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法令違反の防止や早期発見にもつながる公益通報者保護法の改正

2026/01/13

(執筆者:弁護士 水関莉子)

【Q.】
今年の6月に改正公益通報者保護法が公布されたと聞きましたが、この改正によって何が変わるのでしょうか。また、中小企業も対応の必要があるのでしょうか。

【A.】
1.はじめに
公益通報者保護法は、公益通報を通じて事業者の不祥事を早期に発見し、または未然に防ぐために、通報者の保護の内容等を定めた法律です。
同法は、令和4年に大幅な改正がなされ、一定規模以上(従業員の数が300人超)の事業者に対して内部通報窓口の設置や公益通報に対応する従業者の指定を含む体制の整備が義務付けられたほか、保護対象となる通報者や通報対象事実の範囲拡大や通報を理由とする不利益な取扱いの禁止といった通報者保護の強化が図られました。
しかし、消費者庁等の調査によると、令和4年の改正後も内部通報窓口を設置していない企業が一定数あり、また窓口を設置している企業でも十分に活用がなされていない実態が明らかとなりました。
このような実態を踏まえ、公益通報を理由とする不利益な取扱いの禁止などの抑止力の強化や、通報者が安心できる環境整備をさらに図るため、今回の法改正に至ったものです。改正法の施行は、公布日(令和7年6月11日)から1年6カ月以内で、政令で別途定める日とされており、令和8年中の施行が見込まれます。

2.改正公益通報者保護法の概要
公益通報者保護法によって保護される「公益通報」とは、労働者等が、不正の目的でなく、法定の通報受付先に対して行った通報であって、その内容が法定の通報対象事実(法令違反等)に該当するものをいいます。
今回の改正によって、通報者の範囲が拡大され、現行法下の労働者や派遣労働者、退職後1年以内の者、役員等に加えて、事業者と業務委託関係にあるフリーランス、及び業務委託関係が終了して1年以内のフリーランスが追加されました。また、通報を理由とする不利益な取扱いの抑止を強化すべく、通報を理由として懲戒または解雇を行った者に対する罰則規定が設けられました。
そのほかにも、公益通報者保護制度の強化を目的とする変更点がありますので、詳細は消費者庁のホームページ(※1)をご確認ください。

※1 https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_partnerships/whisleblower_protection_system/overview/

3.中小企業に求められる対応
(1)社内規程の見直し
令和6年に実施された消費者庁の調査(※2)によると、従業員数が300人以下の事業所のうち46.9%が内部通報制度を「導入している」と回答しています。従業員数が300人以下の事業所において内部通報体制の整備は「努力義務」とされており、義務付けられていない中小企業でも内部通報体制の整備が進んでいることがわかります。
すでに内部通報制度を導入済みの中小企業においては、今回の改正を踏まえ、自社の内部通報制度に関する規程や対応方針を見直していただくとともに、今一度、法及び社内の規程に沿った運用がなされているかをご確認ください。

※2 民間事業者の内部通報対応―実態調査結果概要―

https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_partnerships/whisleblower_protection_system/research#01-01

(2)内部通報体制の整備
自社の内部通報体制が整備されていない場合、内部通報体制の導入には次のような効果が期待できますので、この機会に導入を検討されることをお勧めします。

①不正の防止や早期発見が可能となる
内部通報体制を整備し、効果的に運用することで、社内の自浄作用を発揮させ、法令違反等を可能な限り未然に防止すること、また、万が一、法令違反等が発生した場合でも迅速に事態を把握し対処することで、影響を最小限に抑えることが期待でき、事業者にとって大きなメリットとなります。

②行政通報のリスク回避
社内に通報受付窓口がない場合、行政機関が通報の受け皿となり、社内で法令違反等の事実を認識していないうちに、突然、行政機関への公益通報(以下「行政通報」)がなされるという事態があり得ます。そして、行政機関が実際に調査等に動き出すと、その事実が金融機関や取引先に知れ渡ったり、メディアで報道されたりすることで信用棄損やイメージダウン等が発生し、自社が受けるダメージは甚大なものとなり得ます。
このようなリスクに対し、社内に通報受付窓口を設置することで、まずは内部への通報を促し、いきなり行政通報がなされる事態を回避することが期待できます。

4.おわりに
今般の改正は、中小企業にとっても自社の内部通報体制を再点検する好機です。自社の通報窓口や運用フローが実態に即しているかを確認し、通報者が安心して声を上げられる環境を整えることが不正防止と企業の信頼確保につながります。必要に応じて専門家の支援も積極的に活用してください。

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