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『将来債権を担保に取る方法について』

2008/08/01

(執筆者:弁護士 佐藤竜一)
【Q.】
弊社は,機械部品を製造販売している会社ですが,新たな取引先と継続的な取引基本契約を結ぼうとしています。
この取引先には会社所有の不動産はなく,代表者の自宅にも既に抵当権が付いています。
取引先が将来有することになる売掛債権を担保に取る方法を考えていますが,注意点を教えてください。
【A.】
1.はじめに
新たな取引先と継続的な取引をするに際し,将来,当該取引先に信用不安が発生した時に備えて,担保を取っておくことが通常行なわれますが,質問のように会社に不動産等の資産がなく,代表者の不動産にも抵当権が付けられていると,会社代表者との間で連帯保証契約を結んだとしても実効性が高くありません。
もっとも取引先につき,継続的に安定した売り上げが期待できる場合は,将来発生する売掛金等をあらかじめ譲渡してもらい,これを担保とする方法が考えられます。
今回はこの方法のポイントを簡単に説明します。
2.将来発生する債権を担保に取る方法とは
将来発生する債権を担保に取る方法を具体的に説明します。
例えば,取引先(B社)が,特定の会社(C社)に対して継続的安定的に売掛債権を有する場合に,AB社間で,B社がC社に対して現在有し並びに将来有する売掛債権をA社に譲渡する旨の債権譲渡担保契約を結びます。
そして,当該契約には,B社がA社に対して負っている債務につき期限の利益を有している限りは,B社自らC社に対する債権の取り立てることができ,その回収金をB社の自己資金として使用できる旨を定めるのです。
このような債権譲渡担保契約をあらかじめ締結することにより,A社としては,将来B社が債務不履行等,信用不安が発生した場合に,その時点でB社のC社に対して有している債権を直接取立てて回収を図ることができ,B社も,信用不安に陥らない限りは,C社に対する売掛金を自ら回収し使用することができることとなります。
ただし,A社が債権譲渡担保を第三者に対抗するためには,対抗要件を備える必要がありますので,この点を次に説明します。
3.第三者に対する対抗要件について
債権譲渡担保は,確定日付ある債権譲渡通知等を第三債務者(本件ではC社)にしておかないと,C社以外の第三者に対抗できません。この点は通常の債権譲渡の対抗要件と同様です。
ところが,このような債権譲渡通知を発することは,B社の信用に問題があるとの印象をC社に与えてしまいますので,B社としては避けたいところです。
将来債権譲渡担保に関しては,この点が問題点としてありました。
これに関しては,債権譲渡の対抗要件に関する特例法(「動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律」)が整備され,債権譲渡につき債権譲渡登記ファイルに登記がなされた場合には,第三者対抗要件が具備できることとされました(なお従前,債権譲渡登記の一部が商業登記簿に記載されていましたが,この制度も廃止されました)。
B社が期限の利益を失ったとき,A社が譲受債権をC社に対して行使する場合は,登記事項証明書をC社に交付して通知等する必要がありますが,かかる通知等についてもB社に信用不安が生じた時に初めて行なうこととすることで,C社にあらかじめ債権譲渡の事実を知らせて欲しくないとのB社の要望に応えられるようになっています。
4.さいごに
従前,将来債権譲渡担保契約については,支払停止等を条件として効力が発生するという形式の契約が締結されていましたが,この方式は,判例で破産管財人の否認対象となると判断されました(最判平成16年7月16日判決)。
上記で説明した,将来債権につき譲渡契約を締結し,債権譲渡登記により第三者対抗要件を具備しておく方法は,破産管財人による否認リスクも少ないと考えられています。また,上記ではB社が特定のC社に対して有することとなる将来債権について説明しましたが,債務者が不特定の場合であっても,債権譲渡登記により第三者対抗要件を備えることが可能になりました。
このように債権譲渡の対抗要件に関しては,一定法制度が整備されておりますので,質問のような場合には,取引先が有する将来債権を担保として取ることも検討されてよいと考えます。
(以上)

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