「性犯罪歴はありませんでした」と答えてはならない― 日本版DBS対応の情報管理・採用・漏えい対応 ―(デジタル・ガバナンス/サイバーセキュリティニュース No.8)【PDFファイル】
平素より大変お世話になっております。
さて、今回は「『性犯罪歴はありませんでした』と答えてはならない ― 日本版DBS対応の情報管理・採用・漏えい対応 ―」をご案内いたします。
保育施設の保護者から「先生方の犯罪事実確認は全員終わったのですよね。性犯罪歴があった先生はいなかったのですか」と問われ、担当者が「大丈夫です。全員、問題ありませんでした」と回答した。この回答は避けなければならない。
法35条4項1号は、申請従事者が特定性犯罪事実該当者でない場合にも、犯罪事実確認書にその旨を記載すると定めている。したがって、「該当あり」だけでなく、「該当なし」という確認結果も法11条以下の厳格な情報管理の対象となる。
しかも、「該当なし」だけ回答する運用を認めれば、回答を控えた場合に「該当あり」であることが推知されかねない。外部照会への対応は、「結果は答えない。体制は答える」という原則に統一する必要がある。
日本版DBSの根拠法である「学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律」(令和6年法律第69号。以下「法」という。)は、令和8年12月25日に施行される。施行対応は、対象者の特定や確認申請だけでは終わらない。
実務上の難所は、確認書が届いた「後」にある。誰が結果を見るのか、どこまで記録するのか、採用・配置にどう反映するのか、外部から聞かれたとき何と答えるのか、漏えい時に誰が動くのか。本号では、これらを条文番号を残しながら実務の順序に沿って整理する。
令和8年8月14日
弁護士法人三宅法律事務所
| *本ニュースレターに関するご質問・ご相談がありましたら、下記にご連絡ください。 弁護士法人三宅法律事務所 弁護士 渡邉雅之(執筆者) TEL 03-5288-1021 FAX 03-5288-1025 Email: m-watanabe@miyake.gr.jp |
「性犯罪歴はありませんでした」と答えてはならない
― 日本版DBS対応の情報管理・採用・漏えい対応 ―
| 【目次】 1 最初に押さえるべき原則 ― 「結果は答えない。体制は答える」 2 制度の全体像 ― 犯罪歴照会だけの制度ではない 3 誰が対象となるのか 4 何を確認するのか ― 限定された犯罪・限定された期間 5 犯罪事実確認の手続 6 安全確保措置と人事対応 7 個人情報保護法との関係 8 情報管理 ― 「絞る・残さない・消す」 9 外部照会・漏えい対応 10 プライバシーポリシー 11 採用実務 12 監督と罰則 13 実務チェックリスト 別添1~5 規程・就業規則・プライバシーポリシー・誓約書・内定通知書の参考例 |
| 本号の核心は、犯罪事実確認そのものより、確認書が届いた後の情報管理・人事措置・外部照会・事故対応にある。 |
法35条4項1号は、特定性犯罪事実該当者でない場合にも、その旨を犯罪事実確認書に記載する。犯罪事実確認書及びその記載情報に係る記録は「犯罪事実確認記録等」として法11条以下の情報管理規制の対象となる。したがって、「該当あり」だけでなく「該当なし」も保護対象である。
【図表1】外部照会への基本対応
| 質問 | 基本的な対応 |
| 対象業務従事者について犯罪事実確認を実施しているか | 回答可。個人を特定しない制度運用・体制の説明である。 |
| 対象業務従事者全体について所定の確認手続が完了しているか | 回答可。ただし、個々の結果には触れない。 |
| 特定の職員に特定性犯罪前科があったか | 回答しない。 |
| 特定の職員に特定性犯罪前科がなかったか | 回答しない。 |
| 該当者が一人でもいたか、全くいなかったか | 回答しない。確認結果を推知させるおそれがある。 |
「該当なし」も答えない理由は二つある。第一に、法12条の利用目的・第三者提供の制限は、確認結果の内容によって保護の有無を分けていない。第二に、「なし」と回答する運用を認めれば、回答を拒んだ場合に「あり」が推知されるからである。
| 保護者向け定型回答例 当法人では、こども性暴力防止法に基づき、対象となる業務に従事する職員について犯罪事実確認を実施しております。もっとも、個々の職員の確認結果や、該当者がいたか否かについては、法令上厳格な情報管理が求められているため、お答えしておりません。一方、当法人が講じている安全確保措置や情報管理体制についてはご説明できます。 |
同じ理由から、懇親会等で「A先生の異動はDBSが理由なのか」と問われた場合も、「知っているか、知らないかを含めて回答しない」という対応が必要となる。
法1条は、児童対象性暴力等が児童等の権利を著しく侵害し、その心身に重大な影響を与えることを踏まえ、児童対象性暴力等の防止等のための措置と、特定性犯罪事実該当者であるか否かに関する情報を国が対象事業者に提供する仕組みを組み合わせる制度を設けている。
通称は「日本版DBS」であるが、英国のDisclosure and Barring Serviceをそのまま移植した制度ではない。英国では一定の就業禁止者名簿をDBSが管理するが、日本の制度は同様の就業禁止名簿を置かず、犯罪事実確認を安全確保措置の一部として位置付ける。
【図表2】日本版DBSの全体構造
| 柱 | 内容 |
| 犯罪事実確認 | 対象業務従事者について特定性犯罪事実該当者であるかを確認する。 |
| 早期把握 | 日常的な観察、面談、質問票等により兆候を把握する。 |
| 相談体制 | 児童等が相談しやすい窓口・外部相談先を整備・周知する。 |
| 防止措置 | 「おそれ」がある場合、対象業務から外す等の措置を講ずる。 |
| 調査・保護支援 | 疑いが生じた場合に調査し、被害児童等を保護・支援する。 |
| 研修 | 従事者に必要な研修を受講させる。 |
| 情報管理 | 確認結果等について取扱者、利用、提供、保存、廃棄を厳格に管理する。 |
| 「DBSを確認したから安全である」という理解は誤りである。犯罪事実確認は重要な措置だが、初犯を事前に発見できる制度ではない。 |
【図表3】施行対応で確認すべき主な公式資料
| 資料 | 主な用途 |
| 法律(令和6年法律第69号) | 基本的義務、権限、監督、罰則 |
| 施行令(令和7年政令第440号) | 対象事業、期限等 |
| 施行規則(令和7年内閣府令第104号) | 申請手続、情報管理、漏えい報告等 |
| こども性暴力防止法施行ガイドライン | 対象者判断、安全確保措置、人事対応、情報管理等 |
| ガイドライン別紙1~11 | 対処規程、意向確認、募集要項、誓約書、内定通知書、就業規則、取扱記録、権限設定、情報管理規程等 |
| Q&A・準備ガイド・チェックリスト | 個別論点と施行準備の進捗確認 |
実務では、ガイドラインを「読んだか」ではなく、別紙のひな型を自社規程・自社様式に落とし込んだかが準備状況を測る分岐点となる。
【図表4】事業者の三つの区分
| 区分 | 主な例 | 法的位置付け |
| 学校設置者等 | 学校、認定こども園、保育所、児童養護施設、一定の障害児支援事業等 | 犯罪事実確認等が法定義務 |
| 民間教育保育等事業者 | 学習塾、スポーツクラブ等、放課後児童クラブ、認可外保育施設等 | 認定申請は任意。認定後は法定措置を実施 |
| 上記の法定類型に含まれない事業者 | その他の児童等と接する事業 | 日本版DBSによる犯罪事実確認義務はない |
認定対象となる民間教育保育等事業者が認定を受けない場合でも、法3条の責務が問題となる。「認定を取らないので無関係」という理解は適切ではない。
対象者は「肩書」だけでは決まらない
ガイドラインは、教員等又は教育保育等従事者への該当性について、実際の業務が児童等との関係で①支配性、②継続性、③閉鎖性を満たすかという観点から判断する。
したがって、検討は「対象となる事業か → その事業のどの業務・職種が法令上の対象となるか → 実際の業務が3要件を満たすか」という順序で行う。「施設に勤めているから全員対象」「事務職だから全員対象外」という一律処理は危険である。
雇用形態ではなく業務で見る
正社員かアルバイトかという契約上の名称だけで対象性は決まらない。非常勤、アルバイト、派遣労働者、請負・業務委託に基づき現場で業務に従事する者等も、法令・ガイドライン上の要件を満たせば対象となり得る。
| 正規職員名簿とは別に、「対象業務従事者リスト」を作成することが施行準備の出発点となる。 |
特定性犯罪(法2条7項)
確認されるのは、すべての犯罪歴ではなく、法2条7項の「特定性犯罪」に限られる。刑法上の不同意わいせつ、不同意性交等、監護者わいせつ・監護者性交等、16歳未満の者に対する面会要求等、強盗・不同意性交等及び一定の未遂罪等のほか、児童福祉法、児童買春・児童ポルノ法、性的姿態撮影等処罰法、一定の都道府県条例違反等が対象となる。
【図表5】対象期間(法2条8項)
| 刑 | 特定性犯罪事実該当者となる期間 |
| 拘禁刑(全部執行猶予を除く) | 刑の執行終了等から20年 |
| 拘禁刑の全部執行猶予 | 裁判確定から10年 |
| 罰金 | 刑の執行終了等から10年 |
制度の限界
犯罪事実確認は、法2条7項・8項に該当する確定した犯罪事実を確認する仕組みである。不起訴となった事件、単なる逮捕歴、行政上の懲戒処分等それ自体を確認するものではない。また、初犯を事前に捕捉することもできない。
この限界こそが、法が早期把握、相談、研修、調査・保護支援を犯罪事実確認と併せて制度化した理由である。
(1) 犯罪事実確認の基本的な流れ――「会社が照会して結果を受け取る」だけではない
犯罪事実確認は、事業者が本人に秘密で照会し、結果だけを受け取る仕組みではない。
①事業者があらかじめ情報管理体制を整備する → ②事業者が交付申請をする → ③本人自身が本人特定情報等を提出する → ④国が犯罪事実を確認する → ⑤該当がある場合には本人が事業者より先に結果を知り、訂正の機会を与えられる → ⑥その後に事業者へ犯罪事実確認書が交付される
という仕組みである。
特に重要なのは、最初の犯罪事実確認から情報管理が始まるのではなく、最初の交付申請を行う前に、情報管理体制を完成させておかなければならないことである。
【図表6】犯罪事実確認の基本的な流れ
| 段階 | 主体 | 内容 |
| ① 情報管理体制の整備 | 事業者 | 情報管理責任者を定め、犯罪事実確認記録等を取り扱う者を必要最小限に限定するなど、情報管理規程と実際の管理体制を整備する(法11条、施行規則12条)。 |
| ② 情報管理規程の提出 | 事業者 | 当該事業について最初の犯罪事実確認書の交付申請を行う前に、情報管理規程を提出する(施行規則12条4項)。実務上は、こども家庭庁の「こまもろうシステム」を通じて提出する。同項上の提出先は「内閣総理大臣」とされているが、法42条により当該権限はこども家庭庁長官に委任されている。 |
| ③ 本人への説明・手続案内 | 事業者→本人 | 本人に犯罪事実確認の対象となること、本人自身による情報提出が必要となること等を説明し、手続を案内する。 |
| ④ 犯罪事実確認書の交付申請 | 事業者 | こまもろうシステムを通じて交付申請を行う。申請書には、本人の氏名等、勤務する施設・事業、業務内容、従事予定日等を記載し、雇用契約書の写しその他対象業務に従事させることを証する書類等を添付する(法33条3項・4項)。 |
| ⑤ 本人特定情報等の提出 | 本人 | 本人は、申請対象者情報とともに、日本国籍者については戸籍・除籍関係書類等、外国籍者については住民票の写し等、本人特定情報を確認するために必要な情報・書類を提出する(法33条5項)。 |
| ⑥ 犯罪事実の確認 | こども家庭庁→法務大臣 | こども家庭庁側から法務大臣に本人特定情報を提供し、特定性犯罪に係る確定裁判の有無等の確認を求める(法34条)。 |
| ⑦ 本人への事前通知 | こども家庭庁→本人 | 特定性犯罪事実該当者である場合に限り、事業者に確認書を交付する前に、確認書に記載予定の内容を本人へ通知する(法35条5項)。 |
| ⑧ 訂正請求 | 本人 | 本人が通知内容を事実でないと考える場合には、通知を受けた日から2週間以内に訂正請求をすることができる(法37条1項・2項)。この期間中は事業者に確認書は交付されない。 |
| ⑨ 犯罪事実確認書の交付 | こども家庭庁→事業者 | 訂正請求期間の経過等、所定の手続を経た後、犯罪事実確認書が事業者に交付される(法35条)。 |
(2) 本人も手続の当事者である
この仕組みで見落としやすいのが、本人が単なる「調査対象者」ではなく、手続の当事者であるという点である。
事業者が交付申請をすれば自動的に犯罪事実確認が完了するわけではない。法33条5項は、申請従事者本人に、申請対象者情報と戸籍・除籍関係書類等を提出させる仕組みとしている。
本人特定情報等は本人自身が国に提出することが基本である。もっとも、本人がこれらの書類を事業者を経由して提出することを希望した場合には、事業者はこれを拒むことができない(法33条7項)。
したがって、採用担当者としては、「会社がDBSを調べておきます」と説明するだけでは足りない。応募者・従事者自身にも手続が発生することを、採用・配置のスケジュールに織り込んでおく必要がある。
(3) 「該当あり」の場合には、本人が事業者より先に知る
犯罪事実確認の結果、特定性犯罪事実該当者であると認められる場合には、確認書が直ちに事業者へ送られるわけではない。
まず本人に、確認書に記載予定の内容が通知される(法35条5項)。本人は、その内容が事実でないと考える場合、通知を受けた日から2週間以内に訂正請求をすることができる(法37条1項・2項)。
そして、この2週間が経過するまで、訂正請求があった場合にはその手続が終了するまで、事業者への確認書の交付は停止される。
これに対し、特定性犯罪事実該当者でない場合には、この事前通知・訂正請求のプロセスはない。
したがって、制度の流れを一言でいえば、
「該当なし」→事業者へ確認書を交付
「該当あり」→まず本人へ通知→訂正の機会→その後に事業者へ交付
という構造である。
事業者が本人より先に「該当あり」という結果を知る制度ではない。
(4) 実務上の最重要ポイント――申請ボタンを押す前に準備を終える
以上の手続から、事業者側では少なくとも、犯罪事実確認を始める前に、
対象者の特定 → 情報管理責任者・取扱者の決定 → 情報管理規程の作成 → こまもろうシステムへの提出 → 本人への手続説明 → 交付申請
までを一連の業務フローとして整えておく必要がある。
とりわけ情報管理規程は、確認結果が出てから作ればよいものではない。最初の交付申請前の「入場券」である。
犯罪事実確認の実務は、「誰を照会するか」から始まるのではない。
「誰が結果を見るのか、どこに保存するのか、漏れたら誰に報告するのか」を決めてから、初めて照会に進む制度なのである。
(5) 「いとま特例」は例外である
新たに対象業務に従事させる者については、原則としてその業務を行わせる前に犯罪事実確認を完了しなければならない(法4条1項)。急な欠員その他やむを得ない事情があり、確認を待てば事業運営に著しい支障が生ずる場合には、法4条2項の例外がある。
この例外を利用して確認前に対象業務へ従事させる場合、法4条2項ただし書により、確認が完了するまで当該者を特定性犯罪事実該当者とみなして必要な措置を講じなければならない。したがって、「児童等と1対1にしない」等の暫定的防止措置は、この例外場面の運用として整理する。
【図表7】確認の時期
| 場面 | 確認時期 |
| 新たに対象業務に従事させる者 | 原則として従事前 |
| 学校設置者等の施行時現職者 | 施行日から3年以内(法4条3項) |
| 認定事業者等の認定時現職者 | 認定等の日から1年以内(法26条3項) |
| 再確認 | 直近確認日の翌日から5年を経過する日の属する年度中 |
【図表8】学校設置者等に求められる主な措置
| 措置 | 根拠 | 内容 |
| 犯罪事実確認 | 法4条 | 対象となる教員等について確認する。 |
| 早期把握 | 法5条1項 | 日常的観察、面談、質問票等により兆候を把握する。 |
| 相談体制 | 法5条2項 | 児童等が相談しやすい内部・外部の相談環境を整える。 |
| 防止措置 | 法6条 | 「おそれ」が認められる場合に対象業務から外す等の措置を講ずる。 |
| 調査・保護支援 | 法7条 | 疑いがある場合に調査し、被害児童等を保護・支援する。 |
| 研修 | 法8条 | 従事者に必要な研修を受講させる。 |
| 情報管理 | 法11条~14条 | 利用・提供の制限、管理責任者、漏えい等対応等。 |
| 帳簿・定期報告 | 法15条 | 実施状況等を記録・報告する。 |
法6条の防止措置と解雇は別問題である
特定性犯罪事実該当者であることが確認された場合には、制度上、児童対象性暴力等が行われるおそれがあるものとして防止措置を講ずる必要がある。一方、児童等や保護者から申出があったというだけで、直ちに最終的な事実認定が成立するわけではない。必要に応じ一時的な接触回避等を行いながら、法7条に基づく公正な調査を進める。
| 法6条上、児童等と接する対象業務から外す必要があるとしても、それだけで当然に解雇・懲戒・内定取消しが有効となるわけではない。労働法上の措置は別途検討する。 |
犯罪の経歴は個人情報保護法上の要配慮個人情報である(個情法2条3項)。要配慮個人情報の取得には原則として本人の事前同意が必要であるが(同法20条2項)、法に基づく犯罪事実確認は法定手続に従って行うものであり、別個に本人同意を取得根拠とする必要はない。
【図表9】個人情報保護法とこども性暴力防止法の関係
| 論点 | 個人情報保護法 | こども性暴力防止法 |
| 取得 | 要配慮個人情報は原則同意 | 法定の犯罪事実確認として取得 |
| 対象 | 犯罪の経歴等 | 「該当なし」を含む犯罪事実確認記録等 |
| 利用 | 利用目的の範囲内 | 犯罪事実確認・防止措置等以外の利用を原則禁止(法12条) |
| 第三者提供 | 原則本人同意等 | 法12条所定の場合以外は禁止 |
| 管理 | 安全管理措置 | 法11条・14条、施行規則による特別の管理 |
| 漏えい | 一定の場合、個人情報保護委員会へ報告(個情法26条) | 法13条に基づくこども家庭庁への報告が別途存在 |
| 廃棄 | 一般的な安全管理等 | 法38条が具体的期限を設定 |
| 秘密保持 | 従業者監督等 | 法39条が一定の者に直接義務を課す |
本人が同意しても自由に公表できるわけではない
法12条には、「本人が同意した場合には自由に第三者提供できる」という一般的な例外は置かれていない。本人が「私は問題ありませんでしたと言ってもらって構いません」と同意しても、事業者が法12条を離れて自由に確認結果を提供できるものではない。
「該当なし」も法上の管理対象である
個人情報保護法上の「犯罪の経歴」と、日本版DBSで保護される「犯罪事実確認記録等」は同じ概念ではない。法35条4項1号が「特定性犯罪事実該当者であると認められない旨」も確認書に記載するとしているため、日本版DBSでは「なし」という結果も管理対象になる。
特定性犯罪事実関連情報
施行規則13条3号の「特定性犯罪事実関連情報」は、犯罪事実確認によって特定性犯罪事実該当者であることが確認された者について、防止措置を講ずるため本人から取得した、特定性犯罪事実に関するより詳細な情報を指す。本人から聞いた情報や報道で知った情報をすべて同概念に含めるのは正確ではない。
認定を受けない事業者による独自調査
認定を受けない民間教育保育等事業者が、「日本版DBSを使えないので応募者に広く前科を聞けばよい」と考えるのは危険である。個人情報保護法20条2項、職業安定法上の求職者情報の取扱い等を独立して検討する必要がある。
【図表10】情報管理の三原則
| 原則 | 現場での意味 |
| 絞る | 取扱者・閲覧者を必要最小限にする。 |
| 残さない | 紙、Excel、メール、チャット等に不要な複製を作らない。 |
| 消す | 法定期限が到来したら確実に廃棄・消去する。 |
施行規則12条2項は、犯罪事実確認記録等を取り扱う者を必要最小限とし、犯罪事実確認書の内容の記録・保存を極力避けることを求めている。こども家庭庁は、ガイドライン別紙8~10として、記録保存の有無・取扱者数に応じた3種類の情報管理規程ひな型を公表している。
| 「A氏=白、B氏=白、C氏=黒」という一覧を作らない。最も漏えいしにくいデータは、必要もないのに作らなかったデータである。 |
一方、「確認実施済み」「確認日」等、結果そのものを示さない進捗情報は、法15条の帳簿、再確認時期の管理等に必要な範囲で管理する。確認結果と進捗情報を混同してはならない。
【図表11】廃棄・消去(法38条)
| 場面 | 期限 |
| 原則 | 確認日から5年を経過した日の属する年度末から30日以内 |
| 離職 | 離職日から30日以内 |
| 任命・雇用しなかった場合 | 申請書記載の従事予定日から30日以内。ただし確認書交付日がそれより遅ければ交付日から30日以内 |
| 対象事業者等に該当しなくなった場合 | その日から30日以内 |
退職フローは、「退職処理 → アクセス権解除 → DBS情報の廃棄・消去 → 情報管理責任者による完了確認」まで一体として設計する必要がある。
【設例1】懇親会
懇親会で「A先生が急に異動したけど、DBSで何か出たの?」と聞かれた。取扱者の基本対応は、「その点については、知っているか知らないかを含めて回答できない」である。法39条の秘密保持義務は、一定の情報について元役員・元職員等にも及ぶ。情報管理研修は、「飲み会で聞かれたとき何と言うか」まで扱う必要がある。
【設例2】SNS
「○○校の先生には性犯罪歴があるらしい」というSNS投稿を発見した。現場職員が善意から「そのような事実はありません」と反論することは避ける。投稿を不用意に転送・拡散せず、真偽についてコメントせず、必要な範囲で証拠を保全し、所定の報告ルートに乗せる。
【設例3】月曜日午前7時45分
保護者から「先生の性犯罪歴に関するSNS投稿を見た」と電話が入った。電話を受けたのは一般職員で、情報管理担当の副校長と責任者の校長は午前8時頃まで出勤しない。このとき必要なのは、30頁の規程ではなく、誰に第1報を入れ、次順位は誰で、何を聴取し、保護者に何と答えるかを1枚にした緊急対応カードである。
| 事故時には、30頁の規程より「誰が・誰に・何をするか」が書かれた1枚のカードの方が役に立つ。 |
【図表12】漏えい時の二つの報告ライン
| 報告先 | 基本的な考え方 |
| こども家庭庁 | 法13条・施行規則13条所定の重大な情報管理事案では、直ちに報告する。その後、原則30日以内、不正目的行為が疑われる場合は60日以内に所定事項を追加報告する。 |
| 個人情報保護委員会 | 個人情報保護法26条の報告対象に該当する場合、同法に基づく報告・本人通知等も検討する。 |
両方の報告義務が同時に動く可能性があるため、事故対応マニュアルには、こども家庭庁ルートと個人情報保護委員会ルートを別々に記載しておく必要がある。
プライバシーポリシー改訂で確認すべきなのは、「日本版DBS」という単語が入っているかではない。むしろ「共同利用」「委託」「人事管理」「グループ会社」「適性評価」といった既存条項である。
通常の採用情報について「グループ各社で共同利用する」「人事管理、適性判断、配置等に利用する」「採用業務の委託先に提供する」という広い規定があると、その規定が意図せず犯罪事実確認記録等にまで及びかねない。DBS情報と通常の人事情報との間には、情報の「防火壁」を設ける必要がある。
【図表13】プライバシーポリシーの二つの方式
| 方式 | 内容 |
| 組込型 | 既存プライバシーポリシーの中にDBS情報の特則を設ける。 |
| 二層型 | 通常のプライバシーポリシーとは別にDBS専用の説明文書を設ける。 |
| 重要なのは形式ではなく、ポリシーに書かれた情報の流れと、実際のシステム・人事実務上の情報の流れが一致しているかである。 |
| 募集要項 → 誓約・申告書 → 内定通知書 → 就業規則 → 意向確認 → 法定の犯罪事実確認 |
これらの文書を別々に改訂してはならない。こども家庭庁は、募集要項・求人票、誓約書・内定通知書、就業規則について参考例を公表している。
誓約・申告書の意味
採用過程で「特定性犯罪事実該当者ではない」旨を申告させる書面は、法4条又は26条の正式な犯罪事実確認を代替するものではない。しかし、後に虚偽申告が判明した場合の労働法上の評価を明確にする意味がある。
つまり、法定の犯罪事実確認は法律上の安全確保措置であり、採用段階の誓約・申告は採用判断・内定取消し等を検討する際の労働法上の基礎となる。
内定取消しは自動ではない
特定性犯罪事実該当者であることが判明すれば、防止措置を講ずる必要がある。しかし、「特定性犯罪前科あり=当然に内定取消し」と機械的に処理するのは適切ではない。
内定取消しの法的安定性を高めるためには、採用過程で特定性犯罪事実該当者でないことをあらかじめ確認し、重要な経歴についての虚偽申告や、正当な理由のない犯罪事実確認手続への不対応等を取消事由として明示することが重要である。
就業規則
既に雇用関係が開始している者について結果が判明する場面もある。就業規則では、重要な経歴の故意の虚偽申告、適法・相当な手続への不協力、対象業務から外すことを含む業務変更・配置転換、児童対象性暴力等及びこれにつながる不適切な行為、DBS情報の不正閲覧・複製・提供、情報管理規程への重大な違反等について、既存の人事・懲戒体系との整合性を確認する。
【図表14】行政監督
| 対象 | 主な措置 |
| 学校設置者等 | 帳簿・定期報告(法15条)、報告徴収・立入検査(法16条)、犯罪事実確認義務違反の公表(法17条)、情報管理措置違反の是正命令(法18条)等 |
| 認定事業者等 | 帳簿・定期報告(法28条)、報告徴収・立入検査(法29条)、適合命令・是正命令(法30条)、認定取消し(法32条)等 |
法35条3項により、法18条又は30条所定の命令を受けた事業者については、必要な措置が講じられたと認められるまで、新たな犯罪事実確認書が交付されないことがある。情報管理上の問題が採用・配置に直接影響し得る。
【図表15】主な刑事罰
| 行為 | 法定刑 |
| 不正な利益を図る目的で確認書記載情報を提供(法43条) | 2年以下の拘禁刑若しくは100万円以下の罰金又は併科 |
| 不正な手段で犯罪事実確認書を取得(法44条) | 1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金 |
| 認定表示等の不正使用(法45条1項) | 1年以下の拘禁刑若しくは50万円以下の罰金又は併科 |
| 法39条の秘密保持義務違反(法45条2項) | 1年以下の拘禁刑若しくは50万円以下の罰金又は併科 |
| 帳簿不備、検査妨害、法38条の廃棄・消去義務違反等(法46条) | 50万円以下の罰金 |
| 「消し忘れ」も罰則対象になり得る。退職者の古い人事フォルダにDBS情報が残っていたという事態を、単なる整理不足と考えてはならない。 |
なお、法48条の両罰規定は、法43条、44条、45条1項及び46条の違反を対象とする。法45条2項の秘密保持義務違反は法48条の対象には含まれていない。
| 確認 | チェック項目 |
| □ | 対象となる事業を法令に基づいて特定したか。 |
| □ | 各業務について支配性・継続性・閉鎖性を確認し、対象業務従事者を特定したか。 |
| □ | 正規職員だけでなく、非常勤、アルバイト、派遣・請負等を含めて対象者を棚卸ししたか。 |
| □ | 情報管理規程を作成し、最初の犯罪事実確認書の交付申請前に提出する体制ができているか。 |
| □ | 募集要項、誓約・申告書、内定通知書、就業規則、意向確認が一本の線でつながっているか。 |
| □ | 法4条2項又は26条2項の「いとま特例」を利用する場合の暫定的防止措置を定めているか。 |
| □ | 確認結果の閲覧者を必要最小限に絞り、不要なExcel・紙・メール等への転記を防止しているか。 |
| □ | 「確認実施済み」「確認日」と「確認結果」を明確に区別して管理しているか。 |
| □ | 退職・不採用時に、アクセス権解除と法38条の廃棄・消去が自動的に動くか。 |
| □ | 保護者・報道機関等から問われた場合の定型回答を作成し、「結果は答えない。体制は答える」を全職員に周知しているか。 |
| □ | 「該当者はいませんでした」も回答しないことを研修で確認しているか。 |
| □ | プライバシーポリシーの「共同利用」「委託」「人事管理目的」にDBS情報が意図せず含まれていないか。 |
| □ | 情報管理責任者不在時の第2順位・第3順位の報告先を決めているか。 |
| □ | 漏えい時のこども家庭庁と個人情報保護委員会の二つの報告ラインを整理しているか。 |
| □ | 施行時現職者・認定時現職者の期限と、5年後の再確認年度を管理できるか。 |
| □ | 漏えい事案を想定した机上訓練を実施しているか。 |
| 月曜日の朝7時45分。校長も情報管理責任者もまだ出勤していない。「先生のDBS情報がSNSに出ている」と保護者から電話が入った。電話を取った職員は、誰に、何を、どう報告するのか。 |
この問いに答えられなければ、情報管理規程はまだ完成していない。日本版DBSは、性犯罪歴を検索するだけの制度ではない。「性暴力が起きにくい」「兆候を早く発見できる」「疑いが生じたら調査できる」「発生したら児童等を直ちに守れる」「その過程で知った従事者の情報も守れる」という職場を作る制度である。
| 犯罪事実確認書の到着はゴールではない。実務の本当のスタートは、確認書が届いた「後」にある。 |
― 複数名取扱い・確認結果の記録保存なし型 ―
【使用上の注意】こども家庭庁は、ガイドライン別紙8~10として、①責任者1名・記録保存なし、②記録保存なし、③記録保存あり、の3種類の情報管理規程ひな型を公表している。本例は②を念頭に置いた誌上掲載用の簡易例であり、そのまま提出することを想定したものではない。実際の作成・提出に当たっては、最新の公式ひな型及びガイドラインに合わせて調整する必要がある。
第1条(目的)
本規程は、法第11条、第14条その他の関係法令に基づき、犯罪事実確認記録等を適正に管理し、漏えい、不適正な利用その他の事故を防止することを目的とする。
第2条(基本原則)
犯罪事実確認記録等については、次の原則に従う。
1. 取扱者を必要最小限に限定する。
2. 犯罪事実確認書の内容について、必要のない転記、印刷、撮影、複製その他の記録・保存を行わない。
3. 法第12条所定の場合を除き、犯罪事実確認又は防止措置等以外の目的に利用し、又は第三者に提供しない。
4. 法第38条所定の期限までに確実に廃棄・消去する。
第3条(情報管理責任者等)
1. 情報管理責任者1名を置く。
2. 情報管理責任者は、業務上必要な範囲で情報管理担当者を指定する。
3. 犯罪事実確認書及びその記載情報を取り扱う者は、情報管理責任者及び指定された担当者のうち必要最小限の者に限定する。
4. 閲覧権限は権限設定表により管理し、定期的に見直す。
第4条(閲覧・記録)
1. 犯罪事実確認書は、原則として法関連システム上で閲覧する。
2. 必要のない印刷、スクリーンショット、写真撮影、電子ファイルへの転記等を行ってはならない。
3. 「白・黒」「○・×」「該当あり・なし」等、犯罪事実確認の結果を通常の人事台帳、メール、チャット等に記録してはならない。
4. 「確認実施済み」「確認日」その他確認結果を示さない情報については、帳簿、定期報告、再確認時期の管理その他法令上必要な範囲で管理することができる。
第5条(特定性犯罪事実関連情報)
犯罪事実確認の結果、特定性犯罪事実該当者であることが確認された者について、防止措置を講ずるため本人から特定性犯罪事実に関する詳細な情報を取得した場合には、法令、ガイドライン及び本規程に従い、取扱者及び利用目的を限定して管理する。
第6条(外部からの照会)
1. 保護者、報道機関その他外部の者から犯罪事実確認に関する照会を受けた場合、応対者は、個々の犯罪事実確認の結果及び該当者の有無について、結果の内容を問わず回答してはならない。
2. 応対者は、個人を特定しない犯罪事実確認の実施状況及び当法人の安全確保措置・情報管理体制について、あらかじめ定めた定型回答により説明することができる。
3. 情報管理責任者は、前項の定型回答を作成し、全職員に周知する。
第7条(アクセス管理)
担当者が異動、退職又は担当変更となった場合には、当該担当者の関連システム及びデータへのアクセス権を直ちに解除する。
第8条(秘密保持)
取扱者は、職務上知り得た犯罪事実確認に関する情報を、法令上認められる場合を除き、他人に知らせ、又は業務上必要な範囲を超えて利用してはならない。法第39条の対象となる情報については、退職その他取扱者でなくなった後も同条を遵守する。
第9条(研修)
情報管理責任者及び担当者に対し、着任時及び定期的に、利用目的・第三者提供の制限、外部からの照会への対応、秘密保持、廃棄・消去、漏えい等発生時の対応その他情報管理に必要な事項について研修を行う。
第10条(漏えい等発生時の対応)
1. 漏えい、滅失、毀損、不適切な第三者提供又はこれらのおそれを把握した者は、直ちに情報管理責任者に報告する。
2. 情報管理責任者不在時の第2順位及び第3順位の報告先をあらかじめ定め、全職員に周知する。
3. 必要に応じ、証拠保全、被害拡大防止、アクセス停止等を実施する。
4. 法第13条及び施行規則第13条・第14条に該当する場合には、直ちにこども家庭庁への報告を行い、その後、所定期限までに必要な追加報告を行う。
5. 個人情報保護法第26条その他関係法令に基づき必要な場合には、個人情報保護委員会への報告及び本人への通知等を行う。
第11条(廃棄・消去)
法第38条に従い、所定期限までに犯罪事実確認記録等を廃棄・消去し、情報管理責任者はその完了を確認する。
第12条(点検・訓練)
情報管理責任者は、定期的に、アクセス権、情報の保存状況、研修、事故対応体制その他本規程の遵守状況を点検する。また、漏えい等の検知から報告・初動対応までのシミュレーションを実施し、判明した課題を本規程及び業務マニュアルの改善に反映する。
第○条(児童対象性暴力等の禁止)
従業員は、児童対象性暴力等又は会社が別に定める児童対象性暴力等につながる不適切な行為を行ってはならない。
第○条(犯罪事実確認への協力)
こども性暴力防止法に基づく犯罪事実確認の対象となる従業員は、法令に基づき会社が行う犯罪事実確認について、意向確認、本人特定情報等の登録・提出その他法令上必要な手続に協力しなければならない。
第○条(秘密保持)
従業員は、犯罪事実確認記録等その他職務上知り得た日本版DBSに関連する情報を、業務上必要な範囲を超えて閲覧、利用、開示、複製又はSNSその他の方法により発信してはならない。犯罪事実確認の結果に関する外部からの照会については、結果の内容を問わず回答してはならない。
第○条(防止措置)
会社は、犯罪事実確認の結果その他の事情から児童対象性暴力等が行われるおそれがあると認める場合には、法令及び労働契約に従い、対象業務から外すこと、業務範囲の変更、配置転換その他必要な措置を講ずることがある。
第○条(試用期間中の本採用拒否等)
試用期間中又は試用期間満了時において、次の各号に該当し、本採用を拒否することについて客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当と認められる場合には、本採用を行わないことがある。
1. 採用時に明示的に確認された重要な経歴について故意に虚偽の申告をしたことが判明したとき
2. 正当な理由なく犯罪事実確認に必要な手続に対応せず、予定する対象業務に従事させることができないとき
3. その他本採用を行うことが相当でない重大な事由があるとき
第○条(懲戒)
次の各号に該当する場合には、その行為の内容、態様、結果その他一切の事情を考慮し、就業規則に定める懲戒処分の対象とする。
1. 採用時に明示的に確認された重要な経歴について故意に虚偽の申告をしたとき
2. 児童対象性暴力等又はこれにつながる不適切な行為を行ったとき
3. 犯罪事実確認記録等を不正に閲覧、複製、持ち出し又は提供したとき
4. 正当な理由なく法令に基づく適法かつ相当な業務上の指示に従わなかったとき
5. 情報管理規程に重大な違反をしたとき
| 【注意】特定性犯罪事実該当者であることのみをもって当然に解雇する趣旨ではない。法6条等の防止措置と、解雇・懲戒その他の労働法上の措置は区別し、個別事情に応じて検討する必要がある。 |
こども性暴力防止法に基づく情報の取扱い
当法人は、こども性暴力防止法に基づき、対象業務に従事し、又は従事する予定の職員等について犯罪事実確認を行う。
1 利用目的
犯罪事実確認記録等及び法令上の特定性犯罪事実関連情報は、こども性暴力防止法に基づく犯罪事実確認及び児童対象性暴力等の防止措置その他同法上認められる目的のために必要な範囲で利用し、一般的な人事評価、統計分析その他これらと関係のない目的には利用しない。
2 取扱者
当該情報を取り扱う者は、情報管理規程に基づき必要最小限の者に限定する。
3 共同利用・委託・第三者提供
通常の採用・人事情報についてグループ法人との共同利用又は業務委託を行う場合であっても、犯罪事実確認記録等は当然にはその対象としない。法第12条各号その他こども性暴力防止法の定めにより認められる場合を除き、第三者に提供しない。業務上必要かつ法令上許容される委託等を行う場合には、その必要性、取扱範囲及び安全管理措置を別途確認する。
4 安全管理
犯罪事実確認記録等について、法第11条、第14条、施行規則その他の関係法令及び当法人の情報管理規程に従い、必要な安全管理措置を講ずる。
5 廃棄・消去
犯罪事実確認記録等については、法第38条に定める期限までに適切に廃棄・消去する。
| 【実務ポイント】既存ポリシーに「共同利用」「委託」「人事管理目的」等の広範な規定がある場合、それらが犯罪事実確認記録等に無限定に及ばないよう明確に切り分けることが重要である。 |
【使用上の注意】こども家庭庁の「誓約書・内定通知書参考例」(ガイドライン別紙4)の考え方を踏まえた本稿独自の参考例であり、公式参考例の転載ではない。
[法人名]御中
私は、貴法人の採用選考に際し、次の事項を申告し、誓約する。
1 特定性犯罪事実該当者に関する申告
私は、こども性暴力防止法第2条第8項に規定する特定性犯罪事実該当者ではない。
2 申告内容の正確性
私は、採用選考の過程において提出した書類及び申告した内容が事実であり、採用判断上重要な経歴について故意に虚偽の申告をしていないことを誓約する。
3 犯罪事実確認への協力
私は、こども性暴力防止法に基づく犯罪事実確認の対象となる場合には、意向確認、本人特定情報等の登録・提出その他法令に基づき必要となる手続に協力する。なお、本誓約・申告書が、同法第4条又は第26条に基づく正式な犯罪事実確認を代替するものではないことを理解している。
4 個人情報の取扱い
私は、貴法人が本書により取得する情報を、こども性暴力防止法への対応、犯罪事実確認及び児童対象性暴力等を防止するために必要な措置の検討・実施のため、法令に従って取り扱う旨の説明を確認した。
令和 年 月 日
氏名:
| 【申告者への注意】特定性犯罪事実該当者に該当するかについて疑義がある場合には、本書面に罪名、判決内容、事件の具体的内容等を記載せず、指定された担当窓口に相談すること。 |
内定取消事由
当法人は、次の各号のいずれかに該当し、内定取消しについて客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当と認められる場合には、採用内定を取り消すことがある。
1. 学歴、職歴、資格、犯罪歴その他採用判断上重要な経歴について故意に虚偽の申告をしたことが判明した場合
2. 正当な理由なく、こども性暴力防止法に基づく犯罪事実確認に必要な手続に対応せず、予定する対象業務に従事させることができない場合
3. 採用内定後に重大な犯罪その他従業員としての適格性に重大な影響を及ぼす事実が生じた場合
4. その他前各号に準ずるやむを得ない事由がある場合
| 【注意】犯罪事実確認の結果、特定性犯罪事実該当者であることが判明した場合には、法6条又は法26条7項等に基づく防止措置の検討が必要となる。もっとも、内定取消しの有効性は別途労働法上の判断を要する。法定の犯罪事実確認とは別に、採用過程で特定性犯罪事実該当者でないことをあらかじめ確認し、重要な経歴の虚偽申告や犯罪事実確認手続への不対応等を取消事由として明示しておくことが法的安定性を高める。 |
1 こども家庭庁「こども性暴力防止法について」
2 「学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律」(令和6年法律第69号)
3 同法施行令(令和7年政令第440号)・同法施行規則(令和7年内閣府令第104号)
4 こども家庭庁「こども性暴力防止法施行ガイドライン」及び別紙1~11
5 こども家庭庁「こども性暴力防止法に関するQ&A」・「義務事業者用準備ガイド」・事業者向けチェックリスト
6 個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」
7 UK Government, Disclosure and Barring Service (DBS)
※ 本稿は、2026年8月14日時点で公表されている法令、こども家庭庁、個人情報保護委員会その他の公表資料を基に、制度の概要と企業・学校等の実務対応上の留意点を整理したものである。今後の通知、Q&A、システム仕様等により実務運用が更新される可能性がある。本稿は一般的な情報提供を目的とするものであり、個別の事案に関する法的助言を行うものではない。