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カスタマーハラスメントへの対応

2022/05/18

(執筆者:弁護士 内芝良輔)
【Q.】
 最近、弊社の店舗に毎日来店されて従業員に長時間暴言を浴びせるお客様がいます。このようなお客様に対し、どう対応すればいいでしょうか。
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【A.】
1.はじめに
 昨今、顧客や消費者からの過度なクレームや要求をするカスタマーハラスメント(以下「カスハラ」といいます。)が問題になっており、企業活動が阻害される、従業員が心身の不良に見舞われるといった深刻な事態が生じるケースもあります。
 本レポートでは、カスハラへの対応について、弁護士の立場からポイントと考えられる点を整理させていただきます。

2.カスハラ対応のポイント
(1) 要求内容の把握
 カスハラの可能性がある案件への対応にあたっては、事案の内容や客側の要求を把握することが重要です。骨の折れる作業ですが、まずは客側の言い分を十分に聞き取っていただければと思います。
 もし客側のクレームや要望が正当であることが判明すれば、企業としても誠実にお詫び・説明するなど対応していくことになります。
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(2) 対応策の検討・実行
ア 方針の決定・説明
 次に、客側から聞き取った内容を踏まえ、どう対応するか(例えば、商品の返品・交換には応じるが金銭の支払いには応じない、今後当該客の入店を認めないなど)を決定します。そして、決定した方針を基に客側に説明を行いますが、客側の要求事項や態度に応じて、面談・書面・メールなど様々な方法が考えられます。
 この点、従業員が対応する段階であっても、対応方針や説明方法などについて、必要に応じて弁護士に法的な観点からの意見を求めることは有益です。
   
イ 弁護士への委任
 従業員だけでの対応が難しい場合や悪質な事案である場合、弁護士に対応を委任することも考えられます。費用はかかりますが、従業員がカスハラ対応から解放されること自体に大きなメリットがありますし、客側も弁護士が相手では無理難題も言いにくく、終息に向かう可能性も出てきます。
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ウ 警察への相談・被害届の提出、法的措置
 さらに悪質なカスハラ行為、例えば、暴力行為で従業員が負傷した・商品が破損した(暴行、傷害、器物損壊)、暴言・暴行などで営業を妨害した(威力業務妨害)、従業員などに金銭や不当な要求をした(恐喝、強要、脅迫)、企業や従業員に対して侮辱的な発言や情報発信をした(名誉棄損、信用棄損、侮辱)などのケースでは、警察に相談して被害届を提出することも考えられます。
 また、上記のような悪質なカスハラにより損害が発生したケースでは、企業側から客側に対して損害賠償請求訴訟を提起することも考えられます。そのほか、執拗で悪質なカスハラ行為には、訪問や架電の禁止を内容とする仮処分の発令を裁判所に求めることもあり得ます。
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3.従業員のフォロー
 企業としては、カスハラ行為への対処とともに、対応に当たる従業員への配慮をする必要もあります。
 厚生労働省のパワハラ指針(事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針)では、カスハラに関しても雇用管理上の配慮(�@相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備、�A被害者への配慮のための取り組み、�B被害防止
のための取り組み)を行うことを企業に求めています。
 この点を踏まえたカスハラ対応の場面での具体策としては、担当者に任せきりにするのではなく、上司を含めた複数の従業員で情報共有やフォローをしつつ進め、客側との面談を複数で行うなど組織として対応していくことが重要であると考えます。
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4.まとめ
 カスハラは、「お客様は神様」という言葉を勘違いして悪質なクレームや要求をする者に最大の問題があるのですが、一部の企業や店舗が評判を気にしすぎて過度な要求を受け入れてきてしまった面も否定できません。
 従業員を守るため、また、大多数のお客様に十分なサービスを提供するため、カスハラに対しては、弁護士や警察などと連携しつつ、毅然とした態度で臨むべきと考えます。

以 上

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