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新型コロナで業績悪化、整理解雇は認められるのか?

2021/11/19

(執筆者:弁護士 八木康友)
【Q.】
当社は、新型コロナウイルスの感染拡大のあおりを受けて業績が悪化する中、ついに従業員のリストラ(整理解雇)を検討せざるを得ない状況となりました。実際に行った場合に、このような解雇は認められるのでしょうか。また、その際に気をつけるべき点について教えてください。
【A.】

1.はじめに
世界的な新型コロナウイルスの感染拡大から1年半以上が経過していますが、今なおその終息の見通しが立っておらず、一部の事業者では、事業の合理化という観点から、従業員の整理解雇を検討することもあるかと思います。
そこで今回は、整理解雇の有効性の判断枠組みについて整理し、コロナ禍における業務縮小を理由として整理解雇を行った事案に触れつつ、整理解雇の実施にかかる注意点について、ご説明します。
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2.整理解雇の有効性の判断枠組みについて
まず「整理解雇」とは、経営上必要とされる人員削減を理由として行う解雇を指します。その有効性については、その他の理由に基づいて行う解雇と同様に、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」(労働契約法第16条)とされています(以下「解雇権濫用法理」)。
そして、整理解雇が「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない」か否かについては、裁判例上、①人員削減の必要性、②人員削減の手段として整理解雇を選択することの必要性(解雇回避努力)、③被解雇者の選定の合理性、④手続きの相当性という4要素についての総合的な考慮のもと判断されています。
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3.コロナ禍における業務縮小を理由に整理解雇を行った事案について
近時においては、コロナ禍における業務縮小を理由として整理解雇が行われた事案(福岡地決令和3年3月9日・労判1244号31頁)において、被解雇者と会社との間で、その整理解雇が解雇権濫用法理に反し無効であるか否かが争われました。
本事案の決定では、基本的に前述の2に記載の判断枠組みに沿って、①人員削減の必要性、④手続きの相当性、③被解雇者の選定の合理性が検討され、最終的に、本件での整理解雇については、解雇権濫用法理に反し無効であると判断されました。
ただし、本決定では、新型コロナウイルス感染拡大の影響による会社の事業遂行状況の悪化及び売上額の減少、従業員の社会保険料の負担額、補助金の支給状況の不透明性などの考慮のもと、①人員削減の必要性が一応認められており、主に、④手続きの相当性を欠く、③被解雇者の選定の合理性を認め難いという観点から、本件での整理解雇が解雇権濫用法理に反するものと判断されています。
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4.コロナ禍における整理解雇実施にかかる注意点
上記3の事案を見てもわかるとおり、コロナ禍において整理解雇を行う場合には、基本的に2に記載の判断枠組みに沿って、その有効性が判断されることになります。この点、コロナ禍における業務縮小は、①人員削減の必要性を認める一事情となりえるものの、そのほかの3要素については、その他の理由によって整理解雇する場合と同様の検討を要するという点において注意が必要です。
具体的には、新型コロナウイルス感染拡大による事業・売上への影響、行政機関等からの補助金の支給状況などに鑑み、人員削減の必要性があるといえるか否か(①の観点)、配転・出向・一時帰休・役員報酬の減額・希望退職者の募集などの措置によって解雇を回避できないか否か(②の観点)、解雇対象者の選定について客観的でかつ合理的な基準を公正に適用して行っているか否か(③の観点)、解雇回避の努力を行った上で、解雇の必要性・規模・方法・人選基準等について従業員に説明し、解雇に関して労働組合や労働者と十分に協議するなど解雇を適切な手続きのもと行っているか否か(④の観点)を検討することになります。
このように、整理解雇の有効性判断については、具体的事情を踏まえた総合的な検討を要するため、整理解雇を実施せざるを得ない場合には、必要に応じて専門家に相談するなど、無効な解雇とならないように注意しましょう。

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