トピックス

2017.12.06
NEWS

【FinTech】ICO(Initial Coin Offering)に関する法的留意点

【執筆者:渡邉雅之
(連載)
【FinTech】仮想通貨に関する所得の計算方法に関するQ&A
【FinTech】仮想通貨交換業者に関する疑わしい取引の届出およびマネー・ローンダリングの手口(犯罪収益移転危険度調査書)
【FinTech】ICO(Initial Coin Offering)に関する法的留意点

1.ICOとは何か?
Initial Coin Offering(ICO:新規仮想通貨公開)という新たな資金調達の手段が近時注目を集めるようになっています。Initial Token Sales(ITS)と呼ばれることもあります。
ICOは、企業等が電子的にトークン(Token:証票)を発行して、公衆から資金調達を行う行為の総称です。
 
2.ICOのリスクは?
ICOに関しては、金融庁が公表している「ICO(Initial Coin Offering)について~利用者及び事業者に対する注意喚起~」(以下「金融庁注意喚起」といいます。)において、以下のとおり、「価格下落の可能性」、「詐欺の可能性」といった利用者のリスクを指摘しています。
 
2.利用者の方へ(ICOのリスクについて)
 ○ ICOで発行されるトークンを購入することには、次のような高いリスクがあります。
*  価格下落の可能性
トークンは、価格が急落したり、突然無価値になってしまう可能性があります。
*  詐欺の可能性
一般に、ICOでは、ホワイトペーパー(注)が作成されます。しかし、ホワイトペーパーに掲げたプロジェクトが実施されなかったり、約束されていた商品やサービスが実際には提供されないリスクがあります。また、ICOに便乗した詐欺の事例も報道されています。
(注)ICOにより調達した資金の使い道(実施するプロジェクトの内容等)やトークンの販売方法などをまとめた文書をいいます。
 ○ トークンを購入するに当たっては、このようなリスクがあることや、プロジェクトの内容などをしっかり理解した上で、自己責任で取引を行う必要があります。
 ○ ICOに関する不審な勧誘等には十分注意し、内容に応じて、以下の相談窓口にご相談ください。
 
3.ICOは日本法上どのような扱いになるのか?
金融庁注意喚起は、事業者に向けて、以下のとおり、資金決済に関する法律(以下「資金決済法」といいます。)や金融商品取引法等の規制対象となる可能性を指摘しています。
3.事業者の方へ(ICOへの規制について)
○ ICOの仕組みによっては、資金決済法や金融商品取引法等の規制対象となります(注)。ICO事業に関係する事業者においては、自らのサービスが資金決済法や金融商品取引法等の規制対象となる場合には、登録など、関係法令において求められる義務を適切に履行する必要があります。登録なしにこうした事業を行った場合には刑事罰の対象となります。
(注)ICOにおいて発行される一定のトークンは資金決済法上の仮想通貨に該当し、その交換等を業として行う事業者は内閣総理大臣(各財務局)への登録が必要になります。また、ICO が投資としての性格を持つ場合、仮想通貨による購入であっても、実質的に法定通貨での購入と同視されるスキームについては、金融商品取引法の規制対象となると考えられます。
 
ICOに用いられるトークンは、資金決済法上の「仮想通貨」あるいは「前払式支払手段」に該当すると考えられます。また、ICOの行為自体が、金融商品取引法上の「集団投資スキーム」に該当する場合もあり得ます。それぞれに該当する場合に必要となる許認可は以下のとおりです。
 
1 資金決済法上の「仮想通貨」「仮想通貨交換業者」
ICOに用いられるトークンが、資金決済に関する法律(以下「資金決済法」といいます。)上の「仮想通貨」(同法2条5項)に該当する場合において、「仮想通貨」の売買または他の仮想通貨との交換、これらの行為の媒介・取次・代理をする場合は、仮想通貨交換業者(同条7項)としての登録(同法63条の2)が必要となります。
2 資金決済法上の「前払式支払手段」「自家型・第三者型前払式支払手段発行業者」
ICOに用いられるトークンが、資金決済法上の「前払式支払手段」(同法3条1項)に該当する場合において、発行者自らの商品・サービスの購入にしか利用できない場合において、1,000万円を超える発行額となった場合には、財務局へ自家型前払式支払手段としての届出(同法5条)が必要となります。これに対して、トークンが、発行者以外の第三者の商品・サービスの購入にも利用できる場合第三者型前払式支払手段としての登録(同法7条)が必要となります。
3 金融商品取引法上の「集団投資スキーム」「金融商品取引業者(第二種金融商品取引業・投資運用業)・適格機関投資家等特例業者」
ICOの行為が、金融商品取引法上の「集団投資スキーム」(同法2条2項5号、6号)に該当する場合において、集団投資スキーム持分の募集また私募を行う場合には、金融商品取引業者(第二種金融商品取引業)としての登録(同法29条)が、出資された財産の運用を行う場合には、金融商品取引業者(投資運用業者)としての登録(同法29条)が必要となります。
出資者の全てが適格機関投資家である場合、または出資者に1人以上の適格機関投資家と49人以下の投資判断能力を有すると見込まれる一定の者が含まれる場合には、集団投資スキーム持分の募集または私募および出資された財産の運用については、適格機関投資家等特例業務の届出(同法63条2項)が必要となります。
 
4.「仮想通貨」と「前払式支払手段」はどのような点が違うのか?
資金決済法上の「仮想通貨」は以下のとおり定義されています(同法2条5項)。
① 物品を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されているものに限り、本邦通貨及び外国通貨並びに通貨建資産を除く。次号において同じ。)であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの(1号)
② 不特定の者を相手方として前号に掲げるものと相互に交換を行うことができる財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの(2号)
 
上記①の「仮想通貨」(1号仮想通貨)は、以下の4つの要件が求められます。
A)   物品を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができる財産的価値であること。
B)   不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値であること。
C)   「財産的価値」のうち、電子機器その他の物に電子的方法により記録されているものに限り、本邦通貨及び外国通貨並びに通貨建資産(※)を除く。
D)   電子情報処理組織(コンピューター)を用いて移転することができる財産的価値であること。
※「通貨建資産」とは、本邦通貨若しくは外国通貨をもって表示され、又は本邦通貨若しくは外国通貨をもって債務の履行、払戻しその他これらに準ずるもの(「債務の履行等」)が行われている資産をいいます(資金決済法2条6項)。この場合において、通貨建資産をもって債務の履行等が行われている資産は、通貨建資産とみなされます。
 
 上記②の「仮想通貨」(2号仮想通貨)は、以下の3つの要件が求められます。
(i)  不特定の者を相手方として1号仮想通貨と相互に交換を行うことができる財産的価値であること。
(ii)  電子機器その他の物に電子的方法により記録されているものに限り、本邦通貨及び外国通貨並びに通貨建資産を除く。
(iii) 電子情報処理組織(コンピュータ)を用いて移転することができるものであること。
 
 資金決済法上の「前払式支払手段」は、以下のとおり定義されています(同法3条1項)。
① 証票、電子機器その他の物(「証票等」)に記載され、又は電磁的方法(電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によって認識することができない方法をいう。以下この項において同じ。)により記録される金額(金額を度その他の単位により換算して表示していると認められる場合の当該単位数を含む。)に応ずる対価を得て発行される証票等又は番号、記号その他の符号(電磁的方法により証票等に記録される金額に応ずる対価を得て当該金額の記録の加算が行われるものを含む。)であって、その発行する者又は当該発行する者が指定する者(「発行者等」)から物品を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために提示、交付、通知その他の方法により使用することができるもの(1号)
② 証票等に記載され、又は電磁的方法により記録される物品又は役務の数量に応ずる対価を得て発行される証票等又は番号、記号その他の符号(電磁的方法により証票等に記録される物品又は役務の数量に応ずる対価を得て当該数量の記録の加算が行われるものを含む。)であって、発行者等に対して、提示、交付、通知その他の方法により、当該物品の給付又は当該役務の提供を請求することができるもの(2号)
 
 要約すれば、資金決済法上の「前払式支払手段」とは、①金額等の財産的価値が記載・保存されること(価値の保存)、②対価を得て発行されること(対価発行)、③商品・サービスの代金の支払に使用されること(権利行使)のいずれの要素も満たすものです(同法3条1項)。また、「前払式支払手段」は証票を伴うものだけでなく、サーバ型も含まれます。
 ICOにおいては、「1号仮想通貨」に該当するかが問題となりますが、「1号仮想通貨」の要件である、「代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができる」および「不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる」については、事務ガイドラインで以下のような判断基準が示されています(事務ガイドライン(第三分冊:金融会社関係16仮想通貨交換業者関係)(以下「事務ガイドライン」といいます。)1-1-1)。これは、「仮想通貨」と「前払式支払手段」のいずれに該当するかの判断基準を示すものでもあります。
① 法第2条第5項第1号に規定する仮想通貨(以下「1号仮想通貨」という。)の該当性に関して、「代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができる」ことを判断するに当たり、例えば、「発行者と店舗等との間の契約等により、代価の弁済のために仮想通貨を使用可能な店舗等が限定されていないか」、「発行者が使用可能な店舗等を管理していないか」等について、申請者から詳細な説明を求めることとする。
② 1号仮想通貨の該当性に関して、「不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる」ことを判断するに当たり、例えば、「発行者による制限なく、本邦通貨又は外国通貨との交換を行うことができるか」、「本邦通貨又は外国通貨との交換市場が存在するか」等について、申請者から詳細な説明を求めることとする。
(注)前払式支払手段発行者が発行するいわゆる「プリペイドカード」や、ポイント・サービス(財・サービスの販売金額の一定割合に応じてポイントを発行するサービスや、来場や利用ごとに一定額のポイントを発行するサービス等)における「ポイント」は、これらの発行者と店舗等との関係では上記①又は②を満たさず、仮想通貨には該当しない。
 上記の「(注)」は、資金決済法上の「前払式支払手段」に該当する場合には、同時に「仮想通貨」には該当しないことを明らかにする趣旨です。
「仮想通貨」か「前払式支払手段」であるか否かの分水嶺は、上記のとおり、「代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができる」か「不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる」かにより判断されることになると考えられます。「仮想通貨」における「不特定」の概念は、「発行者と店舗等との間の契約等により、代価の弁済のために仮想通貨を使用可能な店舗等が限定されていないか」、「発行者が使用可能な店舗等を管理していないか」と具体例が示されているとおり、かなり緩やかなものであると考えられます。
また、「前払式支払手段」は、対価を得て発行されること(対価発行)が要件とされていますが、「仮想通貨」は交換市場において価額が変動するものであるので、対価発行の要件を充たしません。
さらに、プリペイドカードである「前払式支払手段」は、本邦通貨建(Ssuica、nanaco、Edy等)、または、外国通貨建て(キャッシュパスポート[1]、マネパカード[2])であるのが通常ですが、「仮想通貨」は定義において「通貨建資産」が除外されていますので、日本円建や米ドル建のものはこれに該当しません。実際、「ビットコイン」「イーサリアム」といった「仮想通貨」は通貨建ではありません。
 なお、「仮想通貨」というと、ブロックチェーン技術を用いるものというイメージがありますが、ブロックチェーン技術を用いているか否かは直ちに、「仮想通貨」の該当性に影響を与えるものではありません。
 以上に照らすと、資金決済法上の「仮想通貨」と「前払式支払手段」の判断基準は以下のとおりとなります。
1 代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができるか
① 発行者と店舗等との間の契約等により、代価の弁済のために仮想通貨を使用可能な店舗等が限定されていない場合
  ⇒「仮想通貨」と判断される可能性が高い
② 発行者と店舗等との間の契約等により、代価の弁済のために仮想通貨を使用可能な店舗等が限定されている場合
  ⇒「前払式支払手段」と判断される可能性が高い
③ 発行者が使用可能な店舗等を管理していない場合
  ⇒「仮想通貨」と判断される可能性が高い
④ 発行者が使用可能な店舗等を管理している場合
  ⇒「前払式支払手段」と判断される可能性が高い
2 不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができるか
① 発行者による制限なく、本邦通貨又は外国通貨との交換を行うことができる場合
  ⇒「仮想通貨」と判断される可能性が高い
② 発行者による制限なく、本邦通貨又は外国通貨との交換を行うことができない場合
  ⇒「前払式支払手段」と判断される可能性が高い
③ 本邦通貨又は外国通貨との交換市場が存在する場合
  ⇒「仮想通貨」と判断される可能性が高い
④ 本邦通貨又は外国通貨との交換市場が存在しない場合
  ⇒「前払式支払手段」と判断される可能性が高い
3 対価発行が要件とされているか
① 対価を得て発行されるものである場合
  ⇒「前払式支払手段」に該当する可能性が高い
② 対価を得て発行されるものでない場合
  ⇒「仮想通貨」に該当する可能性が高い
4 通貨建(本邦通貨建・外国通貨建)であるか否か
① 通貨建である場合
  ⇒「前払式支払手段」に該当する可能性が高い
② 通貨建でない場合
  ⇒「仮想通貨」に該当する可能性が高い
 
5.仮想通貨交換業者でない事業者によるICOのトークンは、「前払式支払手段」に該当するものがほとんど?
 上記4のとおり、資金決済法上の「仮想通貨」に該当するためには、(a)発行者と店舗等との間の契約等により、代価の弁済のために仮想通貨を使用可能な店舗等が限定されていないこと、(b)発行者が使用可能な店舗等を管理していないこと、(c)発行者による制限なく、本邦通貨又は外国通貨との交換を行うことができること、(d)本邦通貨又は外国通貨との交換市場が存在すること、(e)対価を得て発行するものでないこと、(f)通貨建でないこと、という要件を充たす必要があります。
 仮想通貨交換業者の登録をしていない中小事業者が、自らトークンを発行して、ICOを行う場合には、そもそも自社の提供する物品・役務にしか利用できず、(a)および(b)の要件を充たさない可能性が高いです。
また、通貨への交換や市場はそもそも存在しないでしょうから、(c)および(d)も充たさない可能性が高いと考えられます。そもそも、通貨への交換を認めると、銀行法や資金決済法上の「為替取引」に該当し、銀行免許または(100万円相当額以下の送金であれば)資金移動業者の登録が必要となる可能性があります。
さらに、交換市場により値決めがなされるものではなく、トークンの発行時点で対価となる金額が定められている場合が多いでしょうから、(e)の要件を充たさないと考えられます。
なお、(f)の通貨建でないということは、仕組みによっては可能かもしれません。
 したがって、仮想通貨交換業者でない事業者によるICOのほとんどは、「前払式支払手段」の発行に該当するケースが多いと考えられます。
 なお、「前払式支払手段」に該当するためには、物品・役務の代価の弁済に使用できることが前提となる(資金決済法3条1項1号)ので、そもそも、物品・役務の代価の弁済に何ら使用できないトークンは、「前払式支払手段」には該当しません。
この場合、金融商品取引法上の「集団投資スキーム」に該当するか、あるいは詐欺に該当しないか等を検討することになります。
 
6.ICOのトークンが「前払式支払手段」に該当する場合の問題点
 資金決済法上、前払式支払手段の発行者から商品の購入やサービスの提供を受ける場合に限り、これらの対価の弁済のために使用できる前払式支払手段は「自家型前払式支払手段」(同法3条4項)といいます。たとえば、スマートフォンのアプリ事業者が発行する「仮想通貨」は、その事業者のアプリでしか使用できないので「自家型前払式支払手段」に該当するものです。
 前払式支払手段が、発行者以外の商品やサービスの提供の対価の弁済のためにも使用できる場合は、「第三者型前払式支払手段」((同法3条5項)に該当します。
 「自家型前払式支払手段」は、基準日未使用残高が1,000万円を超える場合は財務局に届出をする必要があります(同法5条)。基準日未使用残高が1,000万円以下の場合は、何らの届出も要しません。
これに対して、「第三者型前払式手段発行者」は、基準日未使用残高にかかわらず、財務局長に登録をする必要があります(同法7条)。
 ICOが前払式支払手段に該当する場合の問題点は、利用者保護のため、基準日未使用残高が1,000万円を超える場合は、基準日未使用残高の2分の1に相当する発行保証金を法務局に供託する必要があることです(同法14条、同法施行令7条)。
すなわち、せっかくICOで資金を集めても、その半分に相当する資金は法務局に供託をしなければならず、利用することができないのです。
 発行保証金を供託する代わりに、銀行との間で発行保証金保全契約の締結をすること(同法15条)や、信託会社・信託銀行との間で発行保証金信託契約を締結すること(同法16条)が認められています。
もっとも、銀行との間の発行保証金保全契約は、信用力や銀行への多額の預金が必要となります。また、信託会社・信託銀行との間の発行保証金信託契約は多額の信託手数料がかかります。
 
○発行保証金の保全方法の比較
  発行保証金の供託 発行保証金保全契約 発行保証金信託契約
契約の締結 不要 必要 必要
履行時期 1.基準日未使用残高が基準額を超えることとなった基準日の翌日から2月以内
2.追加供託は、供託額の不足の事実を知った時から2週間を経過する日まで
なし なし
当局の承認・届出 必要なし 事前届出必要 承認必要
報酬 なし 銀行等から保証委託料を徴収される。 信託会社等から信託報酬を徴収される。
未使用残高の把握 基準日(毎年3月31日及び9月30日)において把握の必要あり。 毎日の計算や基準日における把握の必要はない。 毎日計算の必要あり。
 
 これらを避けるためには、①自家型前払式支払手段とし、基準日未使用残高が1,000万円以下とする、少額のICOとするか、または、②「前払式支払手段」のうち、発行の日から6月以内に限り使用できるものについては、資金決済法上の規制の対象外となる(同法4条2号、同法施行令4条2項)ので、トークンの使用期間を発行日から6月以内とすることです。
 もっとも、ICOのトークンの使用期間を6月以内の使用期間とすることについては、それを事前に明確に説明をしておかないと、利用者側からのクレームの対象となり得ます。
 
 なお、仮想通貨交換業者に関しては、利用者財産の管理(同法63条の11)として、①その行う仮想通貨交換業に関して、仮想通貨交換業の利用者の金銭又は仮想通貨を自己の金銭又は仮想通貨と分別して管理すること、②分別管理の状況について、定期に、公認会計士又は監査法人の監査を受けなければなりませんが、供託、保全契約、信託契約といった利用者の財産保護のための措置は求められません。これは、利用者保護とイノベーション促進の観点のバランスを考慮したものです。
 
7.仮想通貨交換業とICOの関係
 資金決済法上の「仮想通貨」に該当する場合でも、仮想通貨交換業者としての登録が必要であるかが問題となります。
 資金決済法上、登録の対象となる「仮想通貨交換業」とは、次に掲げるいずれかを業として行うことをいいます(同法2条7項)。同法63条の2の登録を受けた者のことを「仮想通貨交換業者」といいます(同法2条8項)。
 
① 仮想通貨の売買又は他の仮想通貨との交換
② ①に掲げる行為の媒介、取次ぎ又は代理
③ ①・②に掲げる行為に関して、利用者の金銭又は仮想通貨の管理をすること。
 
 「仮想通貨の売買」は、既に発行済みの仮想通貨の(セカンダリー市場)での売買を意味し、ICOにおいて行われる新規の仮想通貨の発行(募集・私募)またはその勧誘(取扱い)には該当しないように読めるため問題となるのです。
 この点、金融商品取引法では、「有価証券の売買」(同法2条8項1号)は既に発行済みの有価証券の売買を意味し、新規の有価証券の発行に伴う勧誘は、「募集(不特定多数に勧誘する場合)・私募(少人数またはプロのみに勧誘する場合)」(発行者以外が勧誘する場合は「募集の取扱い・私募の取扱い」)とされています。
 「仮想通貨の売買」に、ICOのような新規の仮想通貨の発行およびそれに伴う勧誘行為が含まれないとすれば、仮想通貨に該当するトークンを発行し勧誘するだけでは、仮想通貨交換業者としての登録は不要なようにも思われます。
 もっとも、この点に関しては、金融商品取引法では、資金決済法では、「既存の仮想通貨の売買」と「新規の仮想通貨の発行と購入」を区別しておらず、仮想通貨交換業に該当しないという議論は困難であるという意見が有力のようです(斉藤創「ICOを日本法上、どう考えるべきか」)。事務ガイドライン1-1-2(注4)においても、「例えば、新規に発行する仮想通貨の売り出しを行う場合に、発行段階で流動性に欠けるとしても、当該仮想通貨を取り扱うことが適切でないと直ちに判断するのではなく、申請者からの説明や外部情報を十分考慮し、総合的に判断するも のとする。」として、「新規に発行する仮想通貨の売り出し」も仮想通貨交換業の対象となることを前提とした記述があります。
 なお、下記の同事務ガイドライン1-1-2の記述のとおり、仮想通貨として取り扱うのが適当であるのか、ICOを行うのが適切であるのか、事前に詳細に金融庁や財務局に説明することが求められています。
 これは、ICOの対象となるトークンが前払式支払手段の場合も同様であると考えられます。
 
-1-2 仮想通貨交換業の該当性及び取り扱う仮想通貨の適切性の判断基準
情報通信技術は急速に進展しており、日々、様々な仮想通貨が出現することが想定される。また、仮想通貨交換業に係る取引(法第2条第7項各号に規定する行為に係る取引をいう。以下同じ。)の形態についても、様々な態様が考えられる。このため、取り扱おうとするものが仮想通貨に該当し、又は当該仮想通貨の取扱いが仮想通貨交換業に係る取引に形式的に該当するとしても、利用者保護ないし公益性の観点から、仮想通貨交換業者が取り扱うことが必ずしも適切でないものもあり得る。
したがって、当局は、仮想通貨交換業に係る取引の適切性及び取り扱う仮想通貨の適切性等について、申請者に対して詳細に説明を求めるとともに、認定資金決済事業者協会の公表する情報等を参考としつつ、登録の申請の審査等を実施するものとする。
(注3)取り扱う仮想通貨の適切性を判断するに当たり、例えば、当該仮想通貨の仕組み、想定される用途、流通状況、プログラムのバグなどの内在するリスク等について、申請者から詳細な説明を求めることとするほか、こうした観点から、利用者からの苦情や、認定資金決済事業者協会の意見等の外部情報も踏まえて判断 する。
(注4)例えば、新規に発行する仮想通貨の売り出しを行う場合に、発行段階で流動性に欠けるとしても、当該仮想通貨を取り扱うことが適切でないと直ちに判断するのではなく、申請者からの説明や外部情報を十分考慮し、総合的に判断するものとする。
 
8.金融商品取引法上の集団投資スキームに該当する場合
 金融商品取引法上の二項有価証券である「集団投資スキーム」(同法2条2項5号)には、以下の3つの基準に該当する場合に該当します。
 必ずしも、民法上の組合契約や商法上の匿名組合契約に該当するかは問わず、実体的に以下の基準に該当するものは、集団投資スキームに該当します(ただし、保険契約や不動産特定共同事業契約などの他の契約に該当するものは除きます。)。
 
①   出資者から金銭又は金銭に類するもの(金銭等)の出資又は拠出を受けること
②   出資又は拠出された金銭等を用いて事業・投資を行うこと
③  当該事業から生じる収益などを出資者に分配するスキームにかかる権利であること
 
 ICOにおいては、特に③の要件が問題となると思われます。ICOによって集めた資金を運用して、出資者に分配するスキームである場合は、集団投資スキームに該当する可能性があります。
 ICOの行為が、金融商品取引法上の「集団投資スキーム」(同法2条2項5号、6号)に該当する場合において、集団投資スキーム持分の募集また私募を行う場合には、金融商品取引業者(第二種金融商品取引業)としての登録(同法29条)が、出資された財産の運用を行う場合には、金融商品取引業者(投資運用業者)としての登録(同法29条)が必要となります。
出資者の全てが適格機関投資家である場合、または出資者に1人以上の適格機関投資家と49人以下の投資判断能力を有すると見込まれる一定の者が含まれる場合には、集団投資スキーム持分の募集または私募および出資された財産の運用については、適格機関投資家等特例業務の届出(同法63条2項)が必要となります。

[1]トラベレックスジャパン株式会社発行(https://www.jpcashpassport.jp/cpp/mcp/?ccd=85&lpid=a02af)
[2]株式会社マネーパートナーズ発行(https://card.manepa.jp/landing/01/j.html?ad=mcaf-k-ab)

ーーーーー
ご相談については以下にご連絡ください。
弁護士法人三宅法律事務所
http://www.miyake.gr.jp/
弁護士渡邉 雅之
(東京事務所)〒100-0006
東京都千代田区有楽町1丁目7番1号
有楽町電気ビルヂング北館9階
03-5288-1021
m-watanabe@miyake.gr.jp