使用製品廃棄物の排出を抑制するため、主務省令で、その事業において「特定プラスチック使用製品」を提供する事業者(フランチャイザー(加盟者)を有するフランチャイジー(本部事業者)をを含む(※2))(「特定プラスチック使用製品提供事業者」)が特定プラスチック使用製品の使用の合理化によりプラスチック使用製品廃棄物の排出を抑制するために取り組むべき措置に関し、当該特定プラスチック使用製品提供事業者の判断の基準となるべき事項を定めるものとされています。
(※1)本法における「主務大臣」は、「経済産業大臣」及び「環境大臣」です。ただし、「特定プラスチック使用製品の使用の合理化に関する事項」に関しては、「経済産業大臣」及び「特定プラスチック使用製品提供事業者が行う事業を所管する大臣」とされています。(法58条1項本文・2号)
(※2)法律上、フランチャイザー(本部事業者)は「定型的な約款による契約に基づき、当該業種に属する事業を行う者に特定の商標、商号その他の表示を使用させ、商品の販売又は役務の提供に関する方法を指定し、かつ、継続的に経営に関する指導を行う事業を行う者」と定義されています。
「定型約款」は2020年4月1日に改正法が施行された民法に設けられている制度ですが、定型取引(ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引であって、その内容の全部又は一部が画一的であることがその双方にとって合理的なものをいう。)において、契約の内容とすることを目的としてその特定の者により準備された条項の総体をいいます(民法548条の2第1項)。
フランチャイズ契約が「定型的な約款による契約」に該当しない場合のフランチャイザー(本部事業者)も含まれるのかパブリックコメントで質問することが考えられます。
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(1)特定プラスチック使用製品(政令案5条)
商品の販売又は役務の提供に付随して消費者に無償で提供されるプラスチック使用製品のうち、提供量が多く使用の合理化の取組によってプラスチック使用製品廃棄物の排出の抑制が見こまれる観点、過剰な使用の削減を促すべき観点、代替素材への転換を促す観点等から、以下の製品が指定されています。

主としてプラスチック製のフォーク、スプーン、ナイフ、マドラー、ストロー、ヘアブラシ、櫛、剃刀、シャワー用のキャップ、歯刷子、ハンガー、衣類用のカバー

「主として」については、条文上解釈が示されていません。政令案・省令案のパブリックコメントで質問することが考えられます。
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(2)特定プラスチック使用製品提供事業者の業種(政令案6条)
特定プラスチック使用製品の提供量が多く、使用の合理化を行うことが特に必要な業種として、以下を指定されています。(主たる事業が下記の業種に該当しなくても、事業活動の一部で下記の業種に属する事業を行っている場合には、その事業の範囲で対象となります。)

各種商品小売業、各種食料品小売業、その他の飲食料品小売業、無店舗小売業、宿泊業、飲食店、持ち帰り・配達飲食サービス業、洗濯業

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(3)判断の基準
�@目標の設定(判断基準省令案1条):
特定プラスチック使用製品提供事業者 は、特定プラスチック使用製品の使用の合理化を図るため、当該事業において提供する特定プラスチック使用製品の使用の合理化に関する目標を下記に示す方法によって定め、これを 達成するための取組を計画的に行わなければなりません。
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特定プラスチック使用製品の提供量(トン)

売上高、店舗面積その他の特定プラスチック使用製品の提供量と密接な関係をもつ値

特定プラスチック使用製品の提供に係る原単位

基準年度
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年度

�@

�B
(名称:   )
(単位:   )

�D(�@/�B)

目標年度
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年度

�A

�C
(名称:   )
(単位:   )

�E(�A/�C)

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変化率(�A/�@×100)

変化率(�C/�B×100)

変化率(�E/�D×100)

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�A特定プラスチック使用製品の使用の合理化(判断基準省令案2条)
特定プラスチック使用製品提供事業者 は、次に掲げる取組その他の特定プラスチック使用製品の使用の合理化のための取組を行うことにより、プラスチック使用製品廃棄物の排出の抑制しなければなりません。
【提供方法の工夫】
〇商品の販売又は役務の提供に際しては、消費者にその提供する特定プラスチック使用製品を有償で提供すること
〇消費者が商品を購入し又は役務の提供を受ける際にその提供する特定プラスチック使用製品を使用しないように誘引するための手段として景品等を提供(ポイント還元等)すること
〇その提供する特定プラスチック使用製品について消費者の意思を確認すること
〇その提供する特定プラスチック使用製品について繰り返し使用を促すこと。
【提供する特定プラスチック使用製品の工夫】
〇薄肉化又は軽量化等の特定プラスチック使用製品の設計又はその部品若しくは原材料の種類(再生可能資源、再生プラスチック等)について工夫された特定プラスチック使用製品を提供すること
〇適切な寸法の特定プラスチック使用製品を提供すること
〇繰り返し使用が可能な製品を提供すること
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�B情報の提供(判断基準省令案3条)
消費者によるプラスチック使用製品廃棄物の排出の抑制を促進するための情報等について、以下の方法又はその他の措置を講ずることにより情報提供します。

店頭においてプラスチック使用製品廃棄物の排出の抑制に資する事項を掲示すること

特定プラスチック使用製品提供事業者自らが特定プラスチック使用製品の使用の合理化のために実施する取組の内容をウェブサイト等に公表すること

提供する特定プラスチック使用製品にプラスチック使用製品廃棄物の排出の抑制の重要性についての表示を付すことその他の措置を講ずること

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�C体制の整備等(判断基準省令案4条)
特定プラスチック使用製品提供事業者は、特定プラスチック使用製品の使用の合理化を図るため、�@特定プラスチック使用製品の使用の合理化のための取組に関する責任者を設置する等必要な体制の整備を行うとともに、�Aその従業員に対し、特定プラスチック使用製品の使用の合理化のための取組に関する研修を実施する等の措置を講じなければなりません。
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�D安全性等の配慮(判断基準省令案5条)
特定プラスチック使用製品提供事業者 は、「特定プラスチック使用製品の合理化」(上記�A:判断基準省令案2条)に基づき実施する取組により特定プラスチック使用製品の使用の合理化を図る際には、その提供する特定プラスチック使用製品に関し、その安全性、機能性その他の必要な事情に配慮しなければなりません。
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�E特定プラスチック使用製品の使用の合理化の実施状況の把握等(判断基準省令案6条)
提供した量並びに特定プラスチック使用製品の使用の合理化のために実施した取組及びその効果を適切に把握し、情報を公開するよう努めるものとする。
特定プラスチック使用製品提供事業者 は、その事業において「特定プラスチック使用製品を提供した量」並びに「特定プラスチック使用製品の使用の合理化のために実施した取組及びその効果」を適切に把握し、情報を公開するよう努めなければなりません。

�F関係者との連携(判断基準省令案7条)
特定プラスチック使用製品提供事業者は、特定プラスチック使用製品の使用の合理化のための取組を効率的に行うため、国、関係地方公共団体、消費者、関係団体及び関係事業者との連携を図るよう配慮しなければなりません。その際、必要に応じて取引先の協力を求めなければなりません。
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2.基準の策定・必要な改定(法28条2項〜4項)
「事業者の判断の基準となるべき事項」(上記1)は、基本方針に即し、かつ、特定プラスチック使用製品の使用の合理化の状況、特定プラスチック使用製品の使用の合理化に関する技術水準その他の事情を勘案して定めるものとし、これらの事情の変動に応じて必要な改定をするものとする。(法28条2項)
主務大臣は、「事業者の判断の基準となるべき事項」を定め、又はその改定をしようとするときは、あらかじめ、環境大臣に協議しなければならない。(法28条3項)
主務大臣は、「事業者の判断の基準となるべき事項」を定め、又はその改定をしたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。(法28条4項)
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3.指導及び助言(法29条)
主務大臣は、プラスチック使用製品廃棄物の排出を抑制するため必要があると認めるときは、特定プラスチック使用製品提供事業者に対し、「事業者の判断の基準となるべき事項」(上記1)を勘案して、特定プラスチック使用製品の使用の合理化によるプラスチック使用製品廃棄物の排出の抑制について必要な指導及び助言をすることができる。
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4.勧告及び命令(法30条)
(1)特定プラスチック使用製品多量提供事業者への勧告・命令(法30条1項、政令案7条)
主務大臣は、特定プラスチック使用製品提供事業者であって、その事業において提供する「特定プラスチック使用製品多量提供事業者」(=「特定プラスチック使用製品提供事業者」のうち、その事業において前年度において提供した「特定プラスチック使用製品の量」が「5トン以上」であるもの)の特定プラスチック使用製品の使用の合理化によるプラスチック使用製品廃棄物の排出の抑制の状況が「事業者の判断の基準となるべき事項」(上記1)に照らして著しく不十分であると認めるときは、当該「特定プラスチック使用製品多量提供事業者」に対し、その判断の根拠を示して、特定プラスチック使用製品の使用の合理化によるプラスチック使用製品廃棄物の排出の抑制に関し必要な措置をとるべき旨の勧告をすることができます。
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(2)フランチャイザー(本部事業者)におけるフランチャイジー(加盟者)の提供する特定プラスチック使用製品の量の勘案(法30条2項、判断基準省令案8条)
上記(1)に関して、フランチャイザー(本部事業者)が「特定プラスチック使用製品の量」(=当該年度の前年度において提供した特定プラスチック使用製品の量が5トン以上)に該当するかの判断(すなわち、「特定プラスチック使用製品多量提供事業者」に該当するかの判断)には、フランチャイジー(加盟者)の事業において提供する特定プラスチック使用製品の量を含む場合があります。
具体的には、フランチャイザー(本部事業者)とフランチャイジー(加盟者)の契約が「定型的な約款」による契約に基づき、特定の商標、商号その他の表示を使用させ、商品の販売又は役務の提供に関する方法を指定し、かつ、継続的に経営に関する指導を行う事業であって、当該約款に、以下の事項が定められている場合です。
�@特定プラスチック使用製品 に関し、本部事業者が加盟者を指導又は助言する旨の定め
�A特定プラスチック使用製品に関し、本部事業者及び加盟者が連携して取り組む旨の定め
�B本部事業者と加盟者との間で締結した約款以外の契約書に�@又�Aの定めが記載され、当該契約書を遵守するものとする定め
�C本部事業者が定めた環境方針又は行動規範に�@又は�Aの定めが記載され、当該環境方針又は行動規範を遵守するものとする定め
�D特定プラスチック使用製品に関し、法に基づきプラスチックに係る資源循環の促進等のための措置を講ずる旨が記載された、本部事業者が定めたマニュアルを遵守するものとする定め
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※フランチャイザー(本部事業者)とフランチャイジー(加盟者)は「定型的な約款」ではない、個別契約(フランチャイズ契約)を締結する場合もありますが、このような場合も本条(法30条2項)の対象となるのかパブリックコメントで確認することが考えられます。
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(3)勧告に従わなかった特定プラスチック使用製品多量提供事業者の公表(法30条3項)
主務大臣は、上記(1)の勧告を受けた特定プラスチック使用製品多量提供事業者がその勧告に従わなかったときは、その旨を公表することができます。
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(4)措置命令(法30条4項、62条、66条)
主務大臣は、上記(1)の勧告を受けた特定プラスチック使用製品多量提供事業者が、上記(3)の勧告に従わなかった旨を公表された後において、なお、正当な理由がなくてその勧告に係る措置をとらなかった場合において、特定プラスチック使用製品の使用の合理化によるプラスチック使用製品廃棄物の排出の抑制を著しく害すると認めるときは、大臣ごとに以下の審議会の意見を聴いて、当該特定プラスチック使用製品多量提供事業者に対し、その勧告に係る措置をとるべきことを命ずることができます。

厚生労働大臣

厚生科学審議会(調整中)

農林水産大臣

食料・農業・農村政策審議会(調整中)

経済産業大臣

産業構造審議会

国土交通大臣

交通政策審議会

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5.罰則
措置命令違反の特定プラスチック使用製品多量提供事業者には、当該違反行為をした者は、50万円以下の罰金に処せられます(法62条)。
法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、当該違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して各本条の刑を科します。(法66条)

商品名・ロゴマーク等の模倣品への対応

2021/10/08

(執筆者:弁護士 平山 照)
【Q.】
 当社が販売している商品に付しているロゴマークと類似したロゴマークが付けられた模倣品が、海外から輸入されて出回っているようです。このような場合に、何らかの対抗策をとることはできるでしょうか。
【A.】

1.はじめに
 多くの企業では、自社の商品やサービスに対する顧客の信頼を維持・向上するために、品質改善や宣伝広告等の様々な企業努力を行っているものと思います。
 ところが、第三者が不正に商品名やロゴマーク等を模倣した商品等を販売すると、そのような企業努力の成果に「ただ乗り」されることとなり、商品等の売り上げに影響が生じ得ますし、苦労して築き上げたブランド力が毀損されることにも繋がりかねません。特に、最近はインターネットを通じて、個人でも海外から容易に模倣品を輸入できるようになり、そのような模倣品による知的財産権の侵害が深刻となっています。
 今回は、このような海外からの模倣品流入への対抗策として、商標登録の意義と関税法に基づく水際対策についてご説明します。
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2.商標権に基づく権利行使
 商品名やロゴマーク等は、自社の商品やサービスを他社の商品等と識別するものとして重要な意義を有しています。このような商品名やロゴマーク等について商標登録を行うことで、商標権に基づく権利行使が可能となります。
 ご質問の事例では、ロゴマークについて商標登録をしている場合、商標登録をしているロゴマークと同一または類似するロゴマークを付して、商標登録時に登録された指定商品と同一または類似する商品を輸入し、販売することは、商標権の侵害行為に該当します。そこで、商標権侵害を理由に、輸入販売を行っている者に対して、輸入及び販売行為の差止め(商品の廃棄や商標の抹消等を含みます)、損害賠償等を求めることができます。損害賠償については、商標権の侵害によって被った損害の立証が容易でない場合も多いことから、商標法では損害額の推定規定が設けられており、商標権者の保護がはかられています。
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3.税関での水際対策
 海外からの模倣品の輸入を防ぐための水際対策として、関税法に基づき税関での輸入差止めを求めることも可能です。商標権などの知的財産権の権利者は、全国9カ所にあるいずれかの税関に差止申立書を提出することで、税関において、知的財産権の侵害の疑いのある物品が輸入されようとした場合に、侵害物品に該当するか否かを判断する認定手続を行うよう求めることができます。認定手続において侵害品に該当すると認定された場合、輸入は認められません(認定結果に不服がある輸入者は、行政不服審査法に基づく不服申立てが可能です)。
 しかし現行の商標法では、個人が自己使用目的で輸入する行為については、商標権の侵害行為とはされておらず、税関での輸入差止めの認定手続においても、個人の輸入者から「個人使用目的である」との主張がなされた場合には、輸入を阻止することが困難な状況にあります。そこで政府は、このような状況に対処するために、商標法を改正し、海外事業者が模倣品を郵送等により国内に持ち込む行為を商標権の侵害として位置付けることとしました。改正法は令和3年5月14日に成立し、5月21日に公布され、公布の日から1年6カ月以内の政令で定める日から施行されます。また、意匠法についても同様の改正がなされています。これによって、税関における水際対策が強化されることが期待されます。
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4.まとめ
 以上のとおり、自社の商品名やロゴマークについて商標登録を行うことは、模倣品に対する対抗策として有用です。
 商標登録をしていない場合であっても、不正競争防止法に定める周知表示混同惹起行為などに該当するとして、同法に基づく差止め、損害賠償、税関への輸入差止申立などの手段をとることも考えられますが、周知性(需要者の間に広く認識されていること)の立証など、不正競争防止法に基づく権利行使のハードルは高いといえます。そのため、自社の製品やサービスを売り出していく場合には、早期に商標登録を行うことをご検討ください。

不当表示に注意! 他社製品との「比較広告」に関する規制

2021/07/05

(執筆者:弁護士 竹村知己)
【Q.】
 当社では現在、自社製品の販売促進策として、競合する他社製品と比較してその優位性を示す広告を打つことを検討しています。ですが、そのような広告はそもそも許されるのでしょうか。また、どのような点に気を付けなければいけないのでしょうか。規制があれば、教えてください。_

【A.】
1.「比較広告」とは
 「比較広告」とは、一般に、自己の供給する商品または役務(以下「商品等」)について、これと競争関係にある特定の商品等を比較対象として示し、商品等の内容や取引条件に関して評価することによって比較する広告をいいます。ご質問にある、自社製品を競合する他社製品と比較してその優位性を示す広告は、まさに比較広告に当たるといえるでしょう。
 こうした比較広告は、同種の商品等の内容や取引条件についての特徴を比較検討することができるため、消費者による適正な商品選択に役立つことが期待されます。しかし一方で、これを無制限に許容した場合には、適切な比較検討が妨げられ、消費者による適正な商品選択も阻害されることになりかねません。
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2.景品表示法による規制について
 景品表示法第5条第1号は、自己の供給する商品等の取引について、商品等の内容が実際のものよりも著しく優良であると示し、または事実に相違して当該事業者と同種もしくは類似の商品等を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると一般消費者に誤認される表示を、いわゆる「優良誤認表示」として禁止しています。
 また、同条第2号は、商品等の取引条件が実際のもの、または当該事業者と同種もしくは類似の商品等を供給している他の事業者に係るものよりも著しく有利であると一般消費者に誤認される表示を、いわゆる「有利誤認表示」として禁止しています。

3.比較広告への適用
 比較広告についても、これらの規制が適用されることになります。では、具体的に、どのように適用されるのでしょうか。
 この点について、消費者庁から「比較広告に関する景品表示法上の考え方」(https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/guideline/pdf/100121premiums_37.pdf) が発出されており、比較広告が不当(違法)な表示とならないようにするためには、次の3つの要件を満たす必要があるとの考え方が示されています。

�@比較広告で主張する内容が客観的に実証されていること
�A実証されている数値や事実を正確かつ適正に引用すること
�B比較の方法が公正であること

 したがって、例えば、比較広告で主張する事項について、社会通念上及び経験則上、妥当と考えられる方法によって主張しようとする事実が存在することの調査が行われ、当該事実の存在が客観的に実証され、かつ、その結果を、前提となる条件等も含めて正確に引用し、さらにその比較を恣意的に行うことなく公正な方法で行っている場合には、上記3要件に沿うものとして「適法」であると考えられます。
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4.おわりに
 このように、競合事業者の商品等との比較そのものが禁止されるわけではありませんが、上記規制には十分に留意しなければなりません。違反した場合には、措置命令や課徴金納付命令を受けることもあり得ます。
なお、上記3要件が具体的にどのように適用されるかについては、さらに深い検討を要するため、比較広告を行う場合には、必要に応じて専門家に相談するなど、不当な表示とならないように注意しましょう。

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