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10月にさらなる改正も! 経営者が知っておくべき育児・介護休業法

2017/07/19

(執筆者:弁護士 深津雅央)

【Q.】
今年1月から育児・介護休業法が改正されたと聞きましたが、さらに10月にも改正が行われると聞きました。結局、どのような対応をすればよいのでしょうか。

【A.】
1.育児・介護休業法の改正
改正育児・介護休業法が今年1月1日から施行されたということは、ご存じの方も多いのではないかと思います。しかし、今年の10月1日にもさらなる改正法の施行が予定されていますので、注意が必要です。
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2.平成29年1月1日施行の改正のおさらい
今年1月1日施行の改正点は、以下のとおりです。
(1)介護休業について

○対象家族1人につき、3回を上限として、通算93日まで、介護休業を分割取得することができる
○介護休暇の半日単位の取得を可能とする
○介護のための所定労働時間の短縮措置等を介護休業とは別に、利用開始から3年の間で2回以上の利用を可能とする
○介護終了までの期間、所定外労働の免除を請求することができる
○有期契約労働者の介護休業取得要件を緩和する

このうち、労基法第41号第2号に定める「管理監督者」については、自ら労働時間管理を行うことが可能な立場にあることから、所定外労働の免除や介護のための所定労働時間の短縮措置等を講じる必要がないとされています。もっとも、「管理監督者」に当たるか否かは、実態に即して判断されるものですので、いわゆる「名ばかり管理職」に当たらないかどうか、弁護士等の専門家に相談しつつ判断する必要があります。

(2)育児休業について

○子の看護休暇の半日単位の取得を可能とする
○以下に該当する有期契約労働者の育児休業の取得を認める
 (ア)当該事業主に引き続き雇用された期間が過去1年以上あること
 (イ)子が1歳6ヵ月に達する日までの間に労働契約が満了し、かつ、契約の更新がないことが明らかでない者
○特別養子縁組の監護期間中の子、養子縁組里親に委託されている子その他これらに準ずるものについては育児休業制度等の対象に追加する

このうち、有期契約労働者の育児休業の取得要件(ア)は、あくまでも現実に雇用された期間で判断されるものですので、その労働者の契約期間がたとえ1ヵ月などと短い契約期間になっていたとしても、申出時点で過去1年以上継続雇用されていれば、この要件を満たすことになります。
(3)マタハラ等の防止措置について
妊娠・出産・育児休業・介護休業等を理由とする、上司・同僚による就業環境を害する行為を防止するため、雇用管理上必要な措置(いわゆるマタニティ・ハラスメント等の防止措置)を事業主に義務づける。
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3.平成29年10月1日施行の改正
前述の改正に加え、今年10月1日からは、以下の3点について改正する法律が施行されます。
(1)最長2歳まで育児休業の再延長を可能とする
子どもが保育所に入所できないなどの事情がある場合には、従来の1歳6ヵ月までの延長に加え、最長で2歳になるときまで再延長することができるようになります。なお、この場合、育児休業給付金の給付期間も2歳まで延長されます。
(2)子どもが生まれる予定の従業員に育児休業等の制度等を知らせるよう努める <努力義務>
事業主は、従業員やその配偶者が妊娠・出産したことを知ったときは、その従業員に対し個別に、育児休業等に関する制度(休業中、休業後の待遇・労働条件など)を知らせるよう努めなければなりません。
(3)育児目的休暇の導入に努める <努力義務>
未就学児を育てながら働く従業員が子育てしやすいよう、例えば配偶者の出産に立ち会うための休暇や、子どもの行事に参加するための休暇など、育児に関する目的で利用できる休暇制度を設けるよう努めなければなりません。
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4.まとめ
介護・育児と仕事の両立は、政府が推進する「働き方改革」の目玉の一つとされており、改正された育児・介護休業の制度については、従業員の関心も高まっていると思われます。その一方で、短い期間に法改正が重なったこともあって、事業主からは、結局どのような対応が求められているのかよくわからない、という声も出ています(※)。
今年10月1日施行の改正に関しては、努力義務とされているものについて検討を進めることも大切ですが、まずは最低限守るべきポイントである「育児休業の2歳までの再延長が可能となる」という点を押さえていただき、従業員の方々からの申し出に的確に応えられるようにしてください。
※1月1日施行の改正において、企業が取るべき対応については、過去の「視点」より
 「今年中に就業規則の整備を! 改正育児・介護休業法」(2016.8.26)
 「ハローワークで求人不受理も? マタハラ防止措置の新設義務」(2016.12.8)
 をご参照ください。

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