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ステマ規制と事業者に求められる対応

2024/05/10

(執筆者:弁護士 水関莉子)

【Q.】
当社はメーカですが、現在、SNSで有名なインフルエンサーに自社商品の紹介を依頼して宣伝を行うことを検討しています。ただ、最近ステルスマーケティングが景品表示法の規制対象となったと聞き、この宣伝方法に問題ないかが心配です。今回のステマ規制の概要と、事業者に求められる対応を教えてください。

【A.】
1.はじめに
令和5年10月1日より、いわゆるステルスマーケティング(以下「ステマ」)が景品表示法の規制対象となる「不当表示」に指定されました。ステマとは、事業者の商品・サービスに関する広告であることを消費者に隠して行う広告をいい、ご相談いただいたような宣伝方法も、事業者の宣伝であることを隠して行う場合には、ステマに該当するおそれがあります。
消費者は、事業者の広告にはある程度の誇張が含まれるだろうと考え、その点を考慮して商品を選びます。一方で、事業者の広告であるとわからず、第三者の感想と誤信するような場合、消費者は、本来広告に対して抱くはずの警戒心を抱くことなく表示内容を受け止めてしまい、自主的かつ合理的な選択が妨げられるおそれがあります。
そこで本稿では、ステマ規制の概要と事業者に求められる対応についてご説明します。

2.ステマ規制の概要
(1)規制対象となる表示
消費者庁が「不当表示」として指定したのは、「事業者が自己の供給する商品又は役務の取引について行う表示であって、一般消費者が当該表示であることを判別することが困難であると認められるもの」(令和5年3月28日内閣府告示第19号)です。
これは、次の2つの要件で構成されます。
○要件1:事業者の表示であること
消費者庁の運用基準(※1)によると、「事業者の表示」と判断されるのは、事業者がその表示内容の決定に関与したと認められる場合です。これは、「事業者が自ら表示を行う場合」と「事業者が第三者をして表示させる場合」の2つに分けられます。
「事業者が自ら表示を行う場合」について、事業者自身が表示する場合はもちろん、一定の地位や役職にある従業員(子会社の従業員を含む)が、自身のSNSアカウントで事業者の商品に関する投稿をしたような場合であっても、事業者の表示と判断されることがあります。
「事業者が第三者をして表示させる場合」については、冒頭のご質問のように、第三者に宣伝を依頼する場合が典型例です。しかし、これとは異なり明示的に指示・依頼をしていなくても、第三者をして表示させたと判断される場合があるため、注意が必要です。たとえば、第三者に無償で商品提供した上で、SNS投稿を促した結果、第三者が事業者の方針に沿った投稿をしたような場合、その投稿は「事業者の表示」に該当します。
○要件2:一般消費者において事業者の表示であることが不明瞭であること
運用基準によると、事業者の表示であることが明瞭かどうかは、表示内容全体から一般消費者が受ける印象・認識を基準に判断されます。
たとえば、表示の冒頭に「広告」「PR」等の記載があっても、本文中に「第三者の感想です」等の記載がある場合、表示内容全体としては、事業者の表示であることが不明瞭と判断される可能性があります。
(2)規制違反のペナルティ
ステマ規制に違反した場合、事業者には、表示の差止めや消費者に生じた誤認を排除するための措置等が命じられます。また、措置命令を受けると、消費者庁のHPで、事業者名や違反内容、措置命令の内容が公表されます。

3.事業者に求められる対応
ステマ規制に違反しないため、事業者には、既に公開している広告・これから公開予定の広告が、規制対象となる表示に該当しないかを調査することが求められます。この点、具体的にどのような表示が規制対象となるかについては、前出の運用基準及び消費者庁作成のガイドブック(※2)の中で詳細な説明がなされていますので、調査の際はそちらを参考にしてください。
また、従業員や第三者による表示の場合、事業主の把握していないところでステマ行為が行われることもあるため、これらの者に事前の周知・啓発を行い、場合によっては就業規則や社内規定、誓約書等でSNS投稿に関するルールを定めることも有益です。
必要に応じて専門家にも相談しつつ、広告表示に関する体制の見直しを検討されることをお勧めします。
※1
「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の運用基準
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/guideline/assets/representation_cms216_230328_03.pdf
※2
景品表示法とステルスマーケティング~事例で分かるステルスマーケティング告示ガイドブック
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/assets/representation_cms216_200901_01.pdf

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