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『経営者なら知っておきたい「管理職」と残業手当』

2008/06/01

(執筆者:弁護士 井上響太)
【Q.】「管理職」の定義とは?
先日、大手ファストフードチェーンの店長が、「『管理職』扱いにすることで時間外手当を支払わないのは違法だ」として、会社に未払い残業代や慰謝料などの支払いを求めた訴訟がありました。
そもそも、「管理職」とはなんでしょうか? その基準がありましたら、教えてください。
【A.】
1.はじめに
ご質問の通り、平成20年1月28日、上記の訴訟で東京地方裁判所は、被告に約755万円の支払いを命じました。本判決は、「被告における店長は、その職務の内容、権限及び責任の観点からしても、その待遇の観点からしても、管理監督者に当たるとは認められない」と判断したものです。
被告は、本判決を不服とし控訴したものの、本判決はファストフード業界を超えて広い範囲に影響を与えるとの報道もなされており、社会的にも大きな関心が集まっています。
2.管理職と管理監督者
★管理職と管理監督者は別物
一般に「管理職」といわれますが、労働基準法では、「事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者」(以下「管理監督者」)と規定されており(労働基準法41条2号)、「管理職」と「管理監督者」は全く別のものです。
管理監督者には、労働基準法上の労働時間等に関する労働者保護の規定はほぼ適用されません。企業では、部長・課長などを管理職とし、管理監督者にあたるとし、時間外勤務手当等を支給せず、代わりに、管理職手当等を支給することが多いようです。
★管理職=管理監督者?
では、いわゆる「管理職」は労働基準法の「管理監督者」にあたるのでしょうか。
まず、役職名は重要ではないことに注意してください。同じ役職名であっても、会社によって、部下の人数、職務権限、待遇等が大きく異なるからです。
そこで、管理監督者に当たるかどうかは、会社ごとに、具体的な権限や仕事の内容に即して判断することになります。これまでの裁判例でも、厚生労働省通達の解釈に沿った形で、管理監督者とは、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的立場にある者をいい、名称にとらわれず、実態に即して判断すべきなどとしています。
3.判決の内容
今回の判決で、概略、管理監督者とは、経営者との一体的な立場において、労働基準法の定める労働時間等の枠を超えて事業活動をすることを要請されてもやむを得ないといえる重要な職務と権限を付与され、また、賃金等の待遇やその勤務態様において、他の一般的労働者に比べて優遇措置が取られており、当該労働者の保護に欠けるところがないといえる立場にある者とされています。
しかしながら、被告における店長は、
�@店舗の責任者として、アルバイトの採用の決定など店舗運営において重要な職責を負ってはいるものの、店長の職務権限は店舗内の事項に限定され、経営者との一体的な立場にあるとはいえないこと
�A形式的には労働時間に裁量があるものの、実際には、店長自らシフトマネージャーとして勤務せざるを得ず、労働時間の自由裁量がないこと
�B管理監督者として扱われている店長が、そうではないファーストアシスタントマネージャーに比べて、必ずしも賃金等が優遇されているとはいえないこと
などを理由に、管理監督者にはあたらないと判断しています。
4.おわりに
本判決は、店長に一定の職務権限及び優遇措置が与えられていることは認めつつも、管理監督者というには、なお不十分だと判断した点で、注目すべき判決と思われます。
さらに厚生労働省は、全国の労働局に、本件のような「名ばかり管理職」の問題について企業に対する監督を徹底するよう通達しており、「管理職」をおく一般企業においても、控訴審の動向を注目する必要があります。
(以上)

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