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均等法で禁止される「間接差別」の対象範囲拡大

2014/10/21

(執筆者:弁護士 福田泰親)

【Q.】
平成26年7月1日から男女雇用機会均等法で禁止されている「間接差別」の対象範囲が拡大されたと聞きましたが,その具体的内容について教えてください。

【A.】
1 はじめに
総務省統計局の労働力調査によると,平成24年の女性雇用者数は2357万人であり,前年に比べて10万人増加した一方,男性雇用者数は3148万人と前年から13万人減少しました。その結果,雇用者総数に占める女性の割合は42.8%となり,前年と比べて0.1ポイントの上昇となりました。このように,女性雇用者数が増加傾向にあるにもかかわらず,コース別雇用管理やパート・派遣等を含む雇用形態など,一見すると性に中立的な条件の下で,男女間の処遇差が温存されているとの批判が強まりました。このような問題意識を受け,男女間の処遇差を解消する手段の1つとして,雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇等の確保等に関する法律(以下「均等法」といいます。)の施行規則が改正されるに至りました。
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2 具体的な改正内容
均等法で禁止される「間接差別」とは,他の性の構成員と比較して,一方の性の構成員に相当程度の不利益を与えるものとして省令で定められている措置を,合理的な理由なく講じることをいいます。これまでは,「省令で定められている措置」について,�@労働者の募集または採用に当たって,労働者の身長,体重または体力を要件とするもの,�Aコース別雇用管理における総合職の労働者の募集または採用に当たって,転居を伴う転勤に応じることができること(「転勤要件」)を要件とするもの,�B労働者の昇進に当たって,転勤の経験があることを要件とするものという3類型が定められていました。
今回の改正では,�Aの範囲が『総合職の労働者の募集,採用』から『すべての労働者の募集,採用,昇進,職種の変更』にまで拡大されました。そのため,たとえば広域に展開する支店・支社などがなく,またそのような具体的計画もないにもかかわらず,昇進の条件として全国転勤ができることを求めている場合には間接差別に該当するおそれがあり,これに該当した場合,厚生労働大臣による助言,指導,勧告,企業名公表(均等法29条,30条)等の対象となります。また,上記の�@〜�Bの類型に含まれない場合,たとえば労働者の配置にあたって転勤要件を定めている場合でも,これによって対象労働者に財産的・精神的損害を与えた場合には,不法行為として賠償責任を負う可能性があります。
したがって,会社において,募集・採用などを行うに当たり,どのような要件を必要としているのか,また当該要件はどのような理由から必要であるのか等を今一度ご確認ください。
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3 おわりに
今回の改正により,募集・採用段階だけでなく,昇進や職種変更といったキャリア形成の中核部分にまで間接差別の範囲が拡大されました。また,今後さらに間接差別の範囲が拡大されることも十分に考えられるところであり,今後の会社の雇用管理において,性別によることなく,個々人の意欲,能力,適性に基づく取扱いを行うことが,より一層求められているといえるでしょう。男女労働者間に事実上生じている格差を解消するための自主的かつ積極的な取り組み(ポジティブ・アクション)を行なう事業主に対して,国が相談その他の援助を行なっていますので,この機会に是非ご参照ください(http://www.gender.go.jp/policy/positive_act/)。

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