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『債務不履行時の対応 〜 債権譲渡担保・集合動産譲渡担保の実行 〜』

2008/10/01

(執筆者:弁護士 竹田千穂)
【Q.】回収実行時のポイントは?
弊社(A社)は機械部品を製造販売しています。ある販売先(B社)に信用不安があり、�@B社がその販売先(C社)に対して将来有することになる売掛債権(Y)につき、将来債権譲渡担保契約を締結するとともに、�AB社が倉庫に保管している在庫商品につき、集合動産譲渡担保契約を締結しています。
今般、売掛金(X)が期限までに支払われなかったので、上記各担保から回収したいのですが、実行時の留意点を教えてください。
【A.】
1.はじめに
B社が売掛金(X)を期限までに支払わない場合、連帯保証人等による任意の弁済や貴社のB社に対する債務との相殺等も考えられますが、今回は上記担保を実行して売掛金(X)を回収する方法を解説します。
2.将来債権譲渡担保実行時の留意点
譲渡担保の実行方法は設定契約で自由に定められますが、通常、債権譲渡担保設定契約には、債務者(B社)が債務不履行等に陥った場合には、債権者(A社)が債務者から譲り受けた第三債務者(C社)に対する売掛金債権(Y)をC社から直接取り立てて自己の債権(X)に充当できる旨、定めています。
したがって貴社は、B社が債務不履行等に陥った場合には、C社から売掛金(Y)全額を取り立てて自己の売掛金債権(X)に充当し、残余はB社に返還し、不足すればさらに請求することになります。
なお、貴社は自らがC社に対する売掛金(Y)の債権者となるので、C社に対する売掛金債権(Y)の弁済期さえ到来すれば、その全額を取り立てることができます(ただし自己の売掛金債権(X)の弁済期が到来するまでは、これに充当はできません)。
もっとも前回*1説明したとおり、当該債権譲渡が債権譲渡登記ファイルに登記されている場合には、貴社はC社に対し、登記事項証明書を交付して通知する必要があります。
一方、C社が売掛金(Y)の取り立てに応じないときは、貴社は当該売掛金債権(Y)について支払命令を申し立てる、請求訴訟を提起する等の方法により、それらの債務名義に基づきC社の一般財産に対する強制執行を検討する必要があります。
3.集合動産譲渡担保実行時の留意点
通常、集合動産譲渡担保設定契約には、債権者(A社)が適当と認める方法、時期及び価格等によって評価または処分できる旨、定めています。
したがって貴社は、B社が債務不履行等に陥った場合、まずB社に対して譲渡担保権実行を通知し、保管場所に目的物を引き上げに行きます。B社が任意に引き上げに応じた場合には、貴社は目的物を適正な方法で評価(帰属清算方式)または第三者に処分して換価(処分清算方式)し、その金額または代金を自己の売掛金(X)に充当し、残余はB社に返還し、不足すればさらに請求することになります。
なお前々回*2も説明したとおり、B社に無断で倉庫から目的物を引き上げたりすると、住居侵入罪や窃盗罪が成立しえますので、管理者の承諾が必要です。
一方、B社が引き上げに応じない場合や、二重担保設定等により他の債権者から仮処分・差押・仮差押手続が申し立てられ、引き上げられない場合等には、貴社は目的物について引渡請求の訴訟を提起しなければなりません。この場合、判決まで担保権を保全するため、目的物について占有移転禁止又は処分禁止の仮処分の申し立てを検討する必要がありますが、安心できない場合には、引き渡し断行の仮処分を申し立て、貴社のもとへの引き上げも検討する必要があります。
4.最後に
日頃から確実に担保が実行できるように、�@については、担保債権であるC社に対する売掛金(Y)の存在や弁済期、第三債務者(C社)の支払能力の有無等を、�Aについては、目的物の対抗要件の具備、公示の有無等を確認しておくことも有用です。
*1「在庫商品を担保に取る方法」:当事務所ホームページ法律判例情報 2008/9掲載。
*2「将来債権を担保に取る方法について」:当事務所ホームページ法律判例情報 2008/8掲載。
(以上)

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