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『ホームページに潜む著作権侵害』

2009/04/20

(執筆者:弁護士 川畑真治)
【Q.】_著作権侵害といわれましたが……
_
弊社(A社)は中古車販売の会社です。先日B社から、弊社ホームページがB社の著作権を侵害しているため、侵害部分の削除と損害賠償を支払えという内容証明郵便が届きました。弊社の担当者に確認したところ、B社ホームページに掲載してある写真をコピーして掲載した、とのことです。しかし、写真は停車している車を広告用に撮ったものであり、著作権侵害といわれてもピンときませんこれは、著作権侵害にあたるのでしょうか。(写真は、晴れた日に車体を左斜め前から写したものであり、影が写っていないことから順光であると思われます)。
【A.】
_1.はじめに
インターネットが普及し、多くの企業がホームページを作成しています。しかしホームページ作成の際、著作権侵害の危険性について意識されることは少なく、ご質問のような事例がたびたび問題となっています。そこで今回は、ホームページに潜む著作権侵害について解説します。
2.著作物、著作権とは
思想または感情を創作的に表現したものが文芸、学術、美術または音楽の範囲に属するものである場合、これら創作物は「著作物」にあたり著作権が発生します。そして「著作権」とは、著作者の財産的利益を保護することを目的として、著作物を複製する権利(複製権)や著作物を公衆送信する権利(公衆送信権)など、その著作物の利用を著作者に独占させる権利です。
3.写真の著作物性について
裁判例によると、写真が著作物に該当するためには、被写体の選択・設定、構図の決定、シャッターチャンスの補足、光量の調整等により、思想または感情を創作的に表現していることが必要です(東京地判平11・3・26 判時1694号142頁参照)。
たとえば、絵画を再現するだけの写真には著作物性が認められません。撮影対象が平面なので撮影位置を選択する余地がなく、あくまで再現であって独自に表現するものではないからです(東京地判平10・11・30 判タ994号358頁参照)。また、自動撮影される証明用写真なども著作物性が認められません。
一方、素人が撮った写真であることは、著作物性の妨げとはなりません(仙台高判平9・1・30 判タ976号215頁参照)。広告用の写真であっても、被写体の組み合わせ・配置、構図・カメラアングル、光線・陰影、背景などにそれなりの独自性が表れていれば著作物性が認められ、創作性の程度が低くても、当該写真をそのままコピーして利用した場合には著作権侵害になるとされます(知財高判平18・3・29 判タ1234号295頁参照)。
4.ご質問について
以上の前提で、本件写真は、晴れた日に順光となるよう車を配置し、撮影位置を選択した上で車体を左斜め前から写しているのであり、撮影位置の選択、被写体の配置、光線・陰影等にそれなりの独自性が表れているといえます。よって、著作物性が認められ、これをそのままコピーしてホームページに使用しているA社は、B社の著作権(複製権、公衆送信権)を侵害しているといえるでしょう。
5.著作権を侵害すると
A社のように、会社ホームページに著作権侵害がある場合、民事上の損害賠償請求のみならず、侵害行為である著作物のホームページへの掲載の停止(差止請求)を求められるおそれがあります(民法第709条、著作権法第112条)。また、故意に著作権侵害がなされた場合には、行為者及び会社に刑事罰が科されるおそれもあり(著作権法第119条ないし第124条)、会社経営にとって、そのリスクは無視できません。
ホームページに掲載されている写真、文章は誰が作成したものか、どこから引用したのかを調査して、著作権侵害がないかを改めて確認する必要があります。具体的判断に際しては、社団法人著作権情報センターのホームページ(http://www.cric.or.jp/qa/qa.html)を参考にしてください。
(以上)

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