平素より大変お世話になっております。
さて、今回は資金決済法関連のニュースレター「グローバル収納代行規制の完全解説― 改正資金決済法・移動業府令の実務対応マニュアル ―」をご案内させていただきます。
令和8年5月25日
弁護士法人三宅法律事務所
| *本ニュースレターに関するご相談がありましたら、下記にご連絡ください。 弁護士法人三宅法律事務所 弁護士渡邉雅之(執筆者) TEL 03-5288-1021 FAX 03-5288-1025 Email: m-watanabe@miyake.gr.jp |
(ニュースレターのPDFは下記をご覧ください)
「グローバル収納代行規制の完全解説― 改正資金決済法・移動業府令の実務対応マニュアル ―」
(英語のニュースレターについては下記のウェブページをご覧ください)
前文 ― 本ニュースレターに関連する法令等
「資金決済に関する法律の一部を改正する法律」(令和7年法律第66号。以下「改正法」といい、改正後の資金決済に関する法律を「資金決済法」という。)が令和7年に成立し、その施行期日は令和8年(2026年)6月1日と定められました(「資金決済に関する法律の一部を改正する法律の施行期日を定める政令」(令和8年5月22日政令第172号))。
改正法では、クロスボーダー収納代行(国境を跨ぐ収納代行)について、資金決済法第2条の2第2号として、為替取引に該当することが明文化されました。これに伴い、令和8年5月22日付で「資金移動業者に関する内閣府令等の一部を改正する内閣府令」(令和8年5月22日内閣府令第51号)が公布され、改正後の資金移動業者に関する内閣府令(以下「移動業府令」という。)において、適用除外類型(第1条の3第1項)及び適用除外の例外類型(同条第2項)が新設されました。
また、同日付で金融庁から「令和7年資金決済法改正に係る政令の公布及びパブリックコメントの結果等について」[1]が公表されました。本ニュースレターでは、特にその【コメントの概要及びコメントに対する金融庁の考え方】の(別紙4)「クロスボーダー収納代行(国境を跨ぐ収納代行)関係」[2](以下「パブコメ」という。)に示された金融庁の解釈・運用方針を中心に解説いたします。
さらに、事務ガイドライン(第三分冊:金融会社関係 14 資金移動業者関係)(以下「事務ガイドライン」という。)についても、本改正に対応した改正が行われています。具体的な改正内容は、「事務ガイドライン(第三分冊:金融会社関係 14 資金移動業者関係)(新旧対照表)」[3]をご参照ください。
なお、本改正の背景及び立法趣旨については、金融審議会「資金決済制度等に関するワーキング・グループ」報告書[4]」(以下「資金決済WG報告」という。)に詳しく示されています。
本ニュースレターは、改正法・移動業府令・パブコメ・事務ガイドライン・資金決済WG報告を総合的に踏まえ、クロスボーダー収納代行に関する実務対応について、PF事業者・PSP・収納代行業者・資金移動業者・金融機関等の事業者の皆様に向けて、判断フロー、適用除外類型・適用除外の例外類型の詳細解説、典型的スキーム別判断例、経過措置、実務対応チェックリスト及び契約条項例を網羅的に整理するものです。
なお、本ニュースレターで用いる主要な略称は以下のとおりです。
| 略称 | 正式名称 |
| 改正法 | 資金決済に関する法律の一部を改正する法律(令和7年法律第66号) |
| 資金決済法 | 資金決済に関する法律(改正後) |
| 移動業府令 | 資金移動業者に関する内閣府令(改正後) |
| 改正内閣府令 | 資金移動業者に関する内閣府令等の一部を改正する内閣府令(令和8年5月22日内閣府令第51号) |
| 施行期日政令 | 資金決済に関する法律の一部を改正する法律の施行期日を定める政令(令和8年5月22日政令第172号) |
| パブコメ | 「令和7年資金決済法改正に係る政令の公布及びパブリックコメントの結果等について」(金融庁、令和8年5月22日)【コメントの概要及びコメントに対する金融庁の考え方】(別紙4)「クロスボーダー収納代行(国境を跨ぐ収納代行)関係」 |
| 事務ガイドライン | 事務ガイドライン(第三分冊:金融会社関係 14 資金移動業者関係) |
| 資金決済WG報告 | 金融審議会「資金決済制度等に関するワーキング・グループ」報告書(令和7年1月22日) |
| 犯収法 | 犯罪による収益の移転防止に関する法律 |
| 外為法 | 外国為替及び外国貿易法 |
| 国外送金等調書法 | 内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律 |
| PF | 取引プラットフォーム提供者 |
| PSP | Payment Service Provider(決済代行業者) |
第1 改正の全体像 ― なぜ今クロスボーダー収納代行が問題か
1 改正の背景
本改正の背景については、資金決済WG報告及びパブコメにおいて、以下のとおり示されています。すなわち、近年、以下の問題が顕在化しています。
(1) オンラインカジノへの送金問題
海外のオンラインカジノ事業者へ日本居住者が賭金を送金する手段として、無登録のクロスボーダー収納代行業者が利用されている実態が指摘されてきました。
(2) SNS型投資詐欺の被害金海外送金問題
SNSを通じた投資詐欺により欺し取られた金銭が、クロスボーダー収納代行業者を通じて海外に送金され、被害回復が極めて困難になる事案が多発しています。
(3) FATFの国際的要請への対応
FSB(金融安定理事会)の「クロスボーダー送金サービスを提供する銀行・ノンバンクの規制・監督に係る勧告」を踏まえ、日本も国際整合的な規制整備が求められていました。
2 改正の3つの柱
| 改正の柱 | 内容 |
| ① 為替取引該当性の明確化 | クロスボーダー収納代行が原則として為替取引に該当することを明文化 |
| ② 適用除外 | 利用者保護に欠けるおそれが少ない7類型を適用除外として規定 |
| ③ 適用除外の例外 | 適用除外類型でも、賭博・投資取引等の高リスク類型は規制対象 |
3 規制対象となるとどうなるか
クロスボーダー収納代行が為替取引に該当し、適用除外も使えない場合、以下の規制が課されます。
(1) 資金移動業者としての登録
資金決済法第37条に基づき、資金移動業者としての登録が必要となります。送金額に応じて第一種・第二種・第三種の区分があります。
(2) 犯罪収益の移転の防止に関する法律(以下「犯収法」という。)上の特定事業者としての義務
取引時確認、確認記録・取引記録の作成保存、疑わしい取引の届出等の義務を負います。
(3) 履行保証金の供託等
資金決済法第43条~第45条に基づく財産的基礎が必要となります。
(4) 利用者保護措置の構築
情報提供義務、受取証書交付義務、苦情処理体制等の整備が必要となります。
(5) 関連法令の遵守
外為法上の特定為替取引(10万円超)、国外送金等調書法等の遵守が必要となります。
★無登録で為替取引を営んだ場合は刑事罰の対象となります(銀行法第61条第1号)。
第2 4ステップの判断フロー
1 判断順序の全体像
実務上、クロスボーダー収納代行スキームの規制該当性は以下の4ステップで判断します。
| Step 1:クロスボーダー収納代行に該当するか (資金決済法第2条の2第2号) |
↓ Yes
| Step 2:適用除外(第1項)に該当するか (移動業府令第1条の3第1項第1~7号) |
↓ Yes
| Step 3:適用除外の例外(第2項)に該当しないか (同条第2項第1~5号) |
↓ 該当しない
| Step 4:規制対象外 (ただしAML/CFT等の検討は別途必要) |
2 各ステップの判断ポイント
| Step | 判断対象 | キーワード |
| Step 1 | クロスボーダー収納代行該当性 | 国内⇔国外の資金移動、受取人からの委託 |
| Step 2 | 7類型の適用除外該当性 | 銀行等経由、エスクロー、PF、グループ内、カード、PF再委託、銀行等再委託 |
| Step 3 | 5類型の例外該当性 | 債務未消滅、PF再委託リスク、賭博、投資取引、公序良俗違反 |
| Step 4 | 規制適用の有無 | 資金移動業登録、犯収法、外為法等 |
第3 Step 1:クロスボーダー収納代行とは何か
1 資金決済法第2条の2第2号の条文
クロスボーダー収納代行とは、「受取人からの委託(国内から国外へ向けて資金を移動させ、又は国外から国内へ向けて資金を移動させる行為に係る場合にあっては、二以上の段階にわたる委託を含む。)により、債務者等から弁済として資金を受け入れ、又は他の者に受け入れさせ、受取人等に当該資金を引き渡すことによって、債務者等から受取人等に当該資金を移動させる行為」をいい、原則として「為替取引」に該当することとされています(資金決済法第2条の2本文、第2号)。
この行為態様に該当するもののうち、「当該行為の態様その他の事情を勘案し、利用者の保護に欠けるおそれが少ないものとして内閣府令で定めるもの」は「為替取引」から除外されることになります(移動業府令第2条の2第2号)。これが改正後の移動業府令第1条の3第1項各号に定められています。
2 該当性の3つの要素
クロスボーダー収納代行に該当するためには、以下の3要素が必要です。
(1) 受取人からの委託
ア 受取人から委託を受けていること
イ 2段階以上の委託を含むこと
(2) 弁済としての資金受入れ・引渡し
ア 債務者から弁済を受け入れる行為
イ 受取人に引き渡す行為
(3) 国境を跨ぐ資金移動
ア 国内から国外への資金移動
イ 国外から国内への資金移動
3 「国内/国外」の判断基準
| 決済手段 | 国内/国外の判断基準 |
| 銀行振込 | 債務者・受取人の預金口座の開設地 |
| 電子決済手段(ステーブルコイン等) | 管理主体(取引業者・保有者)の所在地・居住地 |
| その他 | 個別事例ごとに実態に即して実質判断 |
★重要ポイント:非居住者が国内銀行に開設した預金口座は「国外の銀行口座等」に含まれない(パブコメNo.8)。インバウンド旅行者向け決済等で重要。
4 「資金」の範囲
| 決済手段 | 「資金」該当性 | 為替取引規制 |
| 法定通貨 | ○ 該当 | 適用あり |
| 電子決済手段(ステーブルコイン等) | ○ 該当 | 適用あり(電子決済手段等取引業に該当する場合は重複適用なし) |
| 暗号資産 | △ 個別判断 | 個別判断 |
5 国外事業者への適用
★国外に所在する事業者であっても、資金決済法第2条の2の行為が国内で実行されている場合は同法の適用を受けます(パブコメNo.1・2)。
第4 Step 2:7つの適用除外類型(資金決済法第2条の2第2号、移動業府令第1条の3第1項各号)
1 7類型の全体マップ
| 号 | 通称 | 適用範囲 | 典型例 |
| 第1号 | 銀行等経由型 | 銀行等・資金移動業者の為替取引を経由する収納代行 | 銀行送金を活用した代金回収 |
| 第2号 | エスクロー型 | 反対給付完了後に資金引渡しを行う収納代行 | 不動産取引、検収後支払い |
| 第3号 | PF型 | 取引プラットフォーム提供者による収納代行 | Amazon、楽天市場、メルカリ等 |
| 第4号 | グループ内型 | 同一会社等集団内の受取人への収納代行 | 親子会社・グループ会社間の債権回収 |
| 第5号 | カード・前払型 | 国際ブランド・クレジットカード・前払式支払手段関連 | VISA、Mastercard加盟店向け収納代行 |
| 第6号 | PF再委託型 | エスクロー・PF事業者から委託を受けた決済代行 | PSPがPFから委託を受ける場合 |
| 第7号 | 銀行等再委託型 | 銀行等・資金移動業者から委託を受けた収納代行 | 銀行が業務を委託する場合 |
2 適用除外の利用頻度(実務上の感覚)
| 順位 | 類型 | 実務での利用頻度 |
| 1位 | 第5号(カード・前払型) | 極めて高い(国際ブランド決済の大部分) |
| 2位 | 第3号(PF型) | 高い(ECモール、マーケットプレイス) |
| 3位 | 第6号(PF再委託型) | 高い(PSPによる決済代行) |
| 4位 | 第4号(グループ内型) | 中(多国籍企業のグループ精算) |
| 5位 | 第2号(エスクロー型) | 中(不動産取引、中古車取引等) |
| 6位 | 第1号(銀行等経由型) | 低(限定的なスキームのみ) |
| 7位 | 第7号(銀行等再委託型) | 低(金融機関主導のスキームのみ) |
3 第1号 銀行等経由型(移動業府令第1条の3第1項第1号)
(1) 条文
「受取人が有する金銭債権に係る債務者等から弁済として資金を銀行等又は資金移動業者に受け入れさせ、受取人等に当該資金を引き渡す行為(当該資金を当該銀行等又は資金移動業者が行う為替取引に係る支払の受領として受け入れさせて行うものに限る。)」
(2) 解説
ア 趣旨
この類型は、収納代行業者が自ら資金を受け入れるのではなく、銀行等または登録済み資金移動業者の為替取引の枠組みで資金を受け入れさせる類型です。
イ 括弧書きの限定条件
パブコメを受けて、「(当該資金を当該銀行等又は資金移動業者が行う為替取引に係る支払の受領として受け入れさせて行うものに限る。)」という文言が追加されました(パブコメ30番)。これは、単に銀行口座やアカウントに振込ませるだけでは不十分という趣旨です。
(3) 該当する例・該当しない例
| ケース | 該当性 | 理由 |
| ① 銀行が為替取引として資金を受け入れ、収納代行業者が受取人に引き渡す | ○ | 銀行の為替取引として受領 |
| ② 単に収納代行業者が銀行に開設した口座に債務者が振り込む | × | 単なる口座利用にすぎない |
| ③ バーチャル口座(振込専用口座)を使用 | × | 受入口座は事業者名義のため該当せず |
| ④ 受取人から代理受領権を授与された者が、銀行に代理受領権を再授与 | ○ | 銀行の為替取引として受領 |
(4) 実務上の留意点
★第1号を利用する場合、委託先の銀行等・資金移動業者において、業務内容の変更届出(資金決済法第41条第3項・第4項)が必要となる可能性があります(パブコメNo.34)
4 第2号 エスクロー型(移動業府令第1条の3第1項第2号)
(1) 条文
「受取人がその有する金銭債権に係る債務者に対し反対給付をする義務を負っている場合に、当該反対給付に先立って又はこれと同時に当該金銭債権に係る債務者等から弁済として資金を受け入れ、又は他の者に受け入れさせ、当該反対給付が行われた後に受取人等に当該資金を引き渡す行為」
(2) 解説
ア 典型例
エスクロー型の典型は、購入者が商品代金をエスクロー事業者に支払い、商品発送・役務提供・検収等が完了した後に売主へ資金を引き渡す仕組みです。
エスクローサービスに伴う収納代行は、基本的に内閣府令第1条の3第2号に規定する収納代行に該当します(事務ガイドラインI-2-2-2(2))。
イ 名称ではなく実態で判断
★重要なのは、「反対給付が行われた後に」資金を引き渡すことが条件である点です。単に「エスクロー」と名乗っているだけでは足りません(パブコメNo.25)。
(3) 該当する典型例
① 不動産売買(所有権移転登記、物件引渡し)
② 中古車取引(名義変更、車両引渡し)
③ BtoB取引(商品納品、検収)
④ デジタルコンテンツ販売(コンテンツ提供、利用開始)
⑤ 役務提供契約(役務完了、検収)
(3) 該当しない例
① 名称が「エスクロー」でも、反対給付前に資金を引き渡す場合
② エスクロー事業者が契約成立に不可欠な関与をせず、単に資金保管のみ行う場合
③ 反対給付の有無を確認せず一律に資金を引き渡す場合
(4) 実務チェックポイント
ア 反対給付の証跡(発送伝票、納品書、検収書)を保存
イ キャンセル時・反対給付未了時の返金ルールを整備
ウ 利用規約に反対給付完了後の引渡条件を明示
5 第3号 PF型 ― 最重要類型(移動業府令第1条の3第1項第3号)
(1) 条文
「受取人が有する金銭債権の発生原因である契約の締結の方法に関する定めをすることその他の当該契約の成立に不可欠な関与を行い、当該金銭債権に係る債務者等から弁済として資金を受け入れ、又は他の者に受け入れさせ、当該受取人の同意の下に、当該契約の内容に応じて受取人等に当該資金を引き渡す行為」
(2) 「契約の成立に不可欠な関与」とは
事務ガイドラインに以下の重要な明確化が追記されました(事務ガイドラインI-2-2-2(3))。
ア 不可欠な関与とされる例
① 委託販売者として売主を代理して買主と売買契約を締結する場合
② 多数の者が参加できるプラットフォームを提供し、利用規約において利用条件や取引成立条件を定めている場合
イ 不可欠な関与とされない例
① 単なる決済方法の提供
② 商品の広告
③ 顧客の紹介
(3) PF型の典型例
| サービス類型 | 具体例 |
| ECモール・マーケットプレイス | Amazon、楽天市場、Yahoo!ショッピング |
| フリマアプリ・C2Cマーケット | メルカリ、ヤフオク! |
| シェアリングエコノミー | Airbnb、Uber Eats |
| クラウドソーシング | クラウドワークス、ランサーズ |
| デジタルコンテンツ配信 | Apple App Store、Google Play |
| マッチングサービス | 各種スキルマッチング、結婚相談 |
(4) PFの責任構造の確認
PF型として認められるためには、以下のような責任構造が必要と考えられます。
ア 利用規約で取引成立条件、注文確定、キャンセル、返品、返金、紛争対応を定めている
イ 出品者・加盟店の審査、停止、解除を行う仕組みがある
ウ 利用者からの苦情対応の仕組みがある
エ 取引データを管理し、契約内容に応じて資金を引き渡している
(5) PF型に該当しない例(注意点)
ア 単なる広告サイト・送客サイト(契約成立への関与なし)
イ 商品の比較情報を提供するだけ(単なる紹介にすぎない)
ウ 決済方法を提供するだけ(単なる決済代行)
エ 債権の二次流通プラットフォーム運営者(売買の目的たる債権の発生原因契約には関与せず・パブコメNo.38)
6 第4号 グループ内型(移動業府令第1条の3第1項第4号)
(1) 条文(要旨)
「自己と同一の会社等の集団に属する他の者が受取人である場合に、当該受取人が有する金銭債権に係る債務者等から弁済として資金を受け入れ、又は他の者に受け入れさせ、受取人等に当該資金を引き渡す行為」
ただし、「当該他の者が、法第2条の2の規定の適用を免れる目的で第三者からの金銭債権の譲受けその他これに類する方法により当該金銭債権を有することとなった場合を除く。」
(2) 解説
グループ会社間の収納代行・精算を想定した類型です。多国籍企業のグループ内決済、共同調達、グループ内サービス提供等で広く利用されます。
(3) 「同一の会社等の集団」の範囲
★孫会社まで含まれます(パブコメNo.47)。
【A社】── 支配 ──>【B社】── 支配 ──>【C社】
(親会社) (子会社) (孫会社)
↑ ↑ ↑
└────── 同一会社等集団 ───────┘
A社・B社・C社のいずれも、A社を頂点とする同一の会社等の集団に属します。
(4) 規制潜脱目的の譲受けに注意
第三者から債権を譲り受けて適用除外を受けようとする場合、規制潜脱目的と認定される可能性があります。
| 取引 | 規制潜脱目的の該当性 |
| ① ファクタリング目的の債権譲渡 | × 該当しない(早期資金化目的・パブコメNo.45) |
| ② グループ会社が第三者から債権譲受け→集約回収 | △ 取引実態により個別判断 |
| ③ 規制適用を免れる目的での債権譲受け | ○ 該当する(適用除外不可) |
(5) 海外グループ会社への送金リスク
パブコメで、海外グループ会社経由のマネー・ローンダリングのリスクが指摘されました(パブコメNo.49)。実務上は、グループ内取引であっても以下のリスク管理が望ましいです。
ア グループ会社の登録状況・許認可の確認
イ 制裁リスト照合
ウ 取引記録の作成・保存
エ 規制潜脱目的でないことの社内検証
7 第5号 カード・前払型 ― 最大の適用範囲(移動業府令第1条の3第1項第5号)
(1) 条文の構造
第5号は4つの類型から構成されています。
| 規定 | 内容 |
| 柱書 | 他の法令に基づく弁済資金の受入れ・引渡し |
| イ | 国際ブランド付き第三者型前払式支払手段等に係る清算 |
| ロ | クレジットカード加盟店を受取人とする収納代行 |
| ハ | 第三者型前払式支払手段加盟店を受取人とする収納代行 |
(2) 第5号イ:国際ブランド型
国際ブランド(VISA、Mastercard、JCB、American Express、Diners Club等)の登録商標が付された第三者型前払式支払手段等について、イシュア(発行者)とアクワイアラー(立替払取次業者)の間の清算のために資金を受け入れ・引き渡す行為が該当します。
(3) 第5号ロ:クレジットカード加盟店型
ア 規制の概要
「クレジットカード番号等取扱契約締結事業者(アクワイアラー)との間でクレジットカード番号等取扱契約を現に締結する販売業者又は役務提供事業者」を受取人とする収納代行が対象です。
イ 重要な明確化(パブコメNo.63)
事務ガイドラインに「『クレジットカード等購入あっせんにより決済できる取引』はクレジットカード等購入あっせんにより決済可能である取引を指し、クレジットカード等購入あっせん以外により決済した取引も含む」との記載が追記されました(事務ガイドラインI-2-2-2(6))。
→ 実際にクレジットカードで決済された取引に限らず、決済可能な取引であれば他の決済手段(QR決済、銀行振込等)で決済された取引も適用除外の対象となります。
(4) 第5号ハ:第三者型前払式支払手段加盟店型
国内登録された第三者型発行者が発行する前払式支払手段の加盟店を受取人とする収納代行が対象です。第5号ロと同様、決済可能であれば他の決済手段による取引も含まれます(パブコメNo.64)。
(5) アウトバウンド決済の取扱い
★重要な明確化(パブコメNo.68):海外の国際ブランド加盟店への資金引渡し(アウトバウンドのクロスボーダー収納代行)についても、国内登録された第三者型発行者が発行する国際ブランド付プリペイドカード等により決済できる加盟店であれば、第5号ハに該当します。
(6) 実務適用例
| ケース | 適用除外 |
| ① 国内アクワイアラーが日本国内加盟店向けにVISA決済を提供 | 第5号ロ |
| ② 国内アクワイアラーが海外加盟店向けにVISA決済を提供 | 第5号ロ |
| ③ 国内発行のブランドプリカが利用できる海外加盟店向け収納代行 | 第5号ハ |
| ④ 国内加盟店で外国発行カードによる決済(インバウンド) | 第5号ロ |
| ⑤ 加盟店で同一商品をQR決済で決済(カード加盟店契約あり) | 第5号ロ(カード以外の決済も含む) |
8 第6号 PF再委託型(移動業府令第1条の3第1項第6号)
(1) 条文
「第2号及び第3号に掲げる行為を行う者からの委託その他これに類する方法により、第2号及び第3号の受取人が有する金銭債権に係る債務者等から弁済として資金を受け入れ、又は他の者に受け入れさせ、受取人等に当該資金を引き渡す行為」
(2) 解説
エスクロー事業者またはPF事業者から委託を受けたPSP・収納代行業者を想定した類型です。
典型例:PFが自ら契約成立に不可欠な関与を行いつつ、実際の入金受付・精算・加盟店への支払をPSPに委託する場合
(3) 委託の方式
★契約書の取り交わしは必須ではありません(パブコメNo.98)。委託の意思があれば足ります。
ただし、実務上は、後日の証拠保全のため契約書を作成することが強く推奨されます。
(4) 資金受入れと引渡しの分担
★重要な明確化(パブコメNo.96):PFが「資金受入れ」を収納代行業者A、「資金引渡し」を収納代行業者Bに委託する場合、AとBのいずれも第6号の適用除外に該当します。
事務ガイドラインも「エスクローサービスの提供者又は取引プラットフォームの提供者から資金の受け入れ又は引き渡しについて委託を受けて行う収納代行は、基本的に内閣府令第1条の3第1項第6号に規定する収納代行に該当する。」((事務ガイドラインI-2-2-2(8))と修正されました。
(5) 委託元と委託先の連動性
★重要な整理(パブコメNo.90):PFが第2項第2号(適用除外の例外)に該当して適用除外を失っても、PSP(再委託先)の適用除外は維持されます。委託先の判断は委託元の判断に紐づきません。
(6) 表明保証だけでは足りない
★注意(パブコメNo.91・99):金融庁は、PFから「第3号の要件を満たす」との表明保証を受けるだけでは適用除外該当性が確定的に判断されないと回答しています。実務上は、表明保証を受けることに加え、以下の実態資料による客観的事実の確認が不可欠です。
ア PF利用規約
イ 取引成立条件・注文確定フロー
ウ キャンセル・返金ルール
エ 加盟店管理規程
オ 取引画面のスクリーンショット
カ 取引データの一部サンプル
9 第7号 銀行等再委託型(移動業府令第1条の3第1項第7号)
(1) 条文
「銀行等又は資金移動業者からの委託その他これに類する方法により、受取人が有する金銭債権に係る債務者等から弁済として資金を受け入れ、又は他の者に受け入れさせ、受取人等に当該資金を引き渡す行為」
(2) 解説
銀行等または登録済み資金移動業者が、自らの為替取引・資金移動サービスの一部として、他の事業者に収納代行機能を委託する場合を想定した類型です。
実務上は、第6号(PF再委託型)と比較すると利用頻度は低いものですが、銀行の業務委託先として収納代行を行う場合に該当する可能性があります。
(3) 委託元の為替取引該当性
★第7号の適用を受けるためには、銀行等または資金移動業者からの委託を受けて行う資金の受渡しが、委託元の為替取引に関連するものである必要があります(パブコメNo.103)。
委託元の為替取引に該当しない単なる収納代行を委託される場合は、第7号の適用を受けないこととなります。
第5 Step 3:適用除外の例外(移動業府令第1条の3第2項)― 5つの落とし穴
1 全体像
★最重要ポイント:第1項各号に該当しても、第2項各号に該当すると適用除外は使えません。
| 号 | 通称 | 規制対象となる範囲 |
| 第1号 | 債務未消滅型 | 弁済時に債務者の債務が消滅しない収納代行 |
| 第2号 | PF再委託リスク型 | 国外→国内のPF・エスクロー再委託で資金引渡阻害リスクあり |
| 第3号 | 賭博関連 | オンラインカジノ等の賭博資金の収納代行 |
| 第4号 | 投資取引関連 | 新規発行有価証券・有価証券売買・デリバティブ取引 |
| 第5号 | 公序良俗違反類似 | 上記に類する違法・公序良俗違反取引 |
2 例外類型の組み合わせ整理
| ケース | 第2項の適用 |
| ① PF型に該当(第3号)+ 賭博資金(第2項第3号) | 例外該当 → 為替取引規制適用 |
| ② カード加盟店型(第5号ロ)+ FX取引(第2項第4号) | 例外該当 → 為替取引規制適用 |
| ③ グループ内型(第4号)+ 賭博資金(第2項第3号) | 例外該当 → 為替取引規制適用 |
| ④ PF型(第3号)+ 通常のEC取引 | 例外非該当 → 適用除外 |
3 第1号 債務未消滅型(移動業府令第1条の3第2項第1号)
(1) 条文
「前条第1号に掲げる要件を満たす行為」
ここでいう「前条第1号」とは、移動業府令第1条の2第1号を指します。同号は、債務者等から弁済として資金を受け入れた時までに当該金銭債権に係る債務者の債務が消滅しないものを問題にしています。
(2) 解説
債務者が収納代行業者等に支払っても、受取人に対する債務が消滅しないような場合です。
この場合、利用者から見ると「支払ったのに債務が残る」リスクがあります。具体的には、収納代行業者が破綻した場合、債務者は受取人から二重払いを求められる可能性があります。
(3) 該当する例・該当しない例
| ケース | 該当性 | 理由 |
| ① 支払時点で受取人への債務が消滅すると利用規約に明記 | × | 利用者保護上問題なし |
| ② 入金確認時に債務消滅 | × | 通常は問題なし |
| ③ 受取人着金時まで債務消滅しない | ○ | 利用者に二重払リスクあり |
| ④ 利用規約に債務消滅時期の記載なし | △ | 個別判断 |
(4) 実務対応
ア 利用規約に債務消滅時期を明示
イ 顧客に対する説明資料の整備
ウ 収納代行業者破綻時のリスク説明
エ 信託・分別管理等による顧客資金の保全
4 第2号 PF再委託リスク型(移動業府令第1条の3第2項第2号)
(1) 条文
「第1項第2号及び第3号に掲げる行為(エスクロー型・PF型)であって、委託その他これに類する方法により第1項第6号に掲げる行為を第三者に行わせるものに限り、それによって国外にある債務者等から国内にある受取人等へ向けて資金を移動させる行為のうち、当該第三者に第1項第6号に掲げる行為を適切に行うことができない事態が生じた場合に、受取人等への資金の円滑な引渡しが阻害されるおそれのある行為」
(2) 解説
国外から国内への資金移動において、エスクロー事業者やPF事業者が、実際の資金受入れ・引渡しを第三者に委託する場合に問題となります。
典型的な懸念事例:
【海外購入者】 → 【海外PF】 → 【海外PSP】 → 【国内販売者】
↑
PSPが破綻すると、
国内販売者は資金を受け取れない
(3) 事務ガイドラインの具体例
★事務ガイドラインⅠ-2-2-2(9)では、以下の具体例が示されています。
「取引プラットフォーム提供者が他の事業者に資金の受け入れ又は引き渡しを再委託する収納代行を行う場合において、当該取引プラットフォーム提供者が受取人等に対して負う責任を当該他の事業者の選任・監督に限定する場合は、第2項第2号に規定する行為に該当する」
→ PFがPSPからの不払いリスクを受取人に転嫁する契約構造は、適用除外の対象外
(4) 該当する例・該当しない例
| PFの責任構造 | 第2項第2号該当性 |
| ① PFが受取人に対して直接資金引渡しの責任を負う | × 該当せず(適用除外維持) |
| ② PFが選任・監督責任のみに責任限定 | ○ 該当(適用除外不可) |
| ③ PFがPSPの履行不能時に代替措置を講じる義務を負う | △ 個別判断 |
| ④ 受取人がPSPに対して直接引渡請求権を有する | △ 個別判断 |
(5) 実務対応
ア PFの利用規約・契約書において、PFの責任範囲を明確化
イ PFの選任・監督責任への限定条項を見直し
ウ PSP破綻時の代替送金ルート・保証等を整備
エ 分別管理・信託等による顧客資金の保全
5 第3号 賭博関連(移動業府令第1条の3第2項第3号)
(1) 条文
「賭博をする者又は他の者相互間で賭博を行わせる者が受取人である場合に、債務者等から弁済として賭金、勝金、入場料、手数料その他いかなる名称によるかを問わず支払われる当該賭博に係る資金を受け入れ、又は他の者に受け入れさせ、受取人等に当該資金を引き渡す行為」
(2) 解説 ― 名称を問わない包括規定
★重要な特徴:「その他いかなる名称によるかを問わず」と規定されており、名称による迂回を防止する設計になっています。
ここでいう「賭博」は、日本の刑法上の「賭博」を意味します(パブコメNo.108)。海外で合法でも、日本居住者向けに行われる場合は刑法上の賭博に該当する可能性があります。
(3) 該当する典型例
| 取引類型 | 該当性 |
| ① オンラインカジノへの賭金送金 | ○ |
| ② オンラインカジノからの勝金受取 | ○ |
| ③ スポーツベッティング | ○ |
| ④ カジノチップの購入代金 | ○ |
| ⑤ カジノ会員費・入場料 | ○ |
| ⑥ ベッティング手数料 | ○ |
| ⑦ ゲーム内ポイント購入(実質的な賭博) | ○ |
(4) 偽装の典型パターン(注意)
実務上、以下のような偽装が行われる可能性があります。
| 表面上の名目 | 実態 |
| ①「ゲーム内ポイント購入」 | 実際にはカジノ賭金 |
| ②「娯楽サービス利用料」 | 実際にはベッティング |
| ③「会員サービス料」 | 実際にはカジノ参加費 |
| ④「投資顧問料」 | 実際にはバイナリーオプション |
(5) 実務対応 ― 加盟店審査の徹底
ア 加盟店の事業内容の実質審査
イ MCC(Merchant Category Code)の確認
ウ 加盟店のウェブサイト・サービス内容の確認
エ 海外ライセンス取得状況の確認(日本向けサービスの可否)
オ 苦情・違反歴の確認
カ 制裁リスト・違法サイトリストとの照合
6 第4号 投資取引関連(移動業府令第1条の3第2項第4号)―実務上の最重要論点
(1) 条文
「受取人が有する金銭債権が、新たに発行される有価証券の取得を目的とする行為、有価証券の売買又はデリバティブ取引により発生したものである場合に、当該金銭債権に係る債務者等から弁済として資金を受け入れ、又は他の者に受け入れさせ、受取人等に当該資金を引き渡す行為」
ここでいう有価証券には、金融商品取引法第2条第1項に規定する有価証券のほか、同条第2項により有価証券とみなされる権利も含まれます。
(2) 該当する取引
| 取引類型 | 該当性 |
| ① 新規発行株式の取得代金 | ○ |
| ② 社債の取得代金 | ○ |
| ③ ファンド持分(投資信託受益権等)の取得代金 | ○ |
| ④ 集団投資スキーム持分の取得代金 | ○ |
| ⑤ トークン化証券(セキュリティトークン)の取得代金 | ○ |
| ⑥ 既発行有価証券の売買代金 | ○ |
| ⑦ FX取引(証拠金、追加証拠金) | ○ |
| ⑧ CFD取引 | ○ |
| ⑨ 先物・オプション取引 | ○ |
| ⑩ バイナリーオプション | ○ |
(3) デリバティブ取引のチャージの取扱い
★重要な区別(パブコメNo.113):
| 取引段階 | 第2項第4号該当性 |
| ① デリバティブ取引成立前の口座へのチャージ | × 第2条の2に規定する行為と異なる |
| ② デリバティブ取引の結果支払われる追加証拠金等の移動 | ○ 第2項第4号該当 |
(4) 実務上の最重要論点(パブコメNo.114)
★極めて重要:
ア 適法な金融商品取引業者向け
適法な金融商品取引業者のためのクロスボーダー収納代行は、資金移動業の登録を受ければ実施可能です。
イ 国外無登録金融商品取引業者向け
国外所在の無登録金融商品取引業者のためのクロスボーダー収納代行は、登録拒否要件(資金決済法第40条第1項第4号)に該当し、登録不可です(パブコメNo.114)。
→ 国外所在事業者の登録状況の確認が、業務受託の前提として極めて重要となります。
(5) リバース・ソリシテーション(非勧誘)の取扱い
パブコメで、完全な非勧誘取引(顧客自らの判断で海外事業者と取引)への規制適用の妥当性が問題提起されましたが、金融庁は規制適用を維持しています(パブコメNo.109)。
→ 「顧客の指示に基づき送金するだけ」という主張では適用除外を受けられません。
7 第5号 公序良俗違反類似(移動業府令第1条の3第2項第5号)
(1) 条文
「前二号に掲げる行為に類する行為であって、法令の規定又は公の秩序若しくは善良な風俗に反するもの」
(2) 解説 ― 受け皿規定
賭博関連・投資取引関連に類する違法・不当取引を広く適用除外から外す受け皿規定です。
(3) 該当しうる例
| 取引類型 | 該当性 |
| ① 詐欺的投資スキーム | ○ |
| ② 無登録暗号資産販売 | ○ |
| ③ 無登録電子決済手段販売 | ○ |
| ④ 違法な資金調達 | ○ |
| ⑤ マルチ商法・悪質商法 | ○ |
| ⑥ 偽ブランド品販売 | ○ |
| ⑦ 違法薬物販売 | ○ |
| ⑧ 制裁対象者との取引 | ○ |
| ⑨ 反社会的勢力関連取引 | ○ |
| ⑩ 片面的賭博(一方が勝敗を知っている賭博)(パブコメNo.115) | ○ |
| ⑪ 暗号資産売買で公序良俗違反のもの(パブコメNo.116) | ○ |
(4) 実務対応
ア 加盟店の事業内容の実質審査
イ 関係する許認可・登録の確認
ウ 苦情・違反歴・行政処分歴の確認
エ 反社会的勢力・制裁対象者との関係確認
オ 定期的なモニタリング
第6 13段階の判断表
1 完全判断表
| 段階 | 条文 | 確認内容 | 結論 |
| 1 | 資金決済法第2条の2第2号 | クロスボーダー収納代行に該当し得るか | 該当しなければ規制対象外 |
| 適用除外 | |||
| 2 | 府令第1条の3第1項第1号 | 銀行等経由型(為替取引としての受領) | 該当→適用除外候補 |
| 3 | 同項第2号 | エスクロー型 | 該当→適用除外候補 |
| 4 | 同項第3号 | PF型 | 該当→適用除外候補 |
| 5 | 同項第4号 | グループ内型 | 該当→適用除外候補 |
| 6 | 同項第5号 | カード・前払型 | 該当→適用除外候補 |
| 7 | 同項第6号 | PF再委託型 | 該当→適用除外候補 |
| 8 | 同項第7号 | 銀行等再委託型 | 該当→適用除外候補 |
| 適用除外の例外 | |||
| 9 | 同条第2項第1号 | 債務未消滅型 | 該当→適用除外不可 |
| 10 | 同項第2号 | PF再委託で資金引渡阻害リスクあり | 該当→適用除外不可 |
| 11 | 同項第3号 | 賭博・オンラインカジノ | 該当→適用除外不可 |
| 12 | 同項第4号 | 有価証券・デリバティブ | 該当→適用除外不可 |
| 13 | 同項第5号 | 法令違反・公序良俗違反類似 | 該当→適用除外不可 |
第7 典型的スキーム別判断例
1 ケース1:ECモール経由の海外向け販売
スキーム:国内消費者→国内PF(ECモール)→国内PSP→海外販売者
| 確認項目 | 該当性 |
| ① Step 1:クロスボーダー収納代行 | ○ |
| ② Step 2:PF型(第3号) | ○(PFが契約成立に不可欠な関与) |
| ③ Step 2:PF再委託型(第6号) | ○(PSPはPFから委託) |
| ④ Step 3:第2項各号 | × 該当せず |
| 結論 | 適用除外(為替取引規制適用なし) |
2 ケース2:海外オンラインカジノへの送金
スキーム:国内消費者→国内収納代行業者→海外カジノ事業者
| 確認項目 | 該当性 |
| ① Step 1:クロスボーダー収納代行 | ○ |
| ② Step 2:適用除外類型該当性 | △(仮にPF型としても) |
| ③ Step 3:第2項第3号(賭博) | ○ 該当 |
| 結論 | 適用除外不可(為替取引規制適用、賭博行為への関与の有無にかかわらず、無登録業者として取締りの対象) |
3 ケース3:海外FX業者への証拠金送金
スキーム:国内消費者→国内PSP→海外無登録FX業者
| 確認項目 | 該当性 |
| ① Step 1:クロスボーダー収納代行 | ○ |
| ② Step 2:適用除外類型該当性 | △ |
| ③ Step 3:第2項第4号(デリバティブ) | ○ 該当 |
| 結論 | 適用除外不可、かつ資金移動業登録も拒否(無登録金商業者向け) |
4 ケース4:海外加盟店向けクレジットカード決済
スキーム:国内消費者→国内アクワイアラー→海外加盟店
| 確認項目 | 該当性 |
| ① Step 1:クロスボーダー収納代行 | ○ |
| ② Step 2:カード加盟店型(第5号ロ) | ○ |
| ③ Step 3:第2項各号 | × 該当せず(通常の物販) |
| 結論 | 適用除外(為替取引規制適用なし) |
5 ケース5:多国籍企業のグループ内決済
スキーム:国内子会社→海外親会社(債権者)
| 確認項目 | 該当性 |
| ① Step 1:クロスボーダー収納代行 | ○ |
| ② Step 2:グループ内型(第4号) | ○ |
| ③ Step 3:第2項各号 | × 該当せず |
| 結論 | 適用除外(為替取引規制適用なし) |
6 ケース6:海外無登録暗号資産業者への送金
スキーム:国内消費者→国内PSP→海外無登録暗号資産業者
| 確認項目 | 該当性 |
| ① Step 1:クロスボーダー収納代行 | ○ |
| ② Step 2:適用除外類型該当性 | △ |
| ③ Step 3:第2項第5号(公序良俗違反類似) | ○ 該当 |
| 結論 | 適用除外不可 |
第8 経過措置と実務対応スケジュール
1 経過措置の概要
★重要:既存登録業者にも経過措置が適用されます(パブコメNo.130・131)。
| 措置 | 内容 |
| ① 施行日(2026年6月1日)から6か月以内(2026年11月30日まで)(改正法附則第2条第1項) | 銀行法・資金決済法の登録規制適用なく継続可能 |
| ② 施行日から6か月以内に変更登録申請 | 申請後、施行日から2年以内に登録を受けるまで継続可能 |
| ③ 既存第二種登録業者が第一種該当業務を営む場合(改正法附則第2条第2項) | 100万円超送金の有無問わず経過措置適用 |
2 既存契約への遡及適用なし
経過措置適用期間経過日以降の取引から、各種義務の履行が求められます。契約締結時に遡って実施する必要はありません。
| 義務 | 適用開始時期 |
| ① 資金決済法第41条第3項・第4項(変更届出) | 経過措置適用期間経過日から遅滞なく |
| ② 資金決済法第43条~第45条(履行保証金) | 経過措置適用期間経過日から |
| ③ 資金決済法第51条(情報提供等) | 経過措置適用期間経過日から(既存契約遡及なし) |
| ④ 資金決済法第52条(帳簿書類) | 経過措置適用期間経過日以降の取引について |
| ⑤ 犯収法第4条(取引時確認) | 経過措置適用期間経過日以降の契約について |
3 経過措置期間中の他法適用
経過措置期間中は、犯収法上の特定事業者の義務、国外送金等調書法・外為法上の資金移動業者の義務は課されません(パブコメNo.132)。
4 実務対応スケジュール
| 時期 | 対応事項 |
| ① 施行前 | スキーム棚卸し、適用除外該当性検討、契約書・利用規約見直し |
| ② 施行日 | 経過措置適用開始 |
| ③ 施行日~6か月 | 変更登録申請の検討・準備 |
| ④ 6か月以内 | 必要に応じて変更登録申請 |
| ⑤ 6か月~2年 | 経過措置適用、登録手続進行 |
| ⑥ 経過措置終了日 | 登録完了、各種義務の履行開始 |
第9 実務対応チェックリスト ― 完全版
1 全体俯瞰チェックリスト(プロジェクト管理用)
施行対応プロジェクトの進捗管理に活用してください。
(1) フェーズ1:現状把握(施行日まで)
□ 既存スキーム一覧表の作成(クロスボーダー要素のあるもの全て)
□ 各スキームの資金フロー図の作成
□ 各スキームの契約関係図の作成
□ 関与事業者(PF・PSP・収納代行業者・銀行等)の登録状況確認
□ 取引数量・金額の把握(過去1年分)
□ 既存顧客への影響範囲の特定
(2) フェーズ2:法的分析(施行日まで)
□ 各スキームの第1条の3第1項該当性検討(第1号~第7号)
□ 各スキームの第1条の3第2項該当性検討(第1号~第5号)
□ 海外事業者の登録・許認可状況の検証
□ 適用除外不可の場合の登録要否判断
□ 既存登録業者の場合:変更登録要否の判断
□ 法的意見書の作成(必要に応じて外部弁護士)
(3) フェーズ3:体制整備(施行日前~6か月後)
□ 契約書・利用規約の改訂(第10参照)
□ 加盟店審査基準の改訂
□ AML/CFT管理態勢の構築・強化
□ 利用者向け情報提供文書の整備
□ 内部規程・マニュアルの改訂
□ 社内研修の実施
□ システム改修(取引データ管理、100万円基準等)
□ モニタリング体制の構築
(4) フェーズ4:変更登録申請(施行後6か月以内)
□ 変更登録申請書の作成
□ 添付書類の準備(事業計画、内部管理体制、契約書類等)
□ 当局事前相談
□ 申請書の提出
□ 当局審査対応
(5) フェーズ5:登録後対応(経過措置期間中)
□ 履行保証金の供託・保全契約締結
□ 帳簿書類の作成体制構築
□ 犯収法対応(取引時確認、記録作成・保存、疑わしい取引届出)
□ 外為法対応(特定為替取引、支払報告)
□ 利用者保護措置(情報提供、受取証書、苦情処理)
□ 定期報告書の作成体制構築
2 スキーム別該当性チェックシート(個別スキーム分析用)
【記入例 / 各スキームごとに作成】
| No. | 確認項目 | 確認結果 | 根拠資料 | 備考 |
| A | スキーム概要 | |||
| A-1 | スキーム名 | |||
| A-2 | 開始時期 | |||
| A-3 | 月間取引件数・金額 | |||
| B | 関係当事者 | |||
| B-1 | 国内消費者(債務者)の属性 | |||
| B-2 | 受取人(加盟店等)の所在地 | |||
| B-3 | PFの所在地・登録状況 | |||
| B-4 | PSPの所在地・登録状況 | |||
| B-5 | 中間関与者の有無 | |||
| C | 資金フロー | |||
| C-1 | 国内→国外/国外→国内/国内完結 | |||
| C-2 | 資金受入口座の所在地 | |||
| C-3 | 資金引渡口座の所在地 | |||
| C-4 | 個別取引金額(最大・平均) | |||
| C-5 | 集約送金の有無・金額 | |||
| D | 契約関係 | |||
| D-1 | 受取人との契約の有無 | |||
| D-2 | 委託関係(誰から誰へ) | |||
| D-3 | 代理受領権の授与関係 | |||
| D-4 | 表明保証条項の有無 | |||
| E | 債務消滅時期 | |||
| E-1 | 利用規約上の債務消滅時期 | |||
| E-2 | 顧客への明示の有無 | |||
| E-3 | 二重払リスクの有無 |
【Step 1 判定】
| 項目 | Yes/No | 該当条文 |
| クロスボーダー収納代行に該当するか | 資金決済法第2条の2第2号 |
→ Noであれば終了(規制対象外)。Yesであれば次へ。
【Step 2 判定:適用除外該当性】
| 号 | 類型 | 該当性 | 根拠 |
| 第1号 | 銀行等経由型 | ○/×/△ | |
| 第2号 | エスクロー型 | ○/×/△ | |
| 第3号 | PF型 | ○/×/△ | |
| 第4号 | グループ内型 | ○/×/△ | |
| 第5号イ | 国際ブランド型 | ○/×/△ | |
| 第5号ロ | カード加盟店型 | ○/×/△ | |
| 第5号ハ | 前払式支払手段加盟店型 | ○/×/△ | |
| 第6号 | PF再委託型 | ○/×/△ | |
| 第7号 | 銀行等再委託型 | ○/×/△ |
→ いずれかが○であれば次へ。全て×であれば為替取引規制適用。
【Step 3 判定:適用除外の例外該当性】
| 号 | 類型 | 該当性 | 根拠 |
| 第1号 | 債務未消滅型 | ○/× | |
| 第2号 | PF再委託リスク型 | ○/× | |
| 第3号 | 賭博関連 | ○/× | |
| 第4号 | 投資取引関連 | ○/× | |
| 第5号 | 公序良俗違反類似 | ○/× |
→ 全て×であれば適用除外確定。いずれかが○であれば為替取引規制適用。
【最終結論】
| 結論 | □規制対象外 □適用除外 □為替取引規制適用 |
| 必要対応 | □なし □契約見直し □登録申請 □その他 |
| 検討者 | |
| 検討日 | |
| 上司確認 |
3 関係当事者ヒアリングシート
(1) 取引相手(受取人・加盟店)への確認事項
□ 受取人の正式商号・所在地
□ 受取人の事業内容(具体的に)
□ 受取人の各種許認可・登録の有無
□ 取扱商品・役務の具体的内容
□ 賭博・投資取引・公序良俗違反取引の不該当の確認
□ 制裁対象者・反社会的勢力との関係の不存在
□ 過去の苦情・違反歴・行政処分歴
□ 親会社・グループ会社との関係
(2) PFへの確認事項
□ 契約成立に不可欠な関与の具体的内容
□ 利用規約の内容(取引成立条件、注文確定フロー)
□ キャンセル・返品・返金ルール
□ 加盟店管理規程の有無・内容
□ PSP委託時の責任範囲
□ 受取人に対する直接の引渡義務の有無
□ 選任・監督責任への限定条項の有無
(3) PSPへの確認事項
□ PSPの正式商号・所在地
□ PSPの登録・許認可状況
□ 委託元PFの第3号要件充足状況の認識
□ 資金保全・分別管理の状況
□ 障害・破綻時の代替措置
□ AML/CFT管理態勢
□ 取引データ提供能力
(4) 銀行等・資金移動業者への確認事項
□ 資金受入れが為替取引としての受領か
□ 変更届出の提出状況
□ 業務委託管理の状況
□ AML/CFT管理態勢
4 契約書・利用規約の見直しチェックリスト
(1) PF利用規約
□ 取引成立条件が明記されているか
□ 注文確定フローが明記されているか
□ キャンセル・返品・返金ルールが明記されているか
□ 紛争対応の仕組みが明記されているか
□ PFの責任範囲が明記されているか
□ PFの責任が選任・監督に限定されていないか
□ 受取人に対する直接の引渡義務が明記されているか
□ 加盟店審査・管理規定が明記されているか
□ 禁止取引(賭博・投資・公序良俗違反)が明記されているか
□ 違反時の取引停止・解除条項があるか
(2) PSP契約
□ 受取人の特定・特定方法
□ 資金受入れの法的性質(代理受領権の授与等)
□ 資金保管・分別管理の義務
□ 資金引渡しの時期・方法
□ チャージバック対応
□ 障害・破綻時の対応
□ 表明保証条項(賭博・投資取引等の不該当)
□ 違反時の措置・契約解除事由
□ 監査権・情報提供義務
□ 監督官庁への報告協力義務
(3) 加盟店契約
□ 取扱可能商品・役務の特定
□ 禁止取引の明示(賭博・投資・公序良俗違反等)
□ 加盟店の許認可維持義務
□ 表明保証条項
□ AML/CFT遵守義務
□ 情報提供義務
□ 違反時の取引停止・解除条項
□ 損害賠償・補償条項
□ 制裁対象者・反社会的勢力排除条項
□ 監査受入義務
(4) 収納代行契約
□ 委託者・受取人・債務者の明確化
□ 委託の範囲(資金受入れ・引渡し・両方)
□ 代理受領権の授与・範囲
□ 債務消滅時期の明示
□ 資金引渡しの時期・方法
□ 取引データの管理・提供義務
□ 表明保証条項
□ AML/CFT遵守義務
□ 違反時の措置
□ 損害賠償・補償条項
(5) AML/CFT規程
□ 顧客等(受取人)の特定方法
□ 取引時確認の手続
□ ハイリスク取引・ハイリスク顧客の判定基準
□ 制裁リスト照合の手続
□ 加盟店審査の手続
□ 取引モニタリングの仕組み
□ 疑わしい取引の判定・届出フロー
□ 記録の作成・保存
□ 内部監査・コンプライアンス体制
□ 研修体制
5 AML/CFT管理態勢チェックリスト
(1) 顧客等の特定
□ 受取人の特定方法(本人特定事項の確認)
□ 受取人の実質的支配者の確認
□ 受取人の事業内容の確認
□ 取引目的の確認
□ 法人の場合の追加確認事項
(2) 制裁リスト等照合
□ 国連制裁リストとの照合
□ 米国OFAC制裁リストとの照合
□ EU制裁リストとの照合
□ 各国国内法に基づく制裁リストとの照合
□ 反社会的勢力データベースとの照合
□ 違法サイトリスト・問題加盟店リストとの照合
□ 債務者(送金人)に対する制裁リスト照合(パブコメNo.19)
(3) リスク評価
□ 顧客リスク評価(国・業種・取引形態別)
□ 商品・サービスのリスク評価
□ 取引チャネルのリスク評価
□ 地理的リスク評価
□ ハイリスク取引の判定基準
□ リスク評価結果の文書化
(4) 取引モニタリング
□ リアルタイムモニタリングの実施
□ 事後モニタリングの実施
□ 異常取引検知ルールの設定
□ アラート対応プロセス
□ シナリオの定期見直し
(5) 疑わしい取引の届出
□ 判定基準の明確化
□ 判定プロセスの整備
□ 届出フローの整備
□ 記録の保存
□ 担当者の指定・教育
(6) 記録の作成・保存
□ 確認記録の作成・保存(7年間)
□ 取引記録の作成・保存(7年間)
□ システム上の記録管理
□ 検索・抽出可能性の確保
(7) 内部管理態勢
□ 統括管理者の選任
□ 内部監査の実施
□ 経営陣への報告体制
□ 研修体制
□ 外部委託先の管理
6 システム対応チェックリスト
(1) 取引データ管理
□ 個別取引データの記録
□ 取引相手の特定情報の記録
□ 100万円基準の判定・記録
□ 集約送金の個別取引内訳の記録
□ 検索・抽出機能の整備
□ データ保存期間の管理(7年間)
(2) 国内/国外判定
□ 口座開設地の自動判定
□ 居住者/非居住者の判定
□ 電子決済手段管理主体の所在地判定
(3) 加盟店審査
□ 加盟店データベースの整備
□ 加盟店種別の管理
□ MCC(Merchant Category Code)の管理
□ 取扱商品・役務の管理
□ 制裁リスト照合の自動化
(4) アラート・モニタリング
□ アラート条件の設定
□ アラート対応ワークフロー
□ ダッシュボード機能
□ レポート出力機能
(5) 利用者保護関連
□ 情報提供文書の自動配信
□ 受取証書の自動発行
□ 苦情管理システム
7 外為法・国外送金等調書法対応チェックリスト
(1) 外為法対応
□ 特定為替取引(10万円超)の確認体制
□ 支払等の報告義務(30万円超)の対応
□ 本人確認義務の対応
□ 関連書類の作成・保存
□ 財務省への報告体制
(2) 国外送金等調書法対応
□ 国外送金等調書の作成体制
□ 100万円超の国外送金の管理
□ 顧客告知書の交付
□ 税務署への提出
8 経過措置適用チェックリスト
(1) 経過措置適用の前提確認
□ 改正法施行日時点で対象行為を業として営んでいるか
□ 既存登録業者の場合の経過措置適用範囲の確認
□ 第二種から第一種への変更が必要か
(2) 経過措置期間中の対応
□ 6か月以内の変更登録申請の準備
□ 経過措置期間中の業務継続体制
□ 顧客への通知の要否
□ 既存契約の取扱い
(3) 経過措置終了に向けた対応
□ 登録完了の見込み確認
□ 履行保証金の準備
□ 各種義務の履行開始準備
□ 不要となった業務の整理
9 社内体制構築チェックリスト
(1) 組織体制
□ コンプライアンス担当役員の指名
□ 法務・コンプライアンス部門の体制強化
□ AML/CFT統括責任者の指名
□ 各部門の役割分担の明確化
(2) 規程整備
□ 業務規程の改訂
□ AML/CFT規程の整備
□ 加盟店審査規程の整備
□ 顧客保護規程の整備
□ 内部監査規程の整備
(3) 研修・教育
□ 経営陣向け研修
□ 営業部門向け研修
□ コンプライアンス部門向け研修
□ 一般従業員向け研修
□ 定期研修の計画
(4) 内部監査
□ 監査計画の策定
□ 監査基準の整備
□ 監査結果の報告体制
□ 改善措置のフォロー
10 最終確認チェックリスト(経営層・コンプライアンス責任者用)
施行対応の最終確認用として、以下のすべてに「○」が付くことを目指します。
(1) 法令遵守の確認
□ 全スキームについて第1条の3第1項・第2項の検討完了
□ 適用除外不可の場合の対応方針決定
□ 必要な登録・許認可の取得計画策定
□ 外部弁護士による法的意見書取得(重要案件)
(2) 体制整備の確認
□ 契約書・利用規約の改訂完了
□ AML/CFT管理態勢構築完了
□ システム改修完了
□ 内部規程・マニュアル整備完了
□ 全従業員への研修完了
(3) リスク管理の確認
□ 高リスク取引の特定・対応方針決定
□ 海外事業者の登録状況確認完了
□ 制裁対象者・反社排除体制構築完了
□ モニタリング体制構築完了
(4) 経営判断の確認
□ 全スキームについて経営層への報告完了
□ 撤退・縮小判断が必要な業務の決定
□ 経過措置の活用方針決定
□ 損益への影響評価完了
(5) 対外対応の確認
□ 主要顧客への影響説明完了
□ 取引先への通知・契約改訂依頼完了
□ 当局への事前相談実施
□ パブリックコメント等への対応完了
第10 契約条項例
1 適用除外該当性に関する表明保証条項
第○条 適用除外該当性に関する表明保証
(1) 委託者は、当社に対し、本件取引及び本件収納代行業務が、移動業府令第1条の3第1項各号のうち、当社が別途確認する号に該当することを確認するために必要な情報及び資料を、正確かつ完全に提供するものとする。
(2) 委託者は、当社に対し、本件取引及び本件収納代行業務について、以下の各号の事項を表明し、保証する。
ア 本件取引が、賭博、オンラインカジノその他これらに類する取引に該当しないこと。
イ 本件取引に係る金銭債権が、新たに発行される有価証券の取得、有価証券の売買又はデリバティブ取引により発生したものではないこと。
ウ 本件取引が、法令の規定又は公の秩序若しくは善良な風俗に反するものではないこと。
エ 本件取引について、利用者の保護に欠けるおそれが大きい行為に該当する事情が存在しないこと。
オ 委託者、受取人、加盟店、PF、PSPその他本件取引の関係者が、必要な許認可、登録、ライセンスその他法令上必要な資格を有し、これを維持していること。
(3) 委託者は、前項各号に関する事情に変更が生じ、又はそのおそれがある場合、直ちに当社に通知しなければならない。
2 PF型適用除外に関する確認条項
第○条 PF型適用除外に関する確認
(1) 委託者が取引プラットフォーム提供者である場合、委託者は、当社に対し、自己が単なる広告、顧客紹介、送客又は決済方法の提供にとどまらず、本件取引に係る契約の成立に不可欠な関与を行っていることを表明し、保証する。
(2) 委託者は、前項の関与を確認するため、当社の求めに応じて、利用規約、取引成立条件、注文確定フロー、キャンセル・返金ルール、加盟店管理規程、取引画面その他当社が合理的に必要と認める資料を提供するものとする。
3 エスクロー型適用除外に関する確認条項
第○条 エスクロー型適用除外に関する確認
(1) 委託者がエスクロー型の収納代行を行う場合、委託者は、当社に対し、本件収納代行業務が、受取人による反対給付に先立って又はこれと同時に資金を受け入れ、当該反対給付が行われた後に受取人等に当該資金を引き渡すものであることを表明し、保証する。
(2) 委託者は、当社の求めに応じて、反対給付の内容、履行確認方法、検収条件、キャンセル・返金ルール、資金引渡条件その他当社が合理的に必要と認める資料を提供するものとする。
4 適用除外の例外に該当する取引の禁止条項
第○条 適用除外の例外に該当する取引の禁止
委託者は、本件収納代行業務を、以下の各号に掲げる取引に利用してはならない。
ア 賭博、オンラインカジノ、スポーツベッティングその他これらに類する取引。
イ 新たに発行される有価証券の取得、有価証券の売買、デリバティブ取引、FX、CFD、バイナリーオプションその他投資性又は投機性の高い金融取引。
ウ 無登録の金融商品取引業、暗号資産交換業、電子決済手段等取引業その他法令上必要な登録又は許認可を欠く取引。
エ 詐欺的商法、マルチ商法、悪質商法、消費者被害を生じさせるおそれのある取引。
オ 制裁対象者、反社会的勢力、テロリスト、マネー・ローンダリング又はテロ資金供与に関与する者との取引。
カ その他法令の規定又は公の秩序若しくは善良な風俗に反する取引。
第11 まとめ ― 実務上の重要ポイント
1 適用除外は「入口」にすぎない
★第一の重要ポイントは、移動業府令第1条の3第1項各号は、適用除外の入口にすぎないということです。銀行等経由型、エスクロー型、PF型、グループ内型、カード・前払型、PF再委託型、銀行等再委託型のいずれかに該当する場合でも、それだけで安全とはいえません。
2 第2項に該当すると適用除外は使えない
★第二の重要ポイントは、同条第2項各号に該当すると、適用除外は使えないということです。
特に、以下の取引は形式的にPF型・カード加盟店型のスキームをとっていても、適用除外から外れる可能性が高い領域です。
(1) オンラインカジノ・賭博関連
(2) 投資・金融商品関連(特にFX・CFD・バイナリー)
(3) 無登録の金融商品取引業者・暗号資産業者向け取引
(4) 公序良俗違反取引
3 契約と運用の両方で説明可能性を確保
★第三の重要ポイントは、契約と運用の両方で説明可能性を確保することです。
PF・PSP・収納代行業者は、以下を文書化し、必要に応じて当局・金融機関・提携先に説明できる体制を整えるべきです。
(1) 資金フロー
(2) 契約フロー
(3) 債務消滅時期
(4) 適用除外該当性
(5) 適用除外の例外非該当性
(6) AML/CFT対応
4 国外事業者の登録状況確認の重要性
★第四の重要ポイントは、国外事業者の登録状況確認です。
特に金融商品取引業に関連するクロスボーダー収納代行では、国外所在事業者の登録状況確認が、業務受託の前提として極めて重要です。無登録の金融商品取引業者のためのクロスボーダー収納代行は、資金移動業者の登録申請も拒否される可能性が高いことに留意が必要です。
5 表明保証だけでは足りない
★第五の重要ポイントは、表明保証だけでは足りないということです。
金融庁は一貫して「特定の確認方法を実施したことをもって判断されるものではなく、客観的な事実に基づき判断される」と回答しており、表明保証を受けるだけでは適用除外該当性は確定的に判断されません。実態資料による確認と継続的なモニタリングが必要です。
おわりに
当事務所では、本改正に係るスキーム検討、契約書レビュー、変更登録申請の支援、AML/CFT管理態勢の整備支援等について、ご相談を承っております。
本ニュースレターが、貴社の実務対応の一助となれば幸いです。
弁護士法人三宅法律事務所 弁護士 渡邉雅之
本ニュースレターは2026年5月時点の情報に基づき作成されたものであり、個別の事案に対する法的助言を行うものではありません。個別事案については、別途ご相談ください。
[1] https://www.fsa.go.jp/news/r7/sonota/20260522/20260522.html
[2] https://www.fsa.go.jp/news/r7/sonota/20260522/04.pdf
[3] https://www.fsa.go.jp/news/r7/sonota/20260522/24.pdf
[4] https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20250122.html