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トピックス・法律情報

『知的財産の利用に関する独占禁止法上の指針』

2008/04/01

(執筆者:弁護士 竹田千穂)
1 はじめに
独占禁止法21条は,著作権法,特許法,実用新案法,意匠法または商標法(以下「知的財産法」といいます。)による「権利の行使と認められる行為」には独占禁止法の適用がないとしています。しかしながら,技術の利用に係る制限行為は無制限に認められるものではなく,同法の適用によりかかる制限行為が違法とされるケースもあります。
公正取引委員会は,その解釈指針として平成11年に公表した「特許・ノウハウライセンス契約に関する独占禁止法上の指針」(以下「旧指針」といいます。)を今般改定し,平成19年9月28日に「知的財産の利用に関する独占禁止法上の指針」(以下「新指針」といいます。)を公表しました。そこで,今回は新指針の主なポイントを説明します。
2 対象となる知的財産の拡大(新指針 第1の2(1))
旧指針は,その対象を「特許又はノウハウとして保護される技術」に限定していましたが,新指針は,「知的財産のうち技術に関するもの」(「特許法,実用新案法,半導体集積回路の回路配置に関する法律または種苗法によって保護される技術,著作権法,意匠法によって保護される技術並びにノウハウとして保護される技術」)に拡大しました。
3 競争減殺効果の考え方についての横断的記述(第2の2〜5)
旧指針は,独占禁止法の適用により技術の利用に係る制限行為が違法とされる行為を必要に応じて行為ごとに記述していたのに対し,新指針は,競争に及ぼす影響を分析する際の基本的な考え方を,市場・競争減殺効果の分析方法の別に横断的に記述するとともに,同効果への影響が大きい場合及び同効果が軽微な場合の例を明らかにしました。
すなわち,新指針は,競争減殺効果の分析方法について,「制限の内容及び態様,当該技術の用途や有用性のほか,対象市場ごとに当該制限に係る当事者間の競争関係の有無(注7 制限行為前から当事者が競争関係にある場合,ライセンスにより初めて競争関係を生じる場合及びライセンスによっても競争関係を生じない場合が考えられる。),当事者の占める地位(シェア,順位等),対象市場全体の状況(当事者の競争者の数,市場集中度,取引される製品の特性,差別化の程度,流通経路,新規参入の難易性等)及び制限を課すことについての合理的理由の有無並びに研究開発意欲及びライセンス意欲への影響を総合的に勘案し,判断する」ことを明らかにしています。
また,新指針においては,競争減殺効果が軽微な場合の例として,�@製品市場における競争への影響については,製品シェアが20%以下の場合,�A技術市場における競争への影響については,a.製品シェアを用いることが適当な場合には同シェアが20%以下である場合,b.製品シェアが算出不能または同シェアを用いることが適当でない場合には代替技術事業者数が4以上である場合を挙げています。
なお,市場シェアが低い等の場合であっても独占禁止法上問題となりうることがある行為,すなわち,「製品の販売価格,販売数量,販売シェア,販売地域若しくは販売先に係る制限,研究開発活動の制限又は改良技術の譲渡義務・独占的ライセンス義務を課す場合」には以上の考え方は適用されないとしています。
4 技術を利用させないようにする行為(第2の1,第3の1(1),第4の2)
旧指針は,特許及びノウハウのライセンス契約に伴う制限についての考え方を明らかにしていましたが,新指針は,技術に権利を有する者が技術を利用させないようにする行為についての考え方を示しています。
すなわち,新指針は,独占禁止法21条については,旧指針と同様,知的財産制度の趣旨を逸脱し,又は同制度の目的に反すると認められる場合には独占禁止法が適用されるとしたうえで,技術を利用させないようにする行為について,「他の事業者に対してライセンスを行わない行為や,ライセンスを受けずに当該技術を利用する事業者に対して差止請求訴訟を提起する行為は権利の行使とみられる行為であり,通常は,それ自体では問題とならない」が,例えば,パテントプールを形成している事業者が新規参入者や特定の既存事業者に対するライセンスを合理的理由なく拒絶するなど知的財産制度の趣旨を逸脱していると認められる場合には,独占禁止法が適用されるとしています。  
(以 上)

『事業承継における事業用資産の円滑な承継』

2008/03/01

(執筆者:弁護士 鈴木基之)
1.はじめに
わが国の中小企業経営者の個人資産のうち、事業用資産が占める割合は約70%に上ります。他方、中小企業においては、経営者の親族が後継者となる場合が極めて多いのが現状です。したがって、中小企業における事業承継では、後継者である親族に対する事業用資産の承継が中心となると考えられます。
2.事業用資産の承継の重要性
中小企業における事業承継に当たっては、安定的な経営を図るため、事業用資産、とりわけ自社株式を後継者に集中させる必要があります。また、事業承継においては、キャッシュフローへの影響、会社の信用維持等の見地から、迅速性・円滑性が要求されますし、後継者の地位の安定等の見地から、法的安定性も要請されます。
しかしながら、現経営者が生前に対策を講じないまま死亡した場合、事業用資産を含む当該経営者の個人資産は相続財産となりますが、後継者以外に相続人が存在する場合には、事業用資産を後継者に集中させることができなくなるおそれがあります。また、相続人間で相続財産をめぐる紛争が生じた場合、これを解決するまでに相当長期にわたる時間と労力を費やす事態となることは避けられません。
したがって、迅速かつ円滑に事業承継を進めるためには、後継者に事業用資産を円滑に承継させる対策を講じておく必要があります。
3.事業用資産の承継方法
後継者に事業用資産を承継させる方法としては、生前贈与、遺贈、死因贈与等が考えられます。生前贈与とは、現経営者が後継者に対し生前に事業用資産を贈与する方法で、遺贈とは、現経営者が生前に遺言を作成し、これに基づいて後継者に対し事業用資産を承継する方法をいいます。また、死因贈与とは、現経営者が、後継者との間で、自らの死亡によって効力を生ずる贈与契約を締結することにより、事業用資産を承継する方法を指します。
もっとも、民法は遺留分制度(一定の法定相続人に法定相続分の一部を保障する制度)を採用しており、遺留分権利者(被相続人の兄弟姉妹以外の親族)は、自らの遺留分を保全するのに必要な限度で、遺留分の侵害者に対し、遺贈及び贈与の減殺(取戻し)を請求できるとされています(民法1031条)。そして、生前贈与、遺贈、死因贈与のいずれについても、遺留分減殺の対象とされる可能性があることから、後継者への事業用資産の集中が阻害されるおそれがありますし、法的安定性の点でも問題があるといえるでしょう。
4.円滑な承継方法とは
生前贈与、遺贈、死因贈与には、上記のような問題点があることから、現経営者が、後継者に対し、生前に事業用資産を売却する方法を採るのが望ましいと考えられます。
この方法は、当事者(現経営者及び後継者)のみによって早期に実現することができるため、迅速かつ円滑な承継方法であるといえます。また、遺留分制度等による制約を受けないため、後継者への事業用資産の集中を図ることが可能ですし、法的安定性も高いことから、事業用資産の承継方法としてはもっとも優れているといえるでしょう。
ただし、売買という方法を採る以上、後継者が現経営者に対して事業用資産の代金を支払う必要がありますし、譲渡所得税が発生することにも留意する必要があります。また、個人間の売買の場合、事業用資産の代金が時価に比べて著しく低額である場合には、課税上、代金と時価との差額に相当する金額については贈与したものとみなされる可能性があることにも注意する必要があるでしょう。
そこで、売買という方法を採る場合には、売買契約書を作成するなど、なるべく文書化に努め、売買という形式を整えておく必要があります。また、事業用資産の評価が低い場合等には、役員報酬等により、後継者に事業用資産を少しずつ買い取らせるなど、長期的・計画的に売買を進めることも検討しなければならないでしょう。
(以上)

『ABLの現状と課題について』

2008/02/01

(執筆者:弁護士 佐藤竜一)
1.はじめに
ABL(=Asset Based Lending)とは,企業が保有する動産(在庫・機械設備)や売掛債権などの事業収益資産を担保として融資する手法です。我国においては,未だ利用が進んでいませんが,資金調達の多様化の観点から,近年,借り手,貸し手の双方に注目されているところです。今回は,ABLの現状と課題について概説します。
2.ABLが注目されるようになった背景
会社の資金調達の手法としては,新株発行や社債発行がありますが,こうした資金調達ができるのは,一定規模以上の会社に限られます。多くの中小企業にとっては,不動産を担保とした借入や,個人保証を付すことによる借入が,これまでの資金調達の主たる方法でした。しかし,統計調査によると,我国の企業全体が保有する売掛債権については,不動産と同程度の,在庫動産については半分を超える価値があるとされています。そこで,企業の有する流動資産の活用が資金調達の面から注目されるようになったのです。特に優良な商品を作りながら担保価値のある固定資産を有さない中小企業にとって,ABLは,有効な資金調達手段となりうるものとして期待されているのです。
3.ABLの広がりを支える法制度の整備
平成17年10月動産債権譲渡特例法が施行され,動産についての譲渡登記制度が創設されました。これによって,それまで第三者に対して占有改定という外から見て分かりにくい方法でしか対抗できなかった動産譲渡担保が,登記により第三者に対抗できるようになりました。
また,「中小企業信用保険法の一部を改正する法律」が施行されたことにより,平成19年8月から,信用保証協会による流動資産担保融資保証制度の取り扱いが始まりました。これは,従来の売掛債権担保融資保証制度の担保に,在庫商品や製品在庫等の棚卸資産が付加されたものです。
このようにABLの広がりを支える法制度が次第に整備されてきています。
4.ABLの具体的手法
ABLの具体的手法は,様々ですが,例えば,金融機関が,在庫動産,売掛債権,預金を一体的に担保に取って融資する「流動資産一体担保型融資」という手法があります。これは,金融機関が,融資先会社の有する在庫動産を集合物動産譲渡担保として,売掛金債権を将来債権譲渡担保として,売掛金の振込口座に係る預金債権を質権という形で担保設定し,会社に融資を行うものです。いずれの目的物も価値が変動するものなので,金融機関は,融資先会社の経営状態を常に確認しておくこと(モニタリング)が必要とされています。また,借り手会社も,モニタリングされることにより,緊張感を持った経営が求められることになります。
5.ABLの課題等について
ABLが広く普及するためには,動産在庫の評価手法が確立することが必要です。経済産業省開催のABL研究会が平成18年3月に取りまとめた「ABL研究会報告書」では,動産鑑定士制度の導入の必要性が指摘されているところです。また,動産譲渡担保の実行の場面に関しては,対象資産の散逸を防ぐための,保全処分の迅速化が必要と言われています。
ABLは,まだ黎明期にあり,これ以外にも様々な課題を抱えています。しかし,ABLは,中小企業の資金調達の多様化にとって有用な制度といえ,今後利用が進むことが期待されています。
(以上)

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