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『消費税の転嫁と共同行為について』

2013/11/18

(執筆者:弁護士 岸野 正)

【Q.】
消費税の転嫁について、当社のような中小事業者が取引先と交渉しても、受け入れられるのは難しいと思うのですが、同じような立場の事業者と協力して取引先と交渉する方法はありますか。_

【A.】
1.はじめに
「消費税の転嫁を阻害する行為等に関する消費税転嫁対策特別措置法」(以下「特措法」)が平成25年10月1日より施行されていますが、これに先立ち、公正取引委員会をはじめ、関係各省庁からそれぞれガイドライン*が公表されており、消費税の転嫁を検討するに際して参考になります。
*_http://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/h25/sep/tenkaGLkouhyou.html
特措法では、市場での価格形成力の弱い中小事業者に配慮し、同法2条3項で定義する中小事業者(例えば、「製造業、建設業、運輸業」では従業員300人以下または資本金3億円以下の事業者が該当)において、「消費税の転嫁の方法の決定」について、事前に公正取引委員会に対し届け出たうえで、複数の事業者(参加事業者の3分の2以上が中小事業者)または事業者団体もしくは複数の事業者団体(各団体の構成事業者の3分の2以上が中小事業者)等による共同行為が許容されています(同法12条)。

2.共同行為として許容されるもの
独占禁止法との抵触が問題となりますが、公正取引委員会のガイドラインによれば、例えば、�@各事業者がそれぞれ自主的に定めている本体価格に消費税額分を上乗せする旨の決定、�A消費税率引上げ後に発売する新製品について、各事業者がそれぞれ自主的に定める本体価格に消費税額分を上乗せする旨の決定、�B消費税率引上げ分を上乗せした結果、計算上生じる端数について、対象となる商品の値付け単位、取引慣行、上乗せ前の価格からの上昇の度合等を考慮して、切上げ、切捨て、四捨五入等により合理的な範囲で処理する旨の決定、といったものが共同行為として許容されます。
一方、�@消費税率引上げ後の税抜価格又は税込価格を統一する旨の決定、�A消費税率引上げ分と異なる額(率)を転嫁する旨の決定、�B消費税の全部又は一部の転嫁をしないことの決定、�C合理的な範囲を超える不当な端数処理を行う旨の決定、�D簡易課税方式を選択する(又は選択しない)旨の決定、といったものは「消費税の転嫁の方法の決定」に該当せず、許容されませんので注意が必要です。
このほか、「一定の取引分野における競争を実質的に制限することにより不当に対価を維持し若しくは引き上げることとなるとき」として、例えば、消費税率引上げ前の税込価格に消費税率引上げ分を上乗せする旨の共同行為を通じて消費税率引上げ分を上乗せした後の対価を不当に維持したり、消費税率引上げ分以上に対価を不当に引き上げたりすること、「事業者が不公正な取引方法を用いるとき又は事業者団体が構成事業者に不公正な取引方法に該当する行為をさせるようにするとき」として、例えば、事業者団体が、共同行為に参加しない構成事業者に対して、それを理由に制裁を課すことにより当該構成事業者の事業活動を困難にさせることなどは、共同行為として許容されません。
なお、共同行為が許容されるのは、平成26年4月1日から平成29年3月31日までの間における商品または役務の供給を対象とするものであって(つまり、許容されるのは販売についてのもので、購入する場合の共同行為は許容されません)、平成25年10月1日から平成29年3月31日までの間に行うものに限られます。

3.おわりに
以上のように、要件を備えた中小事業者または中小事業者が構成員となる事業者団体が共同して「消費税の転嫁の方法の決定」を行うことが許容されていますので、同様な立場にある事業者等と協力して対処することも検討されてはいかがでしょうか。このほか、すべての事業者は、税率引上げ後の価格について、「消費税についての表示の方法の決定」に係る共同行為も許容されています。詳細は、公正取引委員会のガイドラインやパブリックコメントに対する回答を参照ください。_

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