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『中小企業経営者が裁判員に選ばれたら』

2009/05/01

(執筆者:弁護士 雑賀裕子)
【Q.】裁判員に選ばれましたが……
私は従業員5人の会社の社長です。昨年末、「裁判員候補者名簿への記載のお知らせ」という通知を受け取りましたが、この不況下で会社の経営が苦しく、裁判員になることを辞退したいのですが、可能でしょうか?
【A.】
1.裁判員選任までの流れ
平成21年5月21日に裁判員制度がスタートします。名簿記載通知が届き、どう対応してよいのか不安に感じている方もいらっしゃるかもしれません。そこで、まず裁判員選任までの手続についてご説明します。
前年の12月頃までに、裁判員候補者名簿への記載を通知する書面が届きます。その際、
�@就職禁止事由の有無(自衛官、警察職員など)
�A1年を通じての辞退希望の有無・理由(70歳以上、過去5年以内の裁判員経験者、重い疾病・傷害など)
�B月の大半にわたって裁判員となることが特に困難な特定の月がある場合、その特定の月における辞退希望の有無・理由(株主総会の開催月、農産物の収穫・出荷時期など)
などをたずねる調査票も一緒に送付されますので、辞退希望の方はその旨を回答することになります。なお、�Bが認められた場合、当該特定の月に行われる事件については、候補者に選任されることはありません。
この調査で辞退等が認められなかった方の中から、事件ごとにくじで裁判員候補者が選ばれます。原則として個々の裁判の6週間前までに「裁判員等選任手続期日のお知らせ」(呼出状)が送付されます。その際にも、
�@重い疾病・傷害により裁判所に出頭することが困難である
�A介護または養育が行われなければ日常生活を営むのに支障がある同居の親族がいる
�B仕事における重要な用務があって、自らがこれを処理しなければ著しい損害が生じるおそれがある
などに該当する辞退希望の有無・理由をたずねる質問票も一緒に送付されますので、辞退希望者はその旨、回答することになります。
辞退を希望しなかったり、質問票の記載のみからは辞退が認められなかった方は、選任手続期日に裁判所に行くことになります。選任手続では、裁判長から、辞退希望の有無・理由などの質問が行われます。この時点で辞退が認められると、候補者から除外されます。通常であれば、午前中に裁判員が選任され、午後から裁判の審理が始まります。
2.仕事を理由とする辞退の申立
このように、裁判員選任までの間、辞退の希望を表明する機会が数度にわたり設けられています。しかし、裁判員制度は広く国民が参加することを目的とした制度ですので、原則として仕事があるからという理由のみでは辞退は認められず、法律上、「その従事する事業における重要な用務であって自らがこれを処理しなければ当該事業に著しい損害が生じるおそれがあるものがある」(裁判員の参加する刑事裁判に関する法律16条8号ハ)場合に限って、仕事を理由とする辞退の申立ができるとされています。
辞退可否の判断として、最高裁判所のHP(http://www.saibanin.courts.go.jp/)では、
�@裁判員として職務に従事する期間(期間が長いほど仕事への影響が大きい)
�A事業所の規模(規模が小さいほど仕事への影響が大きい)
�B担当職務の代替性(代替性が低いほど仕事への影響が大きい)
�C予定される仕事の日時を変更できる可能性(裁判員として職務に従事する予定期間に、日時変更の困難な業務がある場合には、仕事への影響が大きい)
などの観点から、総合的に判断されると紹介されています。また、仕事の関係で「自己又は第三者に経済上の重大な不利益が生ずると認めるに足りる相当な理由がある」場合にも辞退が認められるとされています。
従って、会社の経営が苦しいという理由がある場合も、現在の経営状態や、社長自身が会社を休むことでどのくらいの不利益が生じるかなど、個別具体的な事情を総合勘案して辞退の可否が判断されることになるでしょう。
(以上)

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