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『競業避止義務契約の有効性』

2013/09/20

(執筆者:弁護士 西堀祐也)

【Q.】
当社は、従業員との間で退職後の競業避止義務契約を締結していますが、裁判ではその契約が無効とされる場合もあると聞きます。契約が有効となるためのポイントを教えてもらえないでしょうか。_

【A.】
1.はじめに
企業が保有している顧客や技術等の情報を退職者により競業に利用されてしまうと、企業活動に大きな影響を受けます。そのため、企業の利益を守る手段として、従業員との間で退職後の競業避止義務契約を締結することが広く行われています。
一方で、競業避止義務契約は、憲法で保障された職業選択の自由を制限する側面を有するため、過度に制限的な契約は、裁判において、公序良俗違反として無効(民法90条)と判断される場合があります。そこで、契約の締結に当たっては、その有効性を判断した裁判例の傾向を知ることが重要です。
この点、経済産業省は、有識者による委員会において取りまとめた報告書(平成24年度「人材を通じた技術流出に関する調査研究」)をもとに、平成25年8月16日に営業秘密管理指針を改定し、競業避止義務契約の有効性判断のポイントを示しました(同指針58頁以下)。そこで、本稿ではこれを取り上げ、概要を説明します。
※詳しくは、経済産業省HPをご参照ください。
http://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/trade-secret.html

2.有効性判断のポイント
同指針では、裁判例において、競業避止義務契約の有効性につき、�@守るべき企業の利益があることを前提として、契約内容が目的に照らして合理的範囲内にとどまっているかどうかの観点から、�A従業者の地位、�B地域的な限定の有無、�C競業避止義務の存続期間、�D禁止される競業行為の範囲、�E代償措置の有無の項目を考慮して判断されている、と指摘しています。
このうち、「�@守るべき企業の利益」については、不正競争防止法上の要件を満たす営業秘密に限定はされないものの、包括的ではなく具体的に存在していることが必要であり、「�A従業者の地位」については、形式的な職位ではなく、具体的な業務内容の重要性、特に使用者が守るべき利益との関係が判断されていると指摘しています。
また、「�B地域的な限定」については、使用者の事業内容や職業選択の自由に対する制約の程度、特に禁止行為の範囲との関係を意識した裁判例が見られ、地域的制限がないことのみをもって有効性が否定されているわけではないこと、また、「�C存続期間」については、あくまで労働者の不利益の程度、業種の特徴等との関係で判断されますが、1年以内の期間は肯定的に捉えられているものの、近年は2年の期間について否定的に捉えている裁判例が見られることを指摘しています。
さらに、「�D禁止行為の範囲」については、競業企業への転職を一般的・抽象的に禁止するだけでは合理性が認められないことが多いのに対し、業務内容や従事する職種等が限定されている場合には、肯定的に捉えられていると指摘しています。
最後に、「�E代償措置」については、代償措置と呼べるものが何もない場合には有効性を否定されることが多いと指摘しています。
なお、今回の改定により追加された同指針の参考資料6では、上記の項目ごとに裁判例の要旨が整理されており、詳細を知るうえで参考となります。

3.おわりに
同指針が指摘したポイントは、近時の裁判例の傾向を整理したもので、契約の締結に当たり参考となるものです。もっとも、一定の傾向はあるとしても、裁判例の判断は個別の事案についてのものですので、貴社の場合にどのような規定であれば契約が有効となるかに関しては、貴社の実情に即した具体的な検討が必要です。_

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