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公益認定等ガイドライン(改訂案)に関するパブリックコメント結果の公表― 収支予算書・KPI・追加資料要求をめぐる実務上の留意点 ―(ニュースレター)

2026/07/15

平素より大変お世話になっております。

さて、今回は公益法人ニュース「公益認定等ガイドライン(改訂案)に関するパブリックコメント結果の公表 ― 収支予算書・KPI・追加資料要求をめぐる実務上の留意点 ―」をご案内させていただきます。

令和8年7月10日、内閣府公益認定等委員会事務局・公益法人行政担当室は、「公益認定等に関する運用について(公益認定等ガイドライン)(改訂案)」に関するパブリックコメントの結果を公表しました。本改訂は、令和6年の公益法人制度改正を踏まえ、法人の自主性・自律性の尊重、申請書記載事項・提出書類の簡素化、事前規制から事後チェックへの重点移行、収支相償から中期的収支均衡への移行等を、ガイドラインの運用面に反映するものです。

本ニュースレターでは、当該パブリックコメント結果のうち、実務上意味のある修正点と原案が維持された重要事項を中心に整理し、各公益法人において必要となる対応を示すことを目的とします。

令和8年7月15日

弁護士法人三宅法律事務所

*本ニュースレターに関するご質問・ご相談がありましたら、下記にご連絡ください。 弁護士法人三宅法律事務所 弁護士 渡邉雅之(執筆者) TEL 03-5288-1021 FAX 03-5288-1025 Email: m-watanabe@miyake.gr.jp

PDFは下記をご覧ください。

公益認定等ガイドライン(改訂案)に関するパブリックコメント結果の公表― 収支予算書・KPI・追加資料要求をめぐる実務上の留意点 ―

【目次】
1 はじめに
2 公益認定等ガイドラインとは――適用される場面
3 今回の改訂の基本的な方向性
4 パブリックコメントを受けて修正された主な事項
5 原案が維持された重要事項
6 実務上特に重要な解釈
7 公益法人において必要となる対応
8 おわりに

1 はじめに

令和8年7月10日、内閣府公益認定等委員会事務局・公益法人行政担当室は、「公益認定等に関する運用について(公益認定等ガイドライン)(改訂案)」に関するパブリックコメントの結果を公表した。意見募集は令和8年5月19日から6月18日まで行われ、寄せられた意見は計20件であった(意見募集結果はe-Govウェブサイト〔https://public-comment.e-gov.go.jp/pcm/download?seqNo=0000317810〕で公表されている。以下、意見の通し番号を「意見○」と表記する。)。本稿では、実務上意味のある修正点と、原案が維持された重要事項を中心に整理する。

2 公益認定等ガイドラインとは――適用される場面

公益認定等ガイドラインは、公益社団法人・公益財団法人に関する認定・監督の実務について、内閣府(公益認定等委員会)及び都道府県の行政庁が法令をどのように運用するかを示した解釈・運用指針である。法令そのものではないが、行政庁の審査・監督の実務上の基準となり、各法人が申請書・提出書類を作成する際の重要な指針として機能する。

具体的には、次のような場面で参照される。

・新たに公益認定を受けようとする一般社団・財団法人が、認定申請書やその添付書類を作成する場面。

・既に認定を受けている公益法人が、事業内容や機関等を変更し、変更認定申請又は変更届出を行う場面。

・公益法人が毎事業年度、事業計画書・収支予算書や、事業報告・計算書類等の定期提出書類を作成・提出する場面。

・公益目的事業比率、中期的収支均衡、使途不特定財産額の上限といった財務規律への適合性を確認する場面。

・行政庁が、認定基準への適合性や事業の適正な運営を審査・監督し、報告徴収・立入検査・勧告等を行う場面。

・公益法人が公益信託の受託者となる等、公益信託制度に関わる場面(今回の改訂で新章として整理された)。

したがって、本ニュースレターが扱う収支予算書の記載方法、KPI・インパクト評価、追加資料の要求、公益目的保有財産としての金融資産の取扱い等は、いずれも公益法人の日常的な申請・報告実務と行政庁の監督実務に直接影響する事項である。

3 今回の改訂の基本的な方向性

今回の改訂は、令和6年の公益法人制度改正を踏まえ、同改正の趣旨をガイドラインの運用面に落とし込むものである。その根底にあるのは、行政庁による事前の規制・審査を中心とする従来の枠組みから、法人自身の自律的なガバナンスと事後チェックを重視する枠組みへの転換である。具体的には、主として次の各点をガイドラインに反映するものである。

・法人の自主性・自律性を尊重した公益行政への転換。審査・監督は法律に従いプリンシプルベースで行うことを原則とし、行政庁が法人に従うべきルールを一方的に設定・押し付けることを慎むこととされている。

・申請書記載事項及び提出書類の簡素化。

・事前規制から事後チェックへの重点移行。

・収支相償から「中期的収支均衡」への移行。従来の単年度・収支相償の考え方を改め、中期的に収支の均衡を図る枠組みへと転換された。

・公益充実資金や公益事業継続予備財産といった新たな財務上の仕組みの創設。剰余額の解消や事業継続のための備えについて、従来より柔軟な対応が可能となった。

・区分経理が原則として全ての公益法人に義務付けられたことを踏まえた、収支予算書の作成・活用方法の明確化。

・公益目的事業の質の向上、ガバナンスの充実、透明性の確保に関する記載の拡充。

・公益信託制度との接続・整理。

もっとも、パブリックコメントにおいては、これらの方向性を前提としつつも、法人側の負担軽減や自治尊重を一層徹底すべきとする意見に対し、内閣府が原案を維持した項目も少なくない。以下、修正された事項と原案が維持された事項に分けて整理する。

4 パブリックコメントを受けて修正された主な事項

(1)ガイドライン外の追加資料要求の「例外」化(意見6・第2章第1節第2・26頁)

行政庁がガイドラインに記載のない書類を求める場合について、公益信託認可等ガイドラインと同様に「例外的に」との文言が追加された。行政庁が審査の名目で過去資料を漫然と多数要求することを抑制し、追加資料の提出要求を例外的なものと位置付ける趣旨であり、実務上重要な修正である。

ただし、意見で求められた「必要とする明確な理由」という文言までは採用されておらず、行政庁にどの程度具体的な理由の提示が求められるかは、なお運用上の課題として残る。

(2)収支予算書の位置付けの明確化(意見4・7・第5章第2節第1(1)2・198〜199頁)

原案では、収支予算書を「理事会が予算(見積もり・目標)と実績との乖離等を法人の管理・経営に活用することを想定した書類」としていたが、パブリックコメントを踏まえ、「法人のガバナンスを確保しステークホルダーへの説明責任を果たすことを目的とした書類」である旨が明記された。収支予算書は単なる行政庁向けの提出書類ではなく、法人内部のガバナンス及び対外的な説明責任のための資料として位置付けられる。

一方、収支予算書を「財務規律への適合性等を確認する書類」とする記述自体は維持された。ただし内閣府は、決算時の別表A〜Cのような厳密な確認を予算段階で求めるものではなく、追加負担を課す趣旨ではないと説明している。予算作成時に中期的収支均衡等を厳密に計算する必要まではないが、明らかに財務規律に反する予算を作成しない程度の確認は必要という整理である。

(3)KPI・インパクト評価は一律義務ではないことの確認(意見5・15・第5章第2節第1(1)1事業計画書・199頁)

事業計画への中長期的事業方針や公益目的事業の質の向上を図る取組の記載につき、KPIやインパクト評価が例示されていることに対し、中小規模法人や研究助成法人から過度な負担となるとの意見が寄せられた。

内閣府は、KPIの設定やインパクト評価はあくまで例示であり、一律に導入を求めるものではなく、法人の規模・事業内容・特性に応じて検討すればよいと明確にした。定量的KPIを設定していないこと自体が直ちに不適切となるものではなく、質的評価、審査体制、事業実施後の検証など、各法人の規模・事業内容・特性に応じた取組を検討することが考えられる。

(4)資産運用に関する記載の補充(意見13・15・第3章第1・イ経理処理・財産管理の適正性・86頁、89〜90頁)

公益法人による株式保有等の資産運用について、アセットオーナー・プリンシプル等を参考にする際は「資産運用の規模や運用資金の性格等を踏まえつつ」検討する趣旨の記載が追加された。すべての公益法人に同プリンシプルの受入れや機関投資家と同水準の運用体制を求めるものではなく、資産運用を行う法人が、その運用規模や運用資金の性格等に応じて参考にすることが想定されている。

(5)公益目的保有財産としての金融資産の整理(意見2・15・第5章第3・ア公益目的保有財産、脚注38・173頁)

中期的収支均衡における剰余額の解消策として、公益目的保有財産に該当する金融資産を取得できることが確認された。金融資産の果実が公益目的事業の充実のために使用される見込み・必要性があることが前提となる。また、指定純資産である既存の金融資産に一般純資産の剰余額を積み増すのではなく、剰余額により取得する金融資産は、取崩しを前提としない公益目的保有財産として区分し、別途管理する必要がある。これらの趣旨が伝わるよう脚注も修正される。

(6)公益信託事務を既存の公益目的事業として実施する場合の手続区分の明確化(意見15・第9章・249頁)

公益法人が公益信託事務を既存の公益目的事業の枠内で実施する場合について、既存事業に該当することが明らかであるが付随的事業の追加・変更に当たる場合は変更届出が必要、既存の申請書記載事項に包含され軽微な変更にも該当しない場合は変更認定申請・変更届出とも不要、との区別が明確になるよう修正される。

なお、公益信託事務は、法人における位置付けや受託業務の内容に応じて公益目的事業にも収益事業等にもなり得るとされており、現に認定されている公益目的事業と同様の公益事務を行う場合は一般的に公益目的事業に該当する一方、信託報酬や財務規律との関係から収益事業等として行う可能性も一律には否定されていない。

(7)用語・表記の統一(意見3・10)

このほか、「不特定かつ多数の者」又は「不特定多数性」への統一(49頁)、刑罰の記載の「拘禁刑以上の刑に処せられ」への修正(111頁)、「令和6年の公益法人制度改正」への表現統一、「財務3基準」から「財務規律」への修正(178頁)、技術開発・研究開発のチェックポイントの注記参照箇所の訂正(75頁)など、形式的な修正も行われる。

5 原案が維持された重要事項

・行政庁が法人の機関決定を尊重すべきこと及びガバナンスの定義を明記すべきとの意見(意見6・第1章第1節第3公益行政の基本的考え方・8頁)は採用されず、内閣府は自主性・自律性の尊重は既に記載済みとして原案を維持した。行政庁の介入の限界は、引き続きプリンシプルベース・法人自治の尊重という一般原則と個別法令の解釈に委ねられる。

・収支予算書を「財務規律への適合性等を確認する書類」とする記述(意見6・11・12・第5章第2節第1(1)2・198頁)の削除要求は受け入れられなかった。区分経理が原則として全公益法人に義務付けられたことから、公益目的事業会計・収益事業等会計・法人会計及び各事業単位の内訳を示す必要性も維持されている。

・「望ましい」とされる項目について行政庁が修正を求めるべきではないとの意見(意見6・第5章第2節第1(1)2・199頁)に対し、内閣府は、明らかな誤りや法令上の要件への不適合がある場合には必要な指導を行い得るとした。行政庁の好みの押し付けは許されない一方、法令違反や重大な計数誤りがある場合の修正指導までは否定されない。

・旧様式から新様式への切替え(意見11・15・第2章第4(2)現行法人の移行措置・43〜44頁)は、原則として法人の自発的な変更認定申請によるものとされ、様式変更・記載簡素化のみを理由とする変更届出による切替えは採用されなかった。もっとも、変更認定の機会が少ない法人が多数存在することは内閣府も認識しており、申請書記載事項の簡素化の進め方は今後検討するとしている。

6 実務上特に重要な解釈

既存法人が毎年度提出する「公益目的事業の種類及び内容等を記載した書類」に最新の事業実績等を記載しても、それのみで認定申請書の記載事項を変更したことにはならない。既に適法な変更届出を行った内容は以後の事業計画書等に反映できるが、申請書そのものの記載を整理・簡素化する場合には、原則として変更認定申請が必要である。

公益目的事業の変更であっても、事業の公益性に影響しないことが明らかで、従前の事業区分の特性・内容に照らし引き続き同一の公益目的事業に該当する場合には、変更届出で処理できる範囲がある。一方、名称・実施方法・対象者の変更等であっても、公益性への影響が否定できなければ変更認定申請が必要となる。

運転資金・内部留保の積増しを広く認めるべきとの意見に対しては、内閣府は、公益充実資金、公益事業継続予備財産、公益目的保有財産としての金融資産の各制度により従来より財務規律は柔軟化されていると説明した。したがって、単なる「運転資金」「内部留保」という名目で蓄積するのではなく、実務上は、具体的な事業継続リスク、使用目的、必要額等を整理し、各制度の要件に即して位置付けることが重要となる。

7 公益法人において必要となる対応

今回の改訂を受け、各法人においては、少なくとも次の点を確認する必要がある。

・事業計画書に中長期方針・公益目的事業の質向上策をどこまで記載するか。

・KPIを設けない場合、その事業に適した質的評価方法を説明できるか。

・収支予算書が事業計画・区分経理・財務規律と整合しているか。

・理事会において予算・実績差異を確認する仕組みがあるか。

・公益充実資金や公益事業継続予備財産を活用する必要があるか。

・金融資産を公益目的保有財産として保有する場合の目的・果実の使途・管理区分が明確か。

・旧様式の申請書記載と現在の事業実態に齟齬がないか。

・事業変更が変更認定・変更届出・手続不要のいずれに該当するかを整理しているか。

・行政庁からガイドライン外の資料を求められた場合、例外的要求として理由を確認しているか。

8 おわりに

今回のパブリックコメントでは、法人の自主性や負担軽減を求める意見が多数寄せられたが、内閣府は基本的な制度設計を大きく変更していない。他方、ガイドライン外資料の要求を「例外的」としたこと、KPI・インパクト評価が一律義務ではないと確認したこと、収支予算書をガバナンス・説明責任の資料として明確化したこと、金融資産による剰余解消の取扱いを整理したこと、公益信託事務の追加に関する手続区分を明確化したことは、実務上意味のある修正である。

総じて、申請・提出書類の簡素化や行政庁による追加資料要求の抑制を進める一方、法人自身による説明責任、理事会のガバナンス及び財務規律への自主的適合を一層重視する改訂と評価できる。各法人においては、本改訂の趣旨を踏まえ、自律的なガバナンス体制及び収支予算書等の作成・管理方針を改めて点検することが望まれる。

以上

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