TOPICS

トピックス・法律情報

携帯電話契約の本人確認の見直し― 対面契約時のICチップ読取りの原則化及び本人限定受取郵便の要件変更 ―(AML/CFTニュース No.2・解説資料)

2026/07/29

【AML/CFTニュース NO.2】携帯電話契約の本人確認の見直し― 対面契約時のICチップ読取りの原則化及び本人限定受取郵便の要件変更 ―【PDFファイル】

【解説資料】2027年4月から変わる携帯電話契約の本人確認

平素より大変お世話になっております。

総務省は、令和8年7月27日、「携帯音声通信事業者による契約者等の本人確認等及び携帯音声通信役務の不正な利用の防止に関する法律施行規則の一部を改正する省令」(令和8年総務省令第94号)を公布し、あわせて省令案に対するパブリックコメントの結果を公表いたしました。施行日は令和9年(2027年)4月1日であり、経過措置は設けられておりません。

本改正は、対面での契約締結時等における本人確認について、本人確認書類の券面を目視で確認するだけの方法を廃止し、原則としてICチップに記録された情報を読み取る方法によることを求めるものです。ICチップを読み取らない場合には、転送不要郵便物等の送付による住居の確認を併用しなければ本人確認が完了しない構造となり、店頭手続が「その場で完結しない」場面が新たに生じます。

なお、非対面(オンライン・郵送)の本人確認については、令和8年4月1日施行の改正により既に見直しが完了しており、本改正はこれに続く第2段階の改正に当たります。また、犯罪収益移転防止法施行規則についても、対面のICチップ読取りの原則化及び非対面の画像送信方式の廃止が同じ令和9年4月1日から施行されます。金融機関等と携帯音声通信事業者とで、機器の調達及び窓口運用の見直しが同時期に集中する点にもご留意ください。

本ニュースレターでは、新旧対照表及びパブリックコメントに対する総務省の考え方を踏まえ、改正の内容と実務上の留意点を整理いたします。末尾には条文早見表及び理解度チェック(○×問題12問)を付しておりますので、社内研修等にもご活用いただけますと幸いです。

令和8年7月29日

弁護士法人三宅法律事務所

*本ニュースレターに関するご相談がありましたら、下記にご連絡ください。
弁護士法人三宅法律事務所
弁護士 渡邉雅之(執筆者)
TEL 03-5288-1021 
FAX 03-5288-1025
Email: m-watanabe@miyake.gr.jp


携帯電話契約の本人確認の見直しのご報告

対面契約時のICチップ読取りの原則化及び本人限定受取郵便の要件変更 ―

【目次】
1 改正の全体像――「見せてもらう」から「読み取る」へ
2 二段階の見直し――非対面は既に施行済み
3 本人確認書類の四類型と窓口対応
4 マイナンバーカードの保有は必須ではない
5 現場で生じる例外事象への対応
6 特定事項伝達型本人限定受取郵便等
7 本人確認記録及び保存
8 非対面の本人確認方法に関する改正
9 犯罪収益移転防止法その他の法令との関係
10 パブリックコメントの結果――修正は一箇所
11 施行までの対応事項
12 おわりに
13 条文早見表
14 理解度チェック(○×問題12問)

1 改正の全体像――「見せてもらう」から「読み取る」へ

(1)何が変わるのか

改正前は、対面での契約締結時等の本人確認は、本人確認書類の提示を受ける方法により完結し得た。本改正により、この方法は廃止された。改正後は、顔写真及びICチップを有する本人確認書類の提示を受け、当該ICチップに記録された氏名、住居、生年月日及び写真の情報を読み取る方法が原則とされる。

ICチップの読取りを行わない場合には、携帯音声通信端末設備若しくは契約者特定記録媒体又は役務提供契約の締結に係る文書を、書留郵便等により転送不要郵便物等として送付する方法を併用しなければ、本人確認は完了しない。

(2)窓口で何が変わるか

場面改正前改正後(令和9年4月1日以降)
運転免許証の提示を受ける場合券面を目視で確認し、その場で完了ICチップを読み取り、その場で完了
ICチップのない書類の提示を受ける場合券面を目視で確認し、その場で完了契約書類等を転送不要郵便物等として送付し、送達により完了
顧客が暗証番号を失念している場合(暗証番号は不要)ICチップを読み取れないため、転送不要郵便物等による方法に切り替え

すなわち、対面手続において「その場で完結しない場面」が新たに生じる点が、現場にとって最大の変化である。

(3)改正の本質

改正前改正後
券面の外観又は送信された画像を信頼の基礎とするICチップに記録された電子的に真正な情報又は電子証明書を信頼の基礎とする
精巧な偽変造・画像編集に対して脆弱券面を偽変造しても、ICチップ内の電子署名までは偽造できない
書類の提示のみで完結し得たICチップを読み取れない場合は、独立した住居確認(転送不要郵便物等)を追加する

本改正の背景には、電話を用いた特殊詐欺被害の深刻化があり、犯行に利用された携帯電話の中に、一見して判別できないほど精巧に偽変造された本人確認書類を利用して契約されたものが存在する実態が確認されている。券面の外観を信頼の基礎とする限り、偽変造技術の高度化に対応することはできない。改正の本質は、本人確認の信頼の基礎を、券面の外観から、ICチップ内の電子的な真正性へと入れ替えた点にある。

2 二段階の見直し――非対面は既に施行済み

携帯電話不正利用防止法に基づく本人確認の見直しは、非対面が先行し、対面が後行する二段階で進められてきた。パブリックコメントにおいても、「2026年4月施行の非対面契約時の本人確認方法の見直し」と「本改正による2027年4月施行予定の対面契約時の本人確認方法見直し」とが明確に区別して論じられている。

時期内容状況
令和8年4月1日非対面の見直し(本人確認書類の画像送信及び写しの送付の廃止、ICチップ記録情報の送信及び電子証明書による方法への一本化)施行済み
同日既存契約者による2回線目以降の追加契約に係る簡易な本人確認への多要素認証等の導入施行済み
令和8年3月14日~4月13日本改正省令案に対する意見募集(18件)終了
令和8年7月27日本改正省令の公布(令和8年総務省令第94号)
令和9年4月1日対面の見直し(ICチップ読取りの原則化)これから

新旧対照表においては非対面に係る条項も多数移動しているが、これは既に施行済みの非対面のルールに、本改正で新設した書類の呼称を当てはめ直したものが大半であり、実質的な変更は限られている(後記8参照)。

3 本人確認書類の四類型と窓口対応

本改正は、本人確認の方法を、本人確認書類の属性(写真の有無×ICチップの有無)に応じて再構成する。従前の「写真付き本人確認書類」の定義は削除された。

(1)四類型と具体例

類型具体例窓口での手順その場で完了
写真あり ICチップあり (写真・半導体集積回路付き本人確認書類)・個人番号カード ・運転免許証(現に有効なものはすべてIC付き) ・在留カード(16歳以上) ・特別永住者証明書(16歳以上) ・旅券(平成18年3月以降発給のIC旅券)提示を受け、ICチップに記録された氏名、住居、生年月日及び写真の情報を読み取る
写真なし ICチップあり (写真なし半導体集積回路付き本人確認書類)・写真のない個人番号カード(1歳未満の者に交付されるもの) ・写真のない在留カード、特別永住者証明書(16歳未満)提示を受け、ICチップに記録された氏名、住居及び生年月日の情報を読み取り、当該住居宛てに転送不要郵便物等を送付する不可
写真あり ICチップなし (写真付き半導体集積回路なし本人確認書類)・運転経歴証明書 ・身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳、療育手帳(写真付きのもの) ・官公庁発給の写真付き資格証明書(宅地建物取引士証、小型船舶操縦免許証、無線従事者免許証、電気工事士免状等) ・猟銃・空気銃所持許可証 ・一時庇護許可書、仮滞在許可書提示を受け、券面記載の住居宛てに転送不要郵便物等を送付する不可
写真なし ICチップなし (写真・半導体集積回路なし本人確認書類)・健康保険の資格確認書 ・国民年金手帳 ・母子健康手帳 ・住民票の写し、印鑑登録証明書(原本)提示(又は送付)を受け、記載の住居宛てに転送不要郵便物等を送付する不可

(2)実務上の留意点

  • 運転免許証はIC化が全国で完了しており、現に有効なものはすべて①に該当する。ICチップのない旧免許証は既に有効期限が経過しているため、実務上③として現れることはない。
  • 旅券は①に該当するが、ICチップから読み取る情報は氏名、生年月日及び写真に限られ、住居は含まれない。この点はパブリックコメントにおける個人の指摘に対し、総務省が明示的に確認している。住居の確認方法を別途設計する必要がある。
  • ③・④に掲げた書類のうち、一を限り発行又は発給されたもの(原本を預かることができないもの)は「送付を受ける方式」では使用できないなど、書類ごとに細目の制限がある。

(3)窓口フロー

段階確認事項分岐
写真及びICチップの双方を有する書類か該当しない → 提示+転送不要郵便物等
ICチップの読取りに成功したか失敗 → 提示+転送不要郵便物等
券面とICチップの記録情報は一致しているか不一致 → 転送不要郵便物等を追加送付
ICチップに記録された住居は現住所と一致するか相違 → 補完書類により補完
以上をすべて充足店頭で完了

なお、券面とICチップの記録情報の一致確認それ自体は省令上の義務ではないが、総務省は、パブリックコメントへの回答において「券面との一致についても確認することが適切」との考え方を示している。照合手順を業務フローに組み込むべきである。

4 マイナンバーカードの保有は必須ではない

パブリックコメントでは、任意取得であるはずのマイナンバーカードが事実上義務化されるとして、改正に反対する意見が個人から複数提出された。これに対し総務省は、いずれについても、マイナンバーカードを保有していない場合でも、写真及びICチップ付きの本人確認書類として運転免許証や在留カード等を使用することができる旨を回答しており、案の修正は行われていない。

また、写真及びICチップ付きの本人確認書類を保有しない者についても、住民票の写し等の原本の提示に加えて転送不要郵便物等を送付する方式が設けられている。顧客に対する案内としては、「マイナンバーカードが必要である」ではなく、「ICチップ付きの顔写真付き本人確認書類を持参いただければ店頭で手続が完了する」と説明することが正確である。

5 現場で生じる例外事象への対応

パブリックコメントでは、携帯音声通信事業者から実務上の懸念が具体的に提起され、総務省が対応方針を示した。この部分が、業務マニュアル作成の実質的な拠りどころとなる。

#事象対応
顧客が暗証番号を失念している (個人番号カード及び運転免許証のICチップの利用には暗証番号の入力を要する)ICチップを読み取れないため、提示+転送不要郵便物等による方法へ切り替える。暗証番号の再設定手続を案内する。暗証番号を聴取し、又は記録してはならない
券面の住居とICチップに記録された住居が相違する (警察署の窓口ではICチップの情報を更新できない等の事情がある)総務省は、行政上の手続が原因でICチップの情報が更新されない場合については、転送不要郵便物等を追加で送付する形で本人確認を実施することを想定していると回答している
ICチップを正常に読み取れない(破損、機器不良等)提示+転送不要郵便物等による方法へ切り替える
書類記載の住居と契約締結時の住居が相違する官公庁発給書類、公共料金領収証等の補完書類により補完する
一般的な本人確認書類を保有しない (児童相談所・児童養護施設等の入所者等)補完書類により補完する。総務省は、写真及びICチップを有しない書類であっても、偽変造防止措置が施された本人確認書類であれば使用できる旨を回答している
郵便の業務に従事する者が立ち入れない場所に居住している (外国公館、米軍の施設・区域等)書留郵便等に代えて特定記録郵便等により転送不要郵便物等を送付することができる(後記10参照)

なお、KDDI株式会社からは、法人の代表者等が2回線目以降の契約を行う場合に都度転送不要郵便物等を送付することは負担が大きいとして、簡易な方法を認めるべきとの意見が提出されたが、総務省は「現行規定において例外を認めておりません」と回答しており、本改正においても簡素化はされていない。法人契約の比率が高い事業者においては、この点を織り込んだ運用設計を要する。

6 特定事項伝達型本人限定受取郵便等

郵便の業務に従事する者が差出人に代わって本人確認を行う方式(特定事項伝達型本人限定受取郵便等)についても、その定義が改められ、郵便事業者側においてもICチップの読取りを行うことが要件とされた。

#郵便事業者側の措置改正
名宛人の住居を確認する変更なし
写真・ICチップ付き本人確認書類の提示を受ける対象書類が限定された
ICチップに記録された氏名、住居、生年月日及び写真の情報を読み取る新設
本人確認記録等の作成に関し必要な事項を差出人に伝達する変更なし

これに対し日本郵便株式会社は、犯罪収益移転防止法施行規則の改正に合わせて進めているシステム改修の内容と本改正が求める事項とが一致せず、施行日において要件を満たさないこととなる旨を指摘し、犯収法施行規則の要件と一致させることを求めた。KDDI株式会社も、読取り対応環境の整備状況を踏まえた一定の移行期間の設定を要望した。

しかし総務省は、移行期間を設けず、特定事項伝達型本人限定受取郵便等の仕様については「携帯音声通信事業者において、その提供者と調整すべき事項」と整理した。もっとも、郵便の業務に従事する者等からICチップに記録された情報の送信を受けない場合には、当該情報の保存を必ずしも必要とするものではないとの考え方も併せて示されている。

本方式を利用する販路を有する事業者は、郵便事業者との仕様調整を早期に開始する必要がある。

7 本人確認記録及び保存

ICチップの読取りにより、氏名、住居及び生年月日に加えて顔写真の情報を取得することとなる。改正後は、これを本人確認記録と関連付けて、役務提供契約が終了した日から3年間保存しなければならない。

項目改正の内容
本人確認記録の記録事項代表者等について、本人確認に用いた書類又は電子証明書の種類及び記号番号その他これを特定するに足りる事項を記録する(電子証明書が追加された)
本人確認を行った日付ICチップの読取りによる方法については、ICチップに記録された情報を読み取った日とされた(改正前は提示を受けた日)
保存の対象ICチップに記録された情報を読み取ったとき、及び郵便の業務に従事する者等から当該情報の送信を受けたときが追加された
保存すべき情報氏名、住居又は住所、生年月日及び写真の情報(写真なしICチップ付き本人確認書類にあっては氏名、住居及び生年月日)
保存期間役務提供契約が終了した日から3年間(変更なし)

顔写真は、個人情報の保護に関する法律上、慎重な取扱いを要する情報である。本人確認義務への対応と、同法に基づく安全管理措置及び委託先の監督とを一体として設計する必要がある。具体的には、次の各点を明確にすべきである。

  • ICチップから読み取る情報の範囲(旅券は住居を含まないなど、書類種別ごとに異なる)
  • 取得した情報を保存するシステム及び本人確認記録との関連付けの方式
  • 顔写真等へのアクセス権限の範囲及びログ管理
  • 保存期間経過後の削除手順
  • 販売代理店及びeKYC事業者との役割分担、委託先の監督並びに再委託の管理
  • 暗証番号を取得せず、かつ保存しないための措置

8 非対面の本人確認方法に関する改正

前記2のとおり非対面は既に見直し済みであり、本改正における非対面の各方式は、対面側で新設された書類の呼称に合わせた形式的な整理が中心である。もっとも、次の三点は非対面にも実質的な影響を及ぼす。

改正事項実務上の影響
電子署名の対象となる情報が「氏名、住所及び生年月日の情報」と明確化された署名対象データの設計及び検証ロジックを点検する必要がある
本人確認記録の記録事項に電子証明書の種類及び記号番号が追加された記録項目を追加するシステム改修を要する
補完書類の受領方法に「提示」が追加された対面での補完が可能となった

なお、公的個人認証サービス(JPKI)の電子証明書失効情報の提供手数料について、ソフトバンク株式会社から無償措置の継続を求める意見が提出された。総務省は、今後の料額等は関係府省において引き続き検討されるとしつつ、令和8年4月10日に関係規程が改正され、本年度も当該手数料は無料である旨を明らかにしている。JPKIを主たる本人確認手段とする事業者においては、システム構築費のみならず、将来の照会手数料を含むランニングコストを見込んでおく必要がある。

9 犯罪収益移転防止法その他の法令との関係

犯罪収益移転防止法施行規則についても、対面におけるICチップ読取りの原則化及び非対面の画像送信方式(いわゆるホ方式)の廃止が、本改正と同じ令和9年4月1日から施行される。

 非対面の本人確認対面の本人確認
携帯電話不正利用防止法令和8年4月1日(施行済み)令和9年4月1日
犯罪収益移転防止法令和9年4月1日令和9年4月1日

非対面については携帯電話不正利用防止法が1年先行したが、対面については両法が同日に施行される。すなわち、令和9年春に向けて、金融機関等の特定事業者と携帯音声通信事業者とが、同時期にICカードリーダーを調達し、同時期に窓口運用を変更することとなる。機器の調達難、郵便事業者の処理能力の逼迫等が生じうる点に留意を要する。

なお、古物営業法、旅館業法等にも本人確認に関する規定が置かれているが、これらについて同様の改正は行われていない。古物営業法施行規則について直近に行われた改正(令和7年8月20日公布・同年10月1日施行)は、金属製物品に係る窃盗対策として本人確認義務等の対象物品を追加したものであり、確認の方法自体は従前のままである。もっとも、古物商のうち貴金属等の売買を行う者は犯罪収益移転防止法上の特定事業者に該当するため、当該取引については同法の厳格化後の方法によることとなる。

10 パブリックコメントの結果――修正は一箇所

意見募集は令和8年3月14日から同年4月13日までの間に実施され、一般社団法人テレコムサービス協会、日本郵便株式会社、ソフトバンク株式会社、KDDI株式会社及び個人14名から、合計18件の意見が提出された。このうち、案の修正に至ったものは一件のみである。

(1)修正された点――特定記録郵便等の特例

ソフトバンク株式会社から、住民基本台帳法の適用を受けない大使館職員や米軍関係者等が居住する施設については、セキュリティ上の理由から立ち入ることができる場所に制限があり、転送不要郵便物等を送付する方法の実現性に懸念があるとして、特定の施設の居住者が通信契約から排除されることのないよう柔軟な運用を求める意見が提出された。

これを受け、郵便の業務に従事する者又はこれに準ずる者の立入りが法令上禁止されていることその他の書留郵便等によることができない正当な理由がある場合には、特定記録郵便又はこれに準ずるもの(特定記録郵便等)によることができる旨の規定が追加された。対象者は住民基本台帳法の適用を受けない者及び国外転出者に限られており、本人確認の水準を一般的に引き下げる例外ではない点に留意を要する。

(2)採用されなかった主な要望

要望の内容提出者総務省の考え方
施行までの移行期間の設定KDDI移行期間は設けられなかった
法人の代表者等の2回線目以降の本人確認の簡素化KDDI現行規定において例外を認めていない。必要に応じ検討する
特定事項伝達型本人限定受取郵便等の要件を犯収法施行規則と一致させること日本郵便定義は改正後の規定のとおり。ICチップ情報の送信を受けない場合は保存不要
JPKIの失効情報提供手数料の無償化の継続ソフトバンク本年度も無料である。今後の料額は関係府省において検討
マイナンバーカードの事実上の義務化への反対個人4名運転免許証、在留カード等も使用できる
既存契約者に対する一斉の再確認・所在確認の義務付け個人2名事業者の自主的な取組が適当。契約者確認の枠組みにより対応しうる
SMS機能のないデータSIM及びIoT向けSIMの適用除外個人1名参考として承る(適用範囲の見直しは行われていない)

11 施行までの対応事項

時期対応事項
令和8年内本人確認を行う業務の棚卸し(新規契約のほか、名義変更・承継、契約者確認、代表者等の確認、端末貸与を含む)/郵便事業者との仕様協議の開始
令和8年末~ 令和9年初ICカードリーダー及び読取アプリの選定・調達/本人確認記録・保存システムの要件定義/例外処理マニュアルの原案作成
令和9年1月~3月システム改修及びテスト/直営店・代理店への機器配備/本人確認規程、約款、業務委託契約及び代理店契約の改定/従業者及び代理店に対する研修
令和9年4月1日施行
施行後例外処理の運用状況のモニタリング、媒介業者等の監督

(参考)研修において強調すべき事項

誤解されやすい点正しい理解
マイナンバーカードが必須となる運転免許証、在留カード等でも足りる
従前どおり券面を確認すれば足りる券面の目視のみでは本人確認は完了しない
顧客から暗証番号を聴取して代わりに入力してよい聴取も記録もしてはならない。再設定手続を案内する
ICチップを読み取れない書類は受付不可である提示+転送不要郵便物等により本人確認を行うことができる
券面とICチップの記録が相違する場合は契約できない行政上の手続が原因の場合は、転送不要郵便物等の追加送付により対応する
旅券についても住居を読み取る旅券は氏名、生年月日及び写真の情報のみである

12 おわりに

本改正は、単なる本人確認の厳格化ではなく、本人確認の信頼の基礎を、券面の外観から、ICチップに記録された電子的な真正性へと入れ替えるものである。

実務上の難所は、ICカードリーダーの導入それ自体ではない。暗証番号を失念した顧客、住居が変更されている顧客、ICチップのない書類しか保有しない顧客、特殊な居住環境にある顧客といった例外事象を、店頭で滞りなく処理できるかどうかにある。パブリックコメントにおいて事業者が繰り返し懸念を示したのも、まさにこの点であった。

経過措置は設けられておらず、施行日は令和9年(2027年)4月1日である。省令上の本人確認方法を形式的にシステムへ実装するにとどまらず、例外処理、記録保存、個人情報管理及び代理店の教育監督まで含めた全社的な対応が求められる。

13 条文早見表

本文において述べた内容の根拠条文は、次のとおりである(携帯電話不正利用防止法施行規則)。

内容条文
本人確認書類の四類型の定義第1条第1項第9号、第3条第1項第1号ロ・ハ
対面での本人確認(自然人)第3条第1項第1号イ~ヲ
対面での本人確認(法人の代表者等)第4条第1項
本人確認書類及び補完書類第5条
本人確認記録の記録事項・本人確認を行った日付第8条
本人確認に用いた書類等の保存(3年間)第10条
譲渡時本人確認(名義変更等)第11条
媒介業者等による本人確認第12条
契約者確認・代表者等の本人特定事項の確認第13条・第14条
貸与時本人確認第19条~第21条、第24条
立入りが制限される場所の特例(特定記録郵便等)第3条第1項第1号ヌ、第4条第1項第10号ほか
特定事項伝達型本人限定受取郵便等第1条第1項第9号

14 理解度チェック(○×問題12問)

本改正の理解度を確認するため、○×問題を12問用意した。社内研修等にご活用いただきたい。まず【問題】に解答した上で、【解答・解説】をご確認いただきたい。

【問題】次の記述は正しいか(○×)。

第1問 令和9年4月1日以降も、現に有効な運転免許証の提示を受け、その券面を目視により確認すれば、対面における本人確認は完了する。
第2問 マイナンバーカードを保有していない者は、令和9年4月1日以降、店頭において携帯電話の契約をすることができない。
第3問 写真及びICチップを有する本人確認書類の提示を受け、ICチップに記録された情報の読取りに成功した場合には、転送不要郵便物等の送付を要しない。
第4問 写真のないICチップ付き本人確認書類の提示を受けた場合、ICチップに記録された情報を読み取れば、転送不要郵便物等の送付を要しない。
第5問 運転経歴証明書の提示を受けた場合、対面において、その場で本人確認を完了することができる。
第6問 顧客が個人番号カードの暗証番号を失念している場合、窓口の担当者が当該顧客から暗証番号を聴取し、これを代わりに入力することは差し支えない。
第7問 運転免許証の券面に記載された住居とICチップに記録された住居とが相違する場合には、当該書類により本人確認を行うことはできず、契約を拒絶しなければならない。
第8問 旅券については、ICチップに記録された氏名、住居、生年月日及び写真の情報を読み取ることが求められている。
第9問 郵便の業務に従事する者の立入りが法令上禁止されている場所に居住する者については、書留郵便等に代えて特定記録郵便等によることが認められる。
第10問 ICチップから読み取った情報は、本人確認記録と関連付けて、役務提供契約が終了した日から3年間保存しなければならない。
第11問 法人の代表者等が2回線目以降の契約を行う場合には、1回線目において本人確認を行っていることから、簡易な方法によることが認められている。
第12問 本改正により、非対面(オンライン)の本人確認方法についても、令和9年4月1日から大幅な見直しが行われる。

【解答・解説】

解答解説(根拠)
第1問×券面の目視による確認のみでは足りない。写真及びICチップを有する本人確認書類については、提示を受けるとともに、ICチップに記録された氏名、住居、生年月日及び写真の情報を読み取ることが必要である(本文1(1))。
第2問×総務省は、マイナンバーカードを保有していない場合でも、写真及びICチップ付きの本人確認書類として運転免許証や在留カード等を使用することができる旨を回答している。これらを保有しない者についても、住民票の写し等の原本の提示と転送不要郵便物等の送付を組み合わせる方式が設けられている(本文4)。
第3問写真及びICチップの双方を有する本人確認書類について読取りに成功した場合には、転送不要郵便物等の送付を要せず、店頭で本人確認が完了する(本文3(1)①)。
第4問×写真のないICチップ付き本人確認書類(②類型)については、ICチップの読取りに加え、当該ICチップに記録された住居宛てに転送不要郵便物等を送付することが必要である(本文3(1)②)。
第5問×運転経歴証明書は写真を有するがICチップを有しない(③類型)。提示に加え、券面記載の住居宛てに転送不要郵便物等を送付しなければ本人確認は完了しない(本文3(1)③)。
第6問×暗証番号は聴取も記録もしてはならない。ICチップを読み取れない場合に当たるため、提示+転送不要郵便物等による方法に切り替えた上で、暗証番号の再設定手続を案内すべきである(本文5①)。
第7問×総務省は、警察署においてICチップの情報の更新ができないなど行政上の手続が原因でICチップの情報が更新されない場合については、転送不要郵便物等を追加で送付する形で本人確認を実施することを想定している旨を回答している(本文5②)。
第8問×旅券については、ICチップから読み取ることが想定されている情報は氏名、生年月日及び写真であり、住居は含まれない。この点は個人からの指摘に対し総務省が明示的に確認している(本文3(2))。
第9問住民基本台帳法の適用を受けない者及び国外転出者について、郵便の業務に従事する者等の立入りが法令上禁止されていることその他の書留郵便等によることができない正当な理由がある場合には、特定記録郵便等によることができる。本意見募集を踏まえた唯一の案の修正点である(本文10(1))。
第10問ICチップに記録された情報を読み取ったときは、氏名、住居又は住所、生年月日及び写真の情報を本人確認記録と関連付けて、役務提供契約が終了した日から3年間保存する(本文7)。
第11問×総務省は「現行規定において例外を認めておりません」と回答しており、本改正においても簡素化はされていない。必要に応じ検討を進めるとされるにとどまる(本文5)。
第12問×非対面の本人確認方法については、令和8年4月1日施行の改正により既に見直しが完了している。本改正における非対面の各方式は用語の整理が中心であるが、電子署名の対象情報の明確化等、三点の実質的な変更がある(本文2、8)。

主な参照資料

  1. 総務省「携帯音声通信事業者による契約者等の本人確認等及び携帯音声通信役務の不正な利用の防止に関する法律施行規則の一部を改正する省令案に対する意見募集の結果の公表」(令和8年7月27日)――別紙「提出された御意見及び御意見に対する考え方」、別紙2「改正省令案 新旧対照表」
  2. 官報 令和8年7月27日付号外第167号(携帯音声通信事業者による契約者等の本人確認等及び携帯音声通信役務の不正な利用の防止に関する法律施行規則の一部を改正する省令)
  3. 総務省「ICTサービスの利用を巡る諸問題に対する利用環境整備に関する報告書」(令和7年9月10日 ICTサービスの利用環境の整備に関する研究会)
  4. 「デジタル社会の実現に向けた重点計画」(令和6年6月21日閣議決定)
  5. 犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則の一部を改正する命令(令和7年共同命令第3号、令和8年共同命令第1号)――令和9年4月1日施行

以上

ACCESS 所在地
M&Pインベストメント・コンプライアンス株式会社
弁護士法人 三宅法律事務所  MIYAKE & PARTNERS

大阪事務所 OSAKA OFFICE

〒541-0042
大阪市中央区今橋3丁目3番13号
ニッセイ淀屋橋イースト16階
FAX
06-6202-5089

東京事務所 TOKYO OFFICE

〒100-0006
東京都千代田区有楽町1丁目7番1号
有楽町電気ビルヂング北館9階
FAX
03-5288-1025