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『解雇に関するルールが変わる?』

2013/06/01

(執筆者:弁護士 岩崎浩平)

【Q.】
最近、解雇に関するルールが変わるかもしれないと報道されていますが、どのように変わるのでしょうか。_

【A.】
1.解雇ルールの現状
解雇に関するルール(以下「解雇ルール」といいます。)については、現在、解雇予告(労働基準法第20条)、解雇理由の制限(労働組合法第7条第1号等)など、様々な規制が存在します。労働契約法第16条の規定(「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」)は代表的な解雇ルールですが、この規定を含め、現在の解雇ルールには必ずしも明確でないものがあります。その結果、解雇の有効性が明確にならないまま、無用な法的手続(労働審判、裁判等)に発展するという問題が指摘されています。また、現在の解雇ルールについては、解雇無効を主張する労働者が職場復帰ではなく金銭的解決を望むこともあるという実態を制度として反映できていないなど、必ずしも合理的でないという問題も指摘されています。さらに、現在の解雇ルールについては、解雇要件が厳格過ぎるため、正規雇用者が著しく厚遇されて非正規雇用者との著しい格差を生み出す、高年齢の正規雇用者が保護され若者の雇用を阻害する、雇用の流動性が失われて成長産業への人材移動が進まず経済成長を阻害するなどの問題も指摘されています。_

2.解雇ルール変更の方向性
このように様々な問題を有する解雇ルールの変更については、日本経済再生本部の下で開催される産業競争力会議で議論が始まったばかりです。現時点で、解雇ルールの変更の詳細、実現可能性等は不明ですが、産業競争力会議での平成25年3月15日付配布資料(首相官邸HPで閲覧可能)では、次の�@乃至�Eのような記載が見受けられ、その方向性を窺うことができます。
�@正規雇用者の雇用が流動化すれば、待機失業者が減り、若年労働者の雇用も増加すると同時に、正規雇用者と非正規雇用者の格差を埋めることにもなる
�A現行規制の下で企業は、雇用調整に関して「数量調整」よりも「価格調整」(賃金の抑制・低下と非正規雇用の活用)に頼らざるを得なかった。より雇用しやすく、かつ能力はあり自らの意志で積極的に動く人を後押しする政策を進めるべきである
�B労働市場の流動性を高め、失業を経由しない成長産業への人材移動を円滑にすると同時に、セーフティネットを作る
�C解雇ルールの合理化・明確化(再就職支援金の支払いとセットでの解雇などを含め、合理的な解雇ルールを明文で規定)
�D民法627条に明記されている解雇自由の原則を労働契約法にも明記し、どういう場合には解雇を禁止するか、あるいは解雇の際に労働者にどういう配慮をすべきか、といった規定を明文で設けるべきである
�E判例に基づく解雇権濫用法理による解雇ルール(労働契約法第16条)を見直す_

3.おわりに
解雇ルールの変更は、「明確化」及び「合理化」により、前述したような各問題の解消を目指すものであると考えられます。労働契約法第16条との関連では、一定額の金銭支払いと併せれば解雇が有効になると明文化することも検討されたようです。近時、解雇ルールの変更の一部見送りという報道もなされていますが、今後、何かしらの解雇ルールの変更が実現されれば、解雇の判断基準等に影響を与え、就業規則の変更等が必要になる可能性もあるため、その動向を注視することが適切でしょう。_

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