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働き方改革関連法の成立による中小企業への影響

2018/08/01

(執筆者:弁護士 神部美香)

【Q.】
6月末に働き方改革関連法が成立したと聞きましたが、事業主としてどのような点に注意すればよいでしょうか。

【A.】
1.働き方改革関連法の概要
 今回の働き方改革関連法(以下「関連法」)は、労働者がそれぞれの事情に応じた多様な働き方を選択できる社会を実現する働き方改革を総合的に推進するために、以下のような措置を講ずることを内容とするものです。

�� 長時間労働の是正、多様で柔軟な働き方の実現
 <具体的な内容>
 時間外労働の上限規制の設定、月60時間超の時間外労働に対する割増賃金率(50%以上)にかかる中小企業への猶予措置の廃止、年次有給休暇の指定義務、労働者の健康確保に向けた労働時間の状況の把握方法の設定、高度プロフェッショナル制度の創設、勤務間インターバル制度の普及促進、産業医・産業保健機能の強化など

�� 雇用形態に関わらない公正な待遇の確保(いわゆる同一労働同一賃金)
 <具体的な内容>
 不合理な待遇差を解消するための規定の整備、労働者に対する待遇に関する説明義務の強化、行政による履行確保措置及び裁判外紛争解決手続き(行政ADR)の整備など
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2.関連法の施行
 それぞれの施行期日は、�氓ェ平成31年4月1日(中小企業における時間外労働の上限規制に係る改正規定の適用は平成32年4月1日、中小企業における割増賃金率の見直しは平成35年4月1日)、��が平成32年4月1日(中小企業におけるパートタイム労働法・労働契約法の改正規定の適用は平成33年4月1日)となっています。

3.企業が行うべき具体的対応
(1)関連法は、時間外労働の上限について、月45時間、年360時間を原則とし、臨時的な特別な事情がある場合でも年720時間、単月100時間未満(休日労働含む)、複数月平均80時間(休日労働含む)を限度としています。36協定の上限時間超えの時間外及び休日労働があった場合の罰則に加え、複数月平均80時間、単月100時間未満の規制の違反につき、罰則が新設されました(6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金)。中小企業については、経過措置により、平成32年4月1日以後の期間のみを定めている36協定から適用されます。また、これに伴い、36協定の協定項目も増えて細分化されていますのでご注意ください。

(2)平成35年4月から月間60時間を超える時間外労働については、大企業と同様に割増率が50%となります。そのため、賃金規定等における時間外労働手当の割増率の規定を変更するとともに、施行前から時間外労働の削減に向けた取り組みを検討する必要があります。

(3)有給休暇の付与日数が10労働日以上である労働者に対し、付与日数のうち5日については、基準日から1年以内に使用者が時季指定して付与することが義務化されます。かかる違反に対しては罰則規定が設けられていますので(30万円以下の罰金)、改正省令で義務化される年休管理簿により適切に有給休暇取得日を把握し、取得が少ない者に対しては5日に達するように推奨、または有給休暇を指定する必要があります。

(4)関連法成立の過程で議論の対象となった高度プロフェッショナル制度については、対象業務の限定や年収要件がありますので、適用の対象となる労働者は限定的と思われます。しかし、適用対象者の詳細は省令の定めに委ねられており、今後の省令に注意が必要です。

(5)上記に加え、労働者の健康確保に向けた労働時間の状況の把握の実効性確保やフレックスタイム制の見直し、同一企業内における正規雇用労働者と非正規雇用労働者(短時間・有期雇用労働者)の間の公正な待遇確保など、重要な改正が多くあります。働き方改革に向けて、特に中小企業・小規模事業者向けの相談窓口として各都道府県に「働き方改革推進支援センター」が開設されますので、このような機関を利用するほか、各企業の実情に応じ、適宜、弁護士などの専門家にご相談されることをお勧めします。

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